2018年 07月 28日
「中島敦『山月記』とその時代」展@日本近代文学館 |
早めに講演会場に着いたのは、台風を避けるためでもありますが、ここで開催中のこれを見ようと思っていたからでもありました。
展示の内容は、おおまかに3つに分けられ、初めが「『山月記』の世界」で『山月記』や『虎狩』『光と風と夢』といった作品を中心として直、筆原稿や編集者との手紙のやりとり、家族や生い立ちのほか、虎の絵を並べたり、外国語に翻訳された本を並べたり、演劇や朗読、音楽に翻案されたときのパンフレットなどが並べられていました。
生原稿の文字は素晴らしくきれいで読みやすく、さすが女学校教師!と思いました。生徒にも誤字や誤用は厳しく指導していたそうなので、その自分がいい加減な文字は書けないと意識していたのでしょうか。編集者は楽だったろうなと思います。
野村萬斎が中島敦を演じたことは初めて知りました。かつらと眼鏡で別人のようです。
「中島敦の生きた時代」では同時代の作家の紹介、雑誌の紹介などを首とした「昭和文学と中島敦」、子ども時代のソウル、出征で行った南洋など外地との関係を見る「南洋・アジアと中島敦」。
展示そのものは可もなく不可もなくといった感じで、企画が「教科書のなかの文学/教室のそとの文学」だから仕方がないのかもしれませんが、中島の作品それぞれについて意味や意義を定義しようとする受験国語的なアプローチがけっこうあってしらけました。また、昭和文学のところでは、各文学者の紹介だけでなく、中島との関係を付記してくれたらよかったのにと思いました。もちろん、すべての作家と交友関係があったわけではないでしょうが、その作家の作品を中島はどう考えていたのか、あるいは逆にその作家は中島をどう評していたのかなど、ほんの2、3行でもあったらより興味深くなっただろうと思いますし、それこそ、日本近代文学館で開催した意味があるとも思えます。
by timeturner
| 2018-07-28 21:06
| 学習
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