2006年 11月 08日
ニキフォル 知られざる天才画家の肖像 |
73年の生涯に4万点の作品を残した孤高の画家ニキフォルの晩年を描いた話です。アール・ブリュット(生の芸術)というかっこいい名前でくくられているようですが、いわゆる素朴画。彼が生涯を過ごしたポーランド南部の保養地クリニツァの風景、人々、聖人などを思うがままに描いたのびのびした絵です。映画を上映していた東京都写真美術館のロビーにも彼の絵が20点くらい飾られていましたが、見ていると楽しくなってくるようなほんわかしたタッチです。買えるものなら1枚くらい部屋に飾りたい種類の絵。
少数民族出身で言語障害をもち、文字の読み書きもできず、貧しく孤独な画家ニキフォルは意思を伝える手段として描き始めた絵を観光客に売ることで生計をたてていましたが、やがてそれが保養地を訪れた画家たちによって認められるようになり、亡くなる1年前にワルシャワで開催された大々的な回顧展で有名画家の仲間入りを果たしたのだそうです。つまり生きている間はず~っと不遇だったわけ。
チラシでは「ニキフォルにとって絵筆を握ることは理不尽な社会への抵抗であり、神との対話であり、生きることそのものだった」とか「「世界が最も注目する画家ニキフォル ヴェールに包まれていたその生涯が今、明らかになる」とかって書いてあるし、ニキフォルを演じたのがポーランドの86歳の女優だというのが話題になったりで、完全にニキフォル視点の映画だと思って見にいったのですが、実は違いました。
むしろニキフォルの晩年を見守った画家マリアン・ヴォシンスキについての映画でした。画家としては三流で、大学の恩師に顔も覚えてもらえていないくらい才能がないのに、優れた芸術を見分ける目はひと一倍鋭い男、弱い者、困っている者を見捨てておけない優しい男、そんな男が偏屈なニキフォルに出会ってしまったことで人生が大きく変わってしまいます。
ニキフォルを演じたクリスティーナ・フェルドマンもすごく可愛いお爺ちゃんぶりだったんだけど、マリアンを演じたテディ・ベアみたいなロマン・ガナルチックがすごくいい。最初に画面に出てきたときから「ああ、この人は善人だなあ」とわかってしまいます。マリアンのお父さんもちょっとだけ出てくるんだけれど、このお父さんもすごくいい人で「この親にしてこの子あり」という感じ。このあたりの描き方がすごく上手でした。
でもとにかくマリアンとニキフォルの交流が本当にいい。くすくすっと笑ってしまうところもあるんだけれど、最後のほうはマリアンに感情移入してしまってエンドクレジットを見ながら涙が止まりませんでした。
クリニツァが雪の降りしきる真冬から若葉の季節へと移り変わっていく様子をとらえた映像もすごくきれいで幻想的です。ストーリー的にはDVDでもいい映画かもしれないけれど、この風景を堪能するならやっぱり映画館で見たほうがいいと思う。
公式サイトはこちら。
原題: Moj Nikifor (2004)
上映時間: 100 分
製作国: ポーランド
監督: クシシュトフ・クラウゼ
出演: ロマン・ガナルチック、ロマン・ガナルチック、イエジ・グデイコ、ルチアナ・マレク、アルトゥール・ステランコほか。
少数民族出身で言語障害をもち、文字の読み書きもできず、貧しく孤独な画家ニキフォルは意思を伝える手段として描き始めた絵を観光客に売ることで生計をたてていましたが、やがてそれが保養地を訪れた画家たちによって認められるようになり、亡くなる1年前にワルシャワで開催された大々的な回顧展で有名画家の仲間入りを果たしたのだそうです。つまり生きている間はず~っと不遇だったわけ。
チラシでは「ニキフォルにとって絵筆を握ることは理不尽な社会への抵抗であり、神との対話であり、生きることそのものだった」とか「「世界が最も注目する画家ニキフォル ヴェールに包まれていたその生涯が今、明らかになる」とかって書いてあるし、ニキフォルを演じたのがポーランドの86歳の女優だというのが話題になったりで、完全にニキフォル視点の映画だと思って見にいったのですが、実は違いました。
むしろニキフォルの晩年を見守った画家マリアン・ヴォシンスキについての映画でした。画家としては三流で、大学の恩師に顔も覚えてもらえていないくらい才能がないのに、優れた芸術を見分ける目はひと一倍鋭い男、弱い者、困っている者を見捨てておけない優しい男、そんな男が偏屈なニキフォルに出会ってしまったことで人生が大きく変わってしまいます。
ニキフォルを演じたクリスティーナ・フェルドマンもすごく可愛いお爺ちゃんぶりだったんだけど、マリアンを演じたテディ・ベアみたいなロマン・ガナルチックがすごくいい。最初に画面に出てきたときから「ああ、この人は善人だなあ」とわかってしまいます。マリアンのお父さんもちょっとだけ出てくるんだけれど、このお父さんもすごくいい人で「この親にしてこの子あり」という感じ。このあたりの描き方がすごく上手でした。
でもとにかくマリアンとニキフォルの交流が本当にいい。くすくすっと笑ってしまうところもあるんだけれど、最後のほうはマリアンに感情移入してしまってエンドクレジットを見ながら涙が止まりませんでした。
クリニツァが雪の降りしきる真冬から若葉の季節へと移り変わっていく様子をとらえた映像もすごくきれいで幻想的です。ストーリー的にはDVDでもいい映画かもしれないけれど、この風景を堪能するならやっぱり映画館で見たほうがいいと思う。
公式サイトはこちら。
原題: Moj Nikifor (2004)
上映時間: 100 分
製作国: ポーランド
監督: クシシュトフ・クラウゼ
出演: ロマン・ガナルチック、ロマン・ガナルチック、イエジ・グデイコ、ルチアナ・マレク、アルトゥール・ステランコほか。
by timeturner
| 2006-11-08 23:02
| 映画
|
Comments(2)
Commented
by
さやか
at 2006-11-09 10:22
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わ、これ、見たい、見たい、見た~い。と思って調べたら、いまのところ、東京都写真美術館でしか見られないようですね。がんばって時間を見つけて行きます!
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Commented
by
shoh
at 2006-11-09 15:02
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そうなんですよ。ここはレディースデイがないから、かえって水曜が空いてるかもしれないと思って昨日行ったのですが、別に水曜でなくても空いてそう(^^;)。
前売り券を持っていても整理番号が必要ですが、別に番号順の入場ではなくて、上映時間の10分前になるとドアの近くにいた人から入れていきます。映画館ではないので椅子がかたくてちょっとつらい。風が吹き込むのでひざ掛け持参でどうぞ。
ロビーに絵があるので少し早めに行って見てるのがいいかと。あと画集も置いてあって、最終回は映画が始まるまでしか販売していませんでした。
前売り券を持っていても整理番号が必要ですが、別に番号順の入場ではなくて、上映時間の10分前になるとドアの近くにいた人から入れていきます。映画館ではないので椅子がかたくてちょっとつらい。風が吹き込むのでひざ掛け持参でどうぞ。
ロビーに絵があるので少し早めに行って見てるのがいいかと。あと画集も置いてあって、最終回は映画が始まるまでしか販売していませんでした。