大奥と料理番 |
相変わらず惣介の鼻の威力が凄い。なにしろ、返り血を浴びた着物(三日くらい経ってる)を入れた行李をもちあげた隼人の袖についた血の臭いを嗅ぎつけるってくらい。それ、ヒトじゃないでしょ、警察犬でしょ。
そういうところとか、季節の素材をつかって丁寧に料理を作るところとか、将軍からあれこれ愚痴を聞かされ、それが当時の政治状況を見せてくれるところなんかは面白いんだけど、肝心の事件がなあ。
なんかこの作者、女や身分の低い者など弱い立場の人間を殺し過ぎ。しかも、みんな罪のない者ばかり。まあ、実在する歴史上の人物は殺すわけにはいかないし、それほど荒んだ世の中だということを示したいのだろうけど。たまに死んで当然みたいな武士も殺されるけど、事件とは関係なくて、単に惣介や隼人のすぐれた人間性を際立たせるための道具みたい。だから、読んだ後味がいまいち。
時代小説は私にとってはあくまでも娯楽のためのもので、浮き世の憂さを忘れさせるようなものであってほしいから、現実を思い起こさせるような話は勘弁してほしいなあと思う。
【誤植メモ】 p.239 9行目 証を捜して出して⇒証を捜し出して
包丁人侍事件帖 大奥と料理番(学研M文庫)
作者:小早川涼
出版社:学習研究社
ISBN:4059006033