2017年 11月 17日
旅の終りは個室寝台車 |
『銀河』『富士』『はやぶさ』『北陸』…寝台列車が毎年のように姿を消していく。25年前、本書に「楽しい列車や車両が合理化の名のもとに消えていくのは淋しいかぎり」と記した宮脇俊三の旅路がいよいよ失われていく。「最長鈍行列車の旅」等々、鉄道嫌いの編集者を伴った津々浦々の鉄道旅を締めくくるのは今はなき寝台特急『はやぶさ』だった…。
門司-福知山(595.1キロ、18時間29分)、東京-青森-大阪-東京2332.2キロ、約1日半)、東京-大阪間を国鉄をいっさい使わずに14時間33分かけて移動。鉄道に興味がない人ならどうしてそんなことをと呆れそうな旅の数々を鉄道嫌いの編集者を伴って敢行した記録。
もともと鉄道に乗るのは好きなので、「あ、こんなコースで乗りたい」「こんな景色を車窓から見てみたい」と思うところが次から次へと出てきて付箋だらけになりました。遠距離逓減制(片道の距離が長くなるほどキロ当たりの運賃が安くなる)というのは大人の休日倶楽部割引とは別に適用されるのだろうか?
同伴者がマイカー派で鉄道嫌いの《藍の子鬼》君というのも愉快。熱く語る作者になんとも冷淡で張り合いのない返答が返されるたびに笑ってしまいました。でも、そんな子鬼がシリーズの最後のほうになると時刻表を自在に操り、旅の醍醐味を語る鉄道達者になっているのもいいです。
うっわあ、時代が違うなあと思ったのは「白鳥」号のなかで乗り合わせた農協団体客との会話。旅行の目的地が山中温泉「お色気ホテル」ですよ。「極彩色の大きなパンフレット」には「仰向けに寝た裸の女性の胸や腹に刺身を盛った『女体盛り』にはじまり、『お遊戯艶会』『湯女』『松茸狩り』『産婦人科ゴッコ』など、いろいろある」のだそう。これはさすがに今の日本ではないでしょうと思ってちょっと検索してみたら、そこまであからさまではないものの「ピンクコンパニオン付き」をうたう風俗専門ホテルがたくさん出てきた。まったくなあ。
にっぽん最長鈍行列車の旅(山陰本線824列車)
東京-大阪・国鉄のない旅
飯田線・天竜下りは各駅停車
東京-札幌・孤独な二人旅
乗りつぎ乗りかえ流氷の海
紀伊半島一周ぜいたく寝台車(夜行鈍行列車「はやたま」)
青森-大阪・特急「白鳥」七変化
雪を見るなら飯山・只見線
九州行・一直線は乗りものづくし
旅の終りは個室寝台車(夜行特急「はやぶさ」)
この中で乗りたいと思ったのは、飯田線乗り通し、早春の北海道・流氷を眺める旅、冬の飯山線・只見線あたりかなあ。
鉄道の旅でいいのは、きちんと日程を組みさえすれば、あとは乗り換え・乗り継ぎを間違えないことだけ気をつければ、道に迷ったり、延々と歩いたり、常に気を張ってなくてはいけなかったりという必要がない点です。まあ、到着が遅れて乗り継げなかったり、雪で立ち往生したりというアクシデントもないわけじゃありませんが、そんなのはどんな旅にもつきもので、日本で、しかも今の時代だったらなんとでもなることです。
それにしてもいいなあ。私も宮脇さんみたいな人と一緒に鉄道の旅をしてみたい。別に計画をたててもらいたいという横着ではなくて、さまざまな薀蓄やそれぞれの路線の見所を見逃さないようタイムリーに隣りで教えてくれる人がいたら最高じゃないですか。まあでも、萌えポイントは人によって違うから、自分と違うところで熱く語られてもうっとおしいかな。
さっそくこの本をバッグに入れて旅に出ようかと思ったのですが、これ、昭和59年(1984年)刊行の本ですからね、もう廃線になっちゃった路線もあります。刊行時でもすでに、山陰本線824列車は出雲市止まりになり、「はやたま」もなくなったとあとがきに書かれています。「はやぶさ」も「白鳥」も廃止になっているようですね。《「北前船」が陸に上ったような列車》という「白鳥」には乗ってみたかったなあ。今だと複数の特急を乗り継いでいくことになるみたい。名寄本線、興浜南線、興浜北線も廃止されてる。残念。
旅の終りは個室寝台車 (河出文庫)
作者:宮脇俊三
出版社:河出書房新社
ISBN:4309410081
門司-福知山(595.1キロ、18時間29分)、東京-青森-大阪-東京2332.2キロ、約1日半)、東京-大阪間を国鉄をいっさい使わずに14時間33分かけて移動。鉄道に興味がない人ならどうしてそんなことをと呆れそうな旅の数々を鉄道嫌いの編集者を伴って敢行した記録。
もともと鉄道に乗るのは好きなので、「あ、こんなコースで乗りたい」「こんな景色を車窓から見てみたい」と思うところが次から次へと出てきて付箋だらけになりました。遠距離逓減制(片道の距離が長くなるほどキロ当たりの運賃が安くなる)というのは大人の休日倶楽部割引とは別に適用されるのだろうか?
同伴者がマイカー派で鉄道嫌いの《藍の子鬼》君というのも愉快。熱く語る作者になんとも冷淡で張り合いのない返答が返されるたびに笑ってしまいました。でも、そんな子鬼がシリーズの最後のほうになると時刻表を自在に操り、旅の醍醐味を語る鉄道達者になっているのもいいです。
うっわあ、時代が違うなあと思ったのは「白鳥」号のなかで乗り合わせた農協団体客との会話。旅行の目的地が山中温泉「お色気ホテル」ですよ。「極彩色の大きなパンフレット」には「仰向けに寝た裸の女性の胸や腹に刺身を盛った『女体盛り』にはじまり、『お遊戯艶会』『湯女』『松茸狩り』『産婦人科ゴッコ』など、いろいろある」のだそう。これはさすがに今の日本ではないでしょうと思ってちょっと検索してみたら、そこまであからさまではないものの「ピンクコンパニオン付き」をうたう風俗専門ホテルがたくさん出てきた。まったくなあ。
にっぽん最長鈍行列車の旅(山陰本線824列車)
東京-大阪・国鉄のない旅
飯田線・天竜下りは各駅停車
東京-札幌・孤独な二人旅
乗りつぎ乗りかえ流氷の海
紀伊半島一周ぜいたく寝台車(夜行鈍行列車「はやたま」)
青森-大阪・特急「白鳥」七変化
雪を見るなら飯山・只見線
九州行・一直線は乗りものづくし
旅の終りは個室寝台車(夜行特急「はやぶさ」)
この中で乗りたいと思ったのは、飯田線乗り通し、早春の北海道・流氷を眺める旅、冬の飯山線・只見線あたりかなあ。
鉄道の旅でいいのは、きちんと日程を組みさえすれば、あとは乗り換え・乗り継ぎを間違えないことだけ気をつければ、道に迷ったり、延々と歩いたり、常に気を張ってなくてはいけなかったりという必要がない点です。まあ、到着が遅れて乗り継げなかったり、雪で立ち往生したりというアクシデントもないわけじゃありませんが、そんなのはどんな旅にもつきもので、日本で、しかも今の時代だったらなんとでもなることです。
それにしてもいいなあ。私も宮脇さんみたいな人と一緒に鉄道の旅をしてみたい。別に計画をたててもらいたいという横着ではなくて、さまざまな薀蓄やそれぞれの路線の見所を見逃さないようタイムリーに隣りで教えてくれる人がいたら最高じゃないですか。まあでも、萌えポイントは人によって違うから、自分と違うところで熱く語られてもうっとおしいかな。
さっそくこの本をバッグに入れて旅に出ようかと思ったのですが、これ、昭和59年(1984年)刊行の本ですからね、もう廃線になっちゃった路線もあります。刊行時でもすでに、山陰本線824列車は出雲市止まりになり、「はやたま」もなくなったとあとがきに書かれています。「はやぶさ」も「白鳥」も廃止になっているようですね。《「北前船」が陸に上ったような列車》という「白鳥」には乗ってみたかったなあ。今だと複数の特急を乗り継いでいくことになるみたい。名寄本線、興浜南線、興浜北線も廃止されてる。残念。
旅の終りは個室寝台車 (河出文庫)
作者:宮脇俊三
出版社:河出書房新社
ISBN:4309410081
by timeturner
| 2017-11-17 19:00
| 和書
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