2018年 04月 21日
ぼくとベルさん |

へえ、グラハム・ベルってカナダでこんなセレブだったんだ、というようなミーハーな興味から、ディスレクシア(難読症)の少年がそのベルさんと交流することで、周囲の偏見をはねのけ、自分の道をみつけていく成長物語まで、なかなかドラマチックに描いています。
ヘレン・ケラーまで登場するから、エディも実在の人物で、その後すごい偉人になったのかしらと錯覚しそうになりました。どっこい、フィクションです。
エディはディスクレクシアだと奥付のところに書いてあるけれど、そうなのかな? ABCそれぞれの文字は認識できるし、違いも分かる。文字が二重になったり歪んだりもしない。言葉の意味もわかる。単に、英語のスペルが発音と異なるうえに綴り方の例外が多すぎるから覚えられないだけのような気もするのだけれど。そもそもディスレクシアの人は辞書なんか読めないですよね。
数学や物理など、決まった法則どおりにすべてが動くものが得意なエディにとって、法則らしい法則もなく、例外だらけの文字という存在が理解できないだけというふうに思える。むしろ融通のきかない自閉症的な反応じゃないのかな。
それはともかく、『木の中の魚』のときにも思ったけれど、どうしてディスレクシアの子は読み書き以外の分野では天才ってことにされちゃうんだろう。
さらに悪いことにこの本では、子供の頃の怪我が原因で知的障害をもつ若者と、ディスレクシアの息子を同一視したエディの父親が、息子に(頭を使わずにすむ)力仕事をさせようとします。エディが本当は賢いことがわかると考えをあらためるものの、知的障害のある若者についての認識(役立たずで村人たちの嘲りの対象)は変わらない。この部分はどうにも納得がいかなかった。
ぼくとベルさん 友だちは発明王 (わたしたちの本棚)
原題:Me & Mr. Bell
作者:フィリップ・ロイ
訳者:櫛田理絵
出版社:PHP研究所
ISBN:4569786235
by timeturner
| 2018-04-21 19:00
| 和書
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