2008年 07月 22日
その名にちなんで |
面白かった~! この間読んだピューリッツァー賞受賞の『停電の夜に』の何倍も面白かった。映画を先に見ているからストーリーはわかっているのに、それでも面白かった。普通は映画と原作の両方を見ると、どちらかにがっかりするものだけど、この場合はどちらにも感心した。
本の中ではほんの1行だけですまされている部分が映画では深い印象を残すシーンになっている。脚本家、すごい。そして映画では表現しきれない登場人物たちの心のひだが小説ではすみずみまで痒いところに手が届くように書かれている。淡々と書かれているのに饒舌で、1行1行に情報量がたっぷりある感じ。
読んでいて驚くのはふと気づくと語り手の視点がごく自然に移行していること。前の章までゴーゴリの視点でモーシュミを見ていたのに、気づけばモーシュミの視点でゴーゴリを見ている。それが唐突には感じられず、すごくなめらか。
一人称ではないんだけど、かといって三人称とも言い切れない。
ふつうの三人称というのは例えば上のほうから見ている誰かが「彼がこうした」「彼女がああした」というふうにその「誰か」(作者)の主観で書いている、という感じだけど、この本の場合は小さな虫がひとりの人の周りをぶんぶん言いながら跳び回って、中にいる人の感じたことをそのまま吸い取って紙に写している、という感じ。なんかわけわかんない説明ですね。でも、とにかくお薦め。
その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス)
原題:The Namesake
作者:ジュンパ・ラヒリ
訳者:小川 高義
出版社:新潮社
ISBN:4105900404
本の中ではほんの1行だけですまされている部分が映画では深い印象を残すシーンになっている。脚本家、すごい。そして映画では表現しきれない登場人物たちの心のひだが小説ではすみずみまで痒いところに手が届くように書かれている。淡々と書かれているのに饒舌で、1行1行に情報量がたっぷりある感じ。
読んでいて驚くのはふと気づくと語り手の視点がごく自然に移行していること。前の章までゴーゴリの視点でモーシュミを見ていたのに、気づけばモーシュミの視点でゴーゴリを見ている。それが唐突には感じられず、すごくなめらか。
一人称ではないんだけど、かといって三人称とも言い切れない。
ふつうの三人称というのは例えば上のほうから見ている誰かが「彼がこうした」「彼女がああした」というふうにその「誰か」(作者)の主観で書いている、という感じだけど、この本の場合は小さな虫がひとりの人の周りをぶんぶん言いながら跳び回って、中にいる人の感じたことをそのまま吸い取って紙に写している、という感じ。なんかわけわかんない説明ですね。でも、とにかくお薦め。
その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス)
原題:The Namesake
作者:ジュンパ・ラヒリ
訳者:小川 高義
出版社:新潮社
ISBN:4105900404
by timeturner
| 2008-07-22 14:37
| 和書
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