2018年 03月 10日
魔法にかかった男 |
何ひとつ欠けるものはないものの、すべてが必要最低限の間に合わせで十全な喜びを得られないという人生をおくってきた男が、これまた幻滅を覚える休暇先で初めての夢と冒険と魔法を得て英雄となる表題作のほか、ブッツァーティの最初の三つの短編集『七人の死者』『スカラ座の恐怖』『バリヴェルナ荘の崩壊』から訳者が選んだ日本オリジナルの選集です。
こういうことあるあると頷いたり、じりじりと追い詰められる主人公の姿にいたたまれない気持ちになったり、思いがけない赦しにほっとしたりと、嵐にもまれる小舟のようにブッツァーティに翻弄された至福の数時間でした。
「機械」の初めのほうは『石の幻影』を思わせるものがあり、あっちの方向に行くのかなと思っていたら、めっちゃホラーな展開になり、ちょっとよくわからない結末に。訳者の解説を読んでなるほどとは思ったけど、それだけじゃないような気もする。あの終わり方は不穏だ。
チェーヴェレ
騎士勲章受勲者インブリアーニ氏の犯罪
変わってしまった弟
新しい警察署長
剣闘士
家の中の蛆虫
リゴレット
エレブス自動車整備工場
個人的な付き添い
巨きくなるハリネズミ
魔法にかかった男
機械
ヴァチカンの烏
新しい奇妙な友人たち
あるペットの恐るべき復讐
大蛇
偶像崇拝裁判
勝利
聖アントニウスの誘惑
屋根裏部屋
いちばん長い「屋根裏部屋」のリンゴは、酒にも麻薬にも女にも変換して読むことができるけれど、要するに何かに耽溺しすぎて、自分が本来しなくてはならないことを放り出した人間の良心の呵責が強迫観念となって襲いかかってくる話です。これは誰にでも起こり得る話で、とても他人事とは思えないのだけれど、主人公の画家があまりにも自分に都合のいい考え方をするもので、思わず「そんなわけないだろう!」と突っ込みたくもなります。
神や悪魔がたくさん出てくるし、テーマも誘惑や贖罪や赦しに関するものが多いのだけれど、カトリックの信者というのは実際にこれほど常にそうしたことを意識しているんでしょうか。たまらないだろうなあ。いや逆に、ふだんは気にも留めていないから、ふとしたきっかけで怖くなるのだろうか。
この本の背には小さな文字で〈ブッツァーティ短篇集Ⅰ〉と入っていて、このあとⅡ、Ⅲと出ることが決まっているのだそうです。楽しみ!
魔法にかかった男 (ブッツァーティ短篇集)
作者:ディーノ・ブッツァーティ
訳者:長野徹
出版社:東宣出版
ISBN:4885880947
こういうことあるあると頷いたり、じりじりと追い詰められる主人公の姿にいたたまれない気持ちになったり、思いがけない赦しにほっとしたりと、嵐にもまれる小舟のようにブッツァーティに翻弄された至福の数時間でした。
「機械」の初めのほうは『石の幻影』を思わせるものがあり、あっちの方向に行くのかなと思っていたら、めっちゃホラーな展開になり、ちょっとよくわからない結末に。訳者の解説を読んでなるほどとは思ったけど、それだけじゃないような気もする。あの終わり方は不穏だ。
チェーヴェレ
騎士勲章受勲者インブリアーニ氏の犯罪
変わってしまった弟
新しい警察署長
剣闘士
家の中の蛆虫
リゴレット
エレブス自動車整備工場
個人的な付き添い
巨きくなるハリネズミ
魔法にかかった男
機械
ヴァチカンの烏
新しい奇妙な友人たち
あるペットの恐るべき復讐
大蛇
偶像崇拝裁判
勝利
聖アントニウスの誘惑
屋根裏部屋
いちばん長い「屋根裏部屋」のリンゴは、酒にも麻薬にも女にも変換して読むことができるけれど、要するに何かに耽溺しすぎて、自分が本来しなくてはならないことを放り出した人間の良心の呵責が強迫観念となって襲いかかってくる話です。これは誰にでも起こり得る話で、とても他人事とは思えないのだけれど、主人公の画家があまりにも自分に都合のいい考え方をするもので、思わず「そんなわけないだろう!」と突っ込みたくもなります。
神や悪魔がたくさん出てくるし、テーマも誘惑や贖罪や赦しに関するものが多いのだけれど、カトリックの信者というのは実際にこれほど常にそうしたことを意識しているんでしょうか。たまらないだろうなあ。いや逆に、ふだんは気にも留めていないから、ふとしたきっかけで怖くなるのだろうか。
この本の背には小さな文字で〈ブッツァーティ短篇集Ⅰ〉と入っていて、このあとⅡ、Ⅲと出ることが決まっているのだそうです。楽しみ!
魔法にかかった男 (ブッツァーティ短篇集)
作者:ディーノ・ブッツァーティ
訳者:長野徹
出版社:東宣出版
ISBN:4885880947
by timeturner
| 2018-03-10 19:00
| 和書
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