2019年 10月 05日
砂糖の空から落ちてきた少女 |
ある日〈エリノア・ウェストの迷える青少年のためのホーム〉の池に空から少女が降ってきた。スミの娘リニだと名乗るが、スミは第1巻で殺されたはず。どうやら少女はスミが生きて成長し、お菓子の国に帰って結婚し作った子供らしい。スミが死んだ世界にいるうちにリニの体は少しずつ欠けていく。救うためにはスミを生きかえらさねばならない。エリノア校長の許可を得て、ケイド、ウリストファー、ナディア、そして新入生コーラはリラと共に死者の世界に向った・・・。
この結末を最初から考えて三部作にしたとは思えないなあ。むしろ『トランクの中に行った双子』のアイディアを思いつき、それに合わせて『不思議の国の少女たち』を書き、そこで無惨に殺してしまったスミを救う話を書こうと思いついたんじゃないかって感じ。
子供たちがひとつの使命を帯びて一緒に旅に出る、という〈旅の仲間〉的展開も、ケーキの女王やお菓子の国の中身もありきたりなうえにきちんと練れていない。無理矢理ひねり出した印象が強い。
でもまあ、さまざまな生きづらさ(SOGI的違和感、多動性障害、肥満など)を抱えた若者にとっては、この作品世界が自分を投影して癒しを得られる場所なのかもしれないね。訳者あとがきによると作者は第4作を書き、第5作の刊行も予告されているらしい。それだけ需要があるってことなんだろう。でも、私はもういいや。
【誤植メモ】 p.227 7行目 同級生たちが後ろにしたがえて⇒同級生たちを後ろにしたがえて
砂糖の空から落ちてきた少女 (創元推理文庫)
原題:Beneath the Sugar Sky
作者:ショーニン・マグワイア
訳者:原島文世
出版社:東京創元社
ISBN:4488567045
by timeturner
| 2019-10-05 19:00
| 和書
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