2018年 12月 22日
メグ・アウル |
「クリスマスにゴースト・ストーリーを」というイギリスの慣習に基づき、聖夜を背景に語られる奇怪な物語5編を収録。『ミステリアス・クリスマス』の姉妹編にあたるアンソロジー。
『ミステリアス・クリスマス』同様に、児童向けのいやクリ(いやな後味の残るクリスマス・ストーリー)でしたが、あれを編集したあとに載せきれなかったものを新たにまとめたということで、言ってみれば二番目の作品群、おかげであそこまで酷いものはありませんでした。このアンソロジーの趣旨を考えると、喜んでいいのかどうか微妙ですが。
クリスマス・プレゼント/ジリアン・クロス(安藤紀子訳)
メグ・アウル/ギャリー・キルワース(高橋朱美訳)
また会おう/ジル・ベネット(嶋田のぞみ訳)
クリスマスの訪問者/テッサ・クレイリング(西村醇子訳)
荒れ野を越えて/スーザン・プライス(夏目道子訳)
「荒れ野を越えて」は、クリスマス向けのゴースト・ストーリーらしい話。なにしろ幽霊が山のように出てくる。炭坑で働く兄(まだ10代かも)とその妹(13歳)のどちらも良い子で、他の話に出てくる子供たちのように因果応報な目に遭う謂れはないのだけれど、貧しさがふたりを危険な罠に誘いこむ。話そのものよりも、貧困が黒い雲のように覆っている炭坑町の暗い情景が心に残る。炭坑夫の何人かは明らかに肺を病んでいるし、幽霊たちもほとんどは辛い暮らしが原因で死んだようなものだ。そんな中、兄妹が帰りついたわが家で、母親を中心に子供たちがミンスパイを作っているシーンが明るく輝いていた。
メグ・アウル―ミステリアス・クリスマス〈2〉
編者:安藤紀子
出版社:パロル舎
ISBN:4894192608
『ミステリアス・クリスマス』同様に、児童向けのいやクリ(いやな後味の残るクリスマス・ストーリー)でしたが、あれを編集したあとに載せきれなかったものを新たにまとめたということで、言ってみれば二番目の作品群、おかげであそこまで酷いものはありませんでした。このアンソロジーの趣旨を考えると、喜んでいいのかどうか微妙ですが。
クリスマス・プレゼント/ジリアン・クロス(安藤紀子訳)
メグ・アウル/ギャリー・キルワース(高橋朱美訳)
また会おう/ジル・ベネット(嶋田のぞみ訳)
クリスマスの訪問者/テッサ・クレイリング(西村醇子訳)
荒れ野を越えて/スーザン・プライス(夏目道子訳)
「クリスマス・プレゼント」は、両親が離婚・再婚したために血のつながらない妹とクリスマスを過ごすことになった我儘で性格の悪い姉弟が、自分たちの策略のせいでとんでもなく酷い目に遭う因果応報な物語。ファーザー・クリスマスがこんなに情け容赦のない存在だったなんて、子供が読んだらトラウマになりそう。
「メグ・アウル」は、ハロウィーンの日に魔女の産んだ卵を拾ってしまった少年ティムが経験する恐怖の数週間を描いた話。卵から孵ったフクロウ姿の魔女は、自分を拾った子供を奴隷にし、次第に自分のような魔物に変えてしまう。ティムも次第にネズミや野生動物を捕るようになるんだけど、そのあたりの描写がもう気持ち悪くてげげげーって感じ。
「また会おう」も、両親が離婚し、母親が再婚した男と暮らすピーターが、クリスマスに遊びにくる義理の妹への怒りと苛立ちに駆られて買った妹へのプレゼント(ビデオ)が招く災厄を描いたもので、妹がどんどんおかしくなっていくのにピーター以外の誰も気づかないばかりか、最後にこれで終わりじゃないぞという駄目押しの恐怖が待っているのが、なんとも怖ろしい。
「クリスマスの訪問者」は、この本の中では救いのあるタイプの話で、自らの嫉妬心のために恥ずかしい罪を犯してしまった少年が、良心の呵責とも思える怪物に襲われ、九死に一生を得る。怪物が女の子に擬態するところは不気味だけれど、少年がきちんと自分のしたことを反省するので精神的に救われる。
メグ・アウル―ミステリアス・クリスマス〈2〉
編者:安藤紀子
出版社:パロル舎
ISBN:4894192608
by timeturner
| 2018-12-22 19:00
| 和書
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