2008年 05月 08日
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド |
20世紀初頭のアメリカ。「石油屋」ダニエル・プレインヴューの成功と破滅。
いやあ、物凄いものを見てしまいました。あらゆる賞を総なめにしただけのことはあるもんですね、やっぱり。とにかくダニエル・デイ=ルイスが凄すぎる。
見る前にはあざとい演技だったらやだなあ、なんて思っていたんですが、もうそんなのをはるかに超越してました。誰が見たって「石油屋」(Oil Man)にしか見えない。喋り方だってあの「眺めのいい部屋」での貴公子のような上流イギリス英語はどこに?ってくらい違ってるし、声も違うのよねえ。背の高さと細さだけは本来の彼だけど、立ち方、歩き方、動き方、すべてがダニエル・プレインヴューになってる。
最後のほうの対決シーンなんて、アルトマン好きの監督が長回しをしているせいもあるかと思うんですが、まるで劇場で演劇を見ているような気にさえなってしまう。声の高低・細太までコントロールしてるんですから。(以下1行ネタバレ)最後のセリフ「I'm finished」には二重の意味をもたせているわけですが、あの言葉の響きとくたっと座り込んだ後姿はもう圧巻でした。
監督も凄いんだと思うのね。どのシーンをとっても緊迫感が尋常じゃない。別にスリラーやサスペンスのようなどきどきさせる謎解きや仕掛けがあるわけじゃなくて、ただ石油を掘ってるだけなのに。ビジュアル的にもあっと思うような印象に残るカットがたくさんありました。
原作がよく書かれているのだろうとは思うけれど、それにしても石油を掘るだけの話で、ロマンチックなエピソードも、心温まる話も、しんみり泣ける部分もまったくない、最初から最後までどろどろした人間の欲と執念と欺瞞と狂信に満ちていて、普通だったら決して好きになれない映画なのに、どっぷり引き込まれてしまいましたよ。長さがまったく気になりませんでした。
音楽も凄かったです。オーケストラなんだけど普通の美しいクラシック音楽の旋律をかなでていたかと思うと、人間の不安をかきたてるような不快な不協和音を出してくる。オープニングでの使い方なんてあまりに巧くてうなってしまいました。
公式サイトはこちら。
それにしてもこの邦題はなんなんでしょうね。英語のままのタイトルっていうのは最近多いからもう慣れてはいるものの、これなんていくらでも内容を想像させる日本語のタイトルがつけられそうなのに、わざわざ長々しいカタカナを並べて。映画会社の担当者の怠慢(あるいは出来の悪さ)を露呈しているとしか思えません。
原題:There Will Be Blood()
上映時間:158 分
製作国:アメリカ
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:ダニエル・デイ=ルイス、ポール・ダノ、ケヴィン・J・オコナー、キアラン・ハインズ、ディロン・フレイジャー、バリー・デル・シャーマン、コリーン・フォイ、ポール・F・トンプキンスほか。
いやあ、物凄いものを見てしまいました。あらゆる賞を総なめにしただけのことはあるもんですね、やっぱり。とにかくダニエル・デイ=ルイスが凄すぎる。
見る前にはあざとい演技だったらやだなあ、なんて思っていたんですが、もうそんなのをはるかに超越してました。誰が見たって「石油屋」(Oil Man)にしか見えない。喋り方だってあの「眺めのいい部屋」での貴公子のような上流イギリス英語はどこに?ってくらい違ってるし、声も違うのよねえ。背の高さと細さだけは本来の彼だけど、立ち方、歩き方、動き方、すべてがダニエル・プレインヴューになってる。
最後のほうの対決シーンなんて、アルトマン好きの監督が長回しをしているせいもあるかと思うんですが、まるで劇場で演劇を見ているような気にさえなってしまう。声の高低・細太までコントロールしてるんですから。(以下1行ネタバレ)最後のセリフ「I'm finished」には二重の意味をもたせているわけですが、あの言葉の響きとくたっと座り込んだ後姿はもう圧巻でした。
監督も凄いんだと思うのね。どのシーンをとっても緊迫感が尋常じゃない。別にスリラーやサスペンスのようなどきどきさせる謎解きや仕掛けがあるわけじゃなくて、ただ石油を掘ってるだけなのに。ビジュアル的にもあっと思うような印象に残るカットがたくさんありました。
原作がよく書かれているのだろうとは思うけれど、それにしても石油を掘るだけの話で、ロマンチックなエピソードも、心温まる話も、しんみり泣ける部分もまったくない、最初から最後までどろどろした人間の欲と執念と欺瞞と狂信に満ちていて、普通だったら決して好きになれない映画なのに、どっぷり引き込まれてしまいましたよ。長さがまったく気になりませんでした。
音楽も凄かったです。オーケストラなんだけど普通の美しいクラシック音楽の旋律をかなでていたかと思うと、人間の不安をかきたてるような不快な不協和音を出してくる。オープニングでの使い方なんてあまりに巧くてうなってしまいました。
公式サイトはこちら。
それにしてもこの邦題はなんなんでしょうね。英語のままのタイトルっていうのは最近多いからもう慣れてはいるものの、これなんていくらでも内容を想像させる日本語のタイトルがつけられそうなのに、わざわざ長々しいカタカナを並べて。映画会社の担当者の怠慢(あるいは出来の悪さ)を露呈しているとしか思えません。
原題:There Will Be Blood()
上映時間:158 分
製作国:アメリカ
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:ダニエル・デイ=ルイス、ポール・ダノ、ケヴィン・J・オコナー、キアラン・ハインズ、ディロン・フレイジャー、バリー・デル・シャーマン、コリーン・フォイ、ポール・F・トンプキンスほか。
by timeturner
| 2008-05-08 23:04
| 映画
|
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