2018年 08月 04日
阪堺電車177号の追憶 |
大阪南部を走る路面電車、通称・阪堺(はんかい)電車。現役最古のモ161形177号は、大阪の街を85年間見つづけてきた……引退を目前にして177号が回想するさまざまな出来事を連作短編集の形で描いた作品。
戦前、戦中、戦後、高度成長期、バブル期、震災後、現在と、それぞれの時代の世相を反映させながら、177号の車内とその沿線で起こる出来事が描かれ、登場人物たちがゆるくつながりあって幸せな引退へとつながります。
線路沿いの町の風景は土地勘のある人にはとても懐かしく感じるんじゃないかな。残念ながら東京もんの私にはちんぷんかんぷんな地名だらけでしたが、妙に人間くさい177号の語り(もちろん大阪弁)に味があるのと、ミステリー仕立てになっているのとで、楽しく読めました。だれか都電でこういう小説を書いてくれないかな。
プロローグ(平成29年3月)
二階の手拭い(昭和8年4月)
防空壕に入らない女(昭和20年6月)
財布とコロッケ(昭和34年9月)
25年目の再会(昭和45年5月)
宴の終わりは幽霊電車(平成3年5月)
鉄チャンとパパラッチのポルカ(平成24年7月)
エピローグ(平成29年8月)
それにしてもバブルの頃の日本って、一億総狂人化としか言えない時代でしたね。もうあんなことはごめんだと思うけど、政治家や経済人は「今一度!」と思っているのかなあ。だとしたら怖い。
阪堺電車177号の追憶 (ハヤカワ文庫JA)
作者:山本巧次
出版社:早川書房
ISBN:4150312966
by timeturner
| 2018-08-04 19:00
| 和書
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