2019年 02月 12日
ラスト・イニング |
野球部のない超進学校に進み、部活はせずにぶらぶら過ごしていた瑞垣は、ある朝、通学途中にかつてのチームメイト唐木に会い、門脇に会いにいけと言われる。門脇は新田東中との試合のあと、推薦入学が決まっていた野球名門校への進学を辞退し、地元の高校で野球をしていた・・・。
『バッテリー』から1、2か月後、あの試合に関わった少年たちのその後を瑞垣の視点から描く中編「ラスト・イニング」、青波視点の「空との約束」、小学生・豪視点の「炎陽の彼方から」を収録。
だからちょっと渋々という感じで読み始めたのだけれど、さすがプロの作家で、ファンジンに載るような「その後」ではなく、ちゃんと納得のいく構成、内容だった。そうだったのか、と素直に納得し、感動した。5巻であんなに危なっかしく感じた瑞垣くんをちゃんと救ってくれたところにも感謝。
ひとつだけ気になったのは、文体が妙にごろごろしていたこと。こんなに漢語を多用する人だったっけ? 対象読者には難しすぎると言ってるのではなく、15歳の男子高校生という視点人物と合わなくていちいち目に突き刺さった。瑞垣が頭脳明晰でインテリだという点を踏まえてなのかもしれないけれど、明治時代の高校生じゃないんだから独り心の中で思うときに漢語を多用したりはしないと思う。「ぎりぎり追い詰められた者の逃去(とうきょ)を誰に詰(なじ)ることができる?」なんて考えるか? 神の視点で書いているのならともかく、これ、完全に一人称視点だもの。
作家として成長したところを見せたかったのかな。それとも、平行して書いていた別の小説に影響されたのか。
【誤植メモ】 p.145 4行目 不細工⇒不器用?
ラスト・イニング (角川文庫)
作者:あさのあつこ
出版社:角川グループパブリッシング
ISBN:4043721080
by timeturner
| 2019-02-12 19:00
| 和書
|
Comments(0)