2019年 06月 01日
どこまでも亀 |
アーザは十六歳。パパは心臓発作で急死してしまい、数学教師のママとふたりきりで暮らしている。強迫性障害があり、ときどき挙動不審になるのでまわりからは避けられ、小さい頃からの親友でスターウォーズのファンフィクションを書いているデイジーとアートおたくのマイケルだけが一緒にいられる仲間だ。ある日、大富豪のラッセル・ピケットが詐欺と収賄の容疑で逮捕される直前に行方不明になり、発見者に10万ドルの賞金がかけられた。家が貧しく大学進学資金のために必死にバイトしているデイジーは、アーザがピケットの息子デイヴィスと小学校の頃に知り合いだったことを思いだし、ピケットの手がかりをつかむためにデイヴィスに近づこうと思いつく・・・。
強迫性障害という言葉は知っていたし、『What's A Girl Gotta Do?』には強迫性障害の女の子が主人公の友人として出てきていたけど、脇役だから軽く触れられているだけで、普通の人よりずっと神経質な子という印象しかなかった。
でも、実際はこんなに凄いものだったんだね。アーザがどんどん負の螺旋に巻き込まれていく描写は鳥肌が立つほど恐ろしい。親指の傷や消毒薬の話も怖い。自分が彼女と同じ立場だったら、とてもじゃないけど学校なんて行けないだろうと思う。アーザはデイジーがいてくれたからなんとか学校に行けてたんだよね。デイジーがいてくれて本当によかった。
デイヴィスとノアの兄弟が置かれた立場はかなり特殊だと思うけど、逆にそれがファンタジーめいた雰囲気を与えていて、アーザの苦しみや悲劇的でもある結末をやわらげているのかもしれない。デイヴィスの父親が残したメモの謎を解くというミステリー仕立ても同様。
携帯やSNS、ブログといった現代の若者とは切っても切れない道具の使い方も上手だと思った。アーザの検索力は神業。普通の高校生がこのレベルなら、素人がどんなにがんばって個人情報を隠そうとしたってプロの手にかかったらバレバレだろうなと思った。
どこまでも亀 (STAMP BOOKS)
原題:Trutles All The Way Down
作者:ジョン・グリーン
訳者:金原瑞人
出版社:岩波書店
ISBN:4001164191
by timeturner
| 2019-06-01 19:00
| 和書
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