2018年 07月 01日
日曜の午後はミステリ作家とお茶を |
中年のミステリー作家シャンクスは、それほど売れっ子というわけではないがなんとか生活できる程度には書いている中堅。ロマンス小説を書き出した妻コーラのほうが売れ出したのでちょっともやもやしている。そして彼は、どういうわけか、行く先々でいくつもの謎や事件に遭遇・・・。
職業探偵や警察官ではなく素人が、自分で歩き回って証拠を探したりはせず、持ち込まれた情報を元にして推理を働かせ解決するという点では、ケラーマンの『9マイルは遠すぎる』やアシモフの黒後家蜘蛛の会シリーズにちょっと近いかも。ただし、ニッキー・ウェルト教授や給仕のヘンリーのようにいかにも頭が切れますよ、という素振りはまったくないところがシャンクスの魅力です。なんか、ゆったりしてるの。
愛妻コーラの顔色をうかがったり、ライバルの作家や気に入らない批評家を相手に子供っぽい悪戯をしかけて溜飲を下げたりと、実に人間的というか、とぼけている。これは、著者のロバート・ロプレスティが専業作家ではなく、図書館司書を本業としているということと関係しているのだろうか。ちょっと離れて見られる、みたいな。そのわりには作家業界の裏話的なことが満載で、これがまた面白いんですけどね。
最近のミステリーではあまりお目にかかれないタイプの作家なので、もっと読んでみたい。〈著者よりひとこと〉によると、これからもシャンクス物を書く予定だそうなので、私が死ぬ前に1冊分に達してほしいものです。
日曜の午後はミステリ作家とお茶を (創元推理文庫)
原題:Shanks On Crime
作者:ロバート・ロプレスティ
訳者:髙山真由美
出版社:東京創元社
ISBN:4488287042
by timeturner
| 2018-07-01 19:00
| 和書
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