2019年 02月 14日
マンゴスチンの恋人 |
幼い頃のトラウマから男子とつきあえず、年上の人妻に恋する季里子、存在感が薄くオタクっぽい同級生の悩みに寄りそう美少女・実森、援交トラブルの泥沼に落ちた茜は思いがけないクラスメイトに救われ、レズビアンの生物教師はカミングアウトするべきかどうか思い悩む・・・。
そんな時期に自分が性的マイノリティだったりしたら、心のざわつきは半端ないだろうなあ。最近ではそういうことにもっとオープンになろうという動きもあるし、カミングアウトする有名人も出てきてはいるけれど、ふつうの高校生にはまず無理よね。
この本は性的マイノリティをとりあげてはいるけれど、根っこの部分はティーンエイジャーすべてに共通するもどかしさや不安、焦燥感、孤立感、憧れ、恋など、未熟であるがゆえの心の揺らぎを描いている。宮下奈都さんのYA小説を過激にしたみたいな感じ。
同じクラスにいる高校生数人と教師を主人公にした話が4つ並んでいて、それぞれが互いに関連して連作短編集のようになっている。女であること、美人であることをある種の障碍のように感じながらも、それに負けまいと突っ張り、強くあろうとする実森が私のお気に入り。話としては茜と魚住のエピソードがいちばん深くてよく出来ていると思うけど、それだけに痛くてね。読むのがつらい。
それにしても、今の女子高生ってみんなこんなふうなの? いやいや、作者は1975年生まれで、この本が発表されたのは2011年だから、これはあくまでも作者の想像力が生み出したJKってことですよね。もちろん、こういう子たちが現実にいることは確かだろうけど。
マンゴスチンの恋人 (小学館文庫)
作者:遠野りりこ
出版社:小学館
ISBN:4094060804
by timeturner
| 2019-02-14 19:00
| 和書
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