2018年 02月 14日
Lady Fortescue Steps Out |
レディ・フォーテスキューは夫の死後20年間、寡婦として生きてきた。財産と言えるものはボンド・ストリートの邸宅だけで、売れるものは売り払い、残っている召使いは年老いたジョンとベティだけだ。裕福な親戚の家を泊まり歩いてなんとかしのいでいたが、それも甥のロチェスター公爵の家で銀の燭台を盗もうとしたのが発覚し、社交界に顔を出せなくなった。だが、ハイド・パークのベンチに座っていた彼女の目の前で、サンドハースト元大佐が空腹のために失神した日から、すべてが変わり始める。ふたりは、同じような境遇の者たちが一緒になり、わずかな収入を持ち寄れば、なんとか暮らせるのではないかと考えたのだ。ボンド・ストリートの邸宅で同居するようになった老若男女6人は、やがて邸宅をホテルにしようと思いつく・・・。
ジョージ王朝後期、おそらくはジョージ四世時代のロンドンを背景にしています。当然ながら階級制度は厳然としてあり、貴族・地主階級の人々は決して商売に手を出したりはしません。たとえ経営者といえども、ホテル経営に携わるなどということは言語道断。ましてやそのホテルで給仕をしたり料理を作ったりなどしたら、良家の子女が娼婦におちぶれたくらいに思われていた時代です。
レディ、大佐、サーといった称号のある老人たちにはそれでもかつての栄光がありますが、両親を失い、財産もなく、頼れる親戚もいないハリエット、夫が借金だけを残して死んでしまった若き未亡人、両親が全財産を姉に遺したためにわずかな年金だけで暮らすスピンスター。当時の女性たちの苛酷な状況が浮かび上がります。身分を落とすことなく働くにはガヴァネスかコンパニオンの仕事しかなく、それですらハリエットは「美人すぎる」という理由で断られています。
そうしたつらい状況にある人々を主人公にしているにもかかわらず、全体のトーンは明るくユーモラスで、特に詐欺や窃盗を得意とするサー・フィリップスが登場する場面ではドタバタ喜劇のような場面が炸裂。さすが《アガサ・レーズン》シリーズの作者です。
前半は登場人物それぞれの身の上の説明とホテルThe Poor Relationを立ち上げ、ある程度の成功を収めるまでの話で進むのですが、後半以降はハリエットとロチェスター卿のロマンスがメインになってしまうのが私的には残念でした。ヒネリのない『高慢と偏見』みたいなんだもん。
いくら当時の人々が古い階級意識や男女の役割分担に縛られていたといっても、もう少しハリエットには最後まで凛とした気概をもっていてほしかった。次巻に進めるための布石とはいえ、ちょっとどんよりしたエンディングも好きになれませんでした。
このあと、『Miss Tonks Turns to Crime』『Mrs. Budley Falls from Grace』『Sir Philip's Folly』『Colonel Sandhurst to The Rescue』『Back in Society』と続くようなのですが読むかどうかは微妙。
Lady Fortescue Steps Out (The Poor Relation series Book 1)
作者:M. C. Beaton
出版社:RosettaBooks
ISBN:Kindle版
ジョージ王朝後期、おそらくはジョージ四世時代のロンドンを背景にしています。当然ながら階級制度は厳然としてあり、貴族・地主階級の人々は決して商売に手を出したりはしません。たとえ経営者といえども、ホテル経営に携わるなどということは言語道断。ましてやそのホテルで給仕をしたり料理を作ったりなどしたら、良家の子女が娼婦におちぶれたくらいに思われていた時代です。
レディ、大佐、サーといった称号のある老人たちにはそれでもかつての栄光がありますが、両親を失い、財産もなく、頼れる親戚もいないハリエット、夫が借金だけを残して死んでしまった若き未亡人、両親が全財産を姉に遺したためにわずかな年金だけで暮らすスピンスター。当時の女性たちの苛酷な状況が浮かび上がります。身分を落とすことなく働くにはガヴァネスかコンパニオンの仕事しかなく、それですらハリエットは「美人すぎる」という理由で断られています。
そうしたつらい状況にある人々を主人公にしているにもかかわらず、全体のトーンは明るくユーモラスで、特に詐欺や窃盗を得意とするサー・フィリップスが登場する場面ではドタバタ喜劇のような場面が炸裂。さすが《アガサ・レーズン》シリーズの作者です。
前半は登場人物それぞれの身の上の説明とホテルThe Poor Relationを立ち上げ、ある程度の成功を収めるまでの話で進むのですが、後半以降はハリエットとロチェスター卿のロマンスがメインになってしまうのが私的には残念でした。ヒネリのない『高慢と偏見』みたいなんだもん。
いくら当時の人々が古い階級意識や男女の役割分担に縛られていたといっても、もう少しハリエットには最後まで凛とした気概をもっていてほしかった。次巻に進めるための布石とはいえ、ちょっとどんよりしたエンディングも好きになれませんでした。
このあと、『Miss Tonks Turns to Crime』『Mrs. Budley Falls from Grace』『Sir Philip's Folly』『Colonel Sandhurst to The Rescue』『Back in Society』と続くようなのですが読むかどうかは微妙。
Lady Fortescue Steps Out (The Poor Relation series Book 1)
作者:M. C. Beaton
出版社:RosettaBooks
ISBN:Kindle版
by timeturner
| 2018-02-14 19:00
| 洋書
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