空飛ぶ馬 |
ずいぶん前に読もうと思ったことがあるのですが、そのときは主人公の語り口や趣味嗜好がまるで中年のおじさんみたいなのが不自然に感じられて挫折しました。
その後、いろいろなタイプの本を読んできて許容量が広くなったのか、久しぶりに手にとってみたら難なく楽しめた。読書力は経験から生まれるという確かな証拠ですな。
とはいえ、この作品が発表された頃に読んでいたら感じたであろう「私たちの日常にひそむささいだけれど不可思議な謎のなかに、貴重な人生の輝きや生きてゆくことの哀しみが隠されていることを教えてくれる」(宮部みゆき)とまでは感動しなかった。そういう作品、たくさん読んじゃったからね。
織部の霊
砂糖合戦
胡桃の中の鳥
赤頭巾
空飛ぶ馬
ここに出てくるのは犯罪とは言えないような謎がほとんどで、それだけに読んでてつらくなるような陰惨な話はなく、自分のまわりでも起こりそうな身近なことに感じられます。落語や文学に関するいささか年寄りじみた薀蓄もけっこう面白い。
しかし、いまどきの大学生でこんな会話をしている若者たちが本当にいるのだろうか?
シリーズの続きも読むつもりだけど、解説で触れられていた『冬のオペラ』が面白そうなので、まずはそちらからかな。
空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
作者:北村 薫
出版社:東京創元社
ISBN:4488413013