2007年 09月 05日
シェイクスピアを盗め! ほか |

大失敗。いえ、つまらなかったからじゃなくて、最初に読んだのがシリーズ3作目の『シェイクスピアの密使』だったんです。3分の1くらい読んだところでなんか変だなあと思い、調べてみてガーン!。仕方がないので読んでしまい、きのう図書館に返しにいって1をその場で読み、2を借りてきて家で読みました。3を先に読んでいなければもっと時間をかけてゆっくり楽しんだんだけど。
ここのところ興味を持っている歴史物ですが、読者対象は中学生くらいかな。主人公の少年ウィッジが潜入し、その後仲間として受け入れられる宮内大臣一座という劇団の座付き作家はシェイクスピアで、当然ながら作品中にはシェイクスピアの芝居の引用がたくさん出てきます。学校でシェイクスピアを習い始めた子供たちにとっては、楽しみながら勉強できる一石二鳥の本というわけ。それもあって全米図書館協会最優秀賞を受賞しているようです。
女性が舞台に上がることを禁止されていた時代なので、女役は少年たちが演じ、それでウィッジのような子供たちが徒弟として劇団に雇われていたそうです。芝居を奨励してきたエリザベス一世の衰弱、国教とカトリックの確執といった当時の世相や、シェイクスピアを初め実在の人物や事件を巧みに織り込んであって子供だけに読ませるのはもったいない内容。図書館でも「一般」の棚にありました。
でもねえ、これ、原文で読むほうがよかったかも。主人公のウィッジはヨークシャー出身でかなり訛りがあるんですが、それの日本語訳がどうもなじめないんですよね。とても工夫してあるとは思うんだけど。例えばショーンもよく使っている「me ****」(「my ****」)という言い方、翻訳では「ぼくん****」としている。なるほどなあ、とは思いますが読んでいてすごく不自然。「Aye」は「へい」と訳されていましたが、以前ここに書いた『火を喰う者たち』で金原端人さんが訳していた「あいよ」のほうがいい雰囲気だな。あと、原文がどうなっているかはわからないのですが「**してるん」と最後が「るん」で終わる文体も。そんな日本語は変だ・・・と思っていたのですが、きょう職場で上司が電話でしている会話を聞いていたら「***るん?」と言ってました(^^;)。そうか、広島は日本のヨークシャーだったんだ。(んなわけないって)
それとシェイクスピアが出てくるわけですから、当然のことながら韻を踏んでいたり、駄洒落というか言葉遊びになっている部分も多くて、『シェイクスピアを盗め!』からの抜粋を使って生徒に「look for the author's use of puns and word play」と指示している問題も見かけました。まあ、私が読んでそういう部分を理解できるかどうかはわかりませんが。
シェイクスピアを盗め!
原題:The Shakespeare Stealer
作者:ゲアリー・ブラックウッド
訳者:安達まみ
出版社:白水社
ISBN:456004709X
シェイクスピアを代筆せよ!
原題:Shakespeare's Scribe
作者:ゲアリー・ブラックウッド
訳者:安達まみ
出版社:白水社
ISBN:4560047421
シェイクスピアの密使
原題:Shakespeare's Spy
作者:ゲアリー・ブラックウッド
訳者:安達まみ
出版社:白水社
ISBN:456002720X
by timeturner
| 2007-09-05 21:32
| 和書
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