2017年 11月 08日
イェーデシュタット三部作 |
イェーデシュタットという、ドイツの架空の町を舞台にした三部作です。
作者が『ルドルフとイッパイアッテナ』や《しろくま》シリーズの斉藤洋さんなので児童書の棚にありましたが、もったいないと思いました。大人も読みたい幻想小説です。
実際には3作目⇒1作目⇒2作目という順序で読んでしまったのですが、特に問題はありませんでした。でも、これから読むなら順番通りがおすすめ。
ドローセルマイアーの人形劇場
高校で数学を教える若者エルンストは、ある日、人形師のドローセルマイアーと出会った。彼の演じる人形芝居を見たエルンストは、自分でも理解しがたいほどその魅力にとりつかれてしまう・・・。
『オイレ夫人の深夜画廊』では鉄道でイェーデシュタットを通りかかった旅人の視点から描かれていましたが、こちらは住人であるエルンストがイェーデシュタットから鉄道で出ていく話。なんともうまくおさめてあったんですね。
作品中でホフマンの『黄金の壺』に触れられているのですが、それを読んで、そうか、この三部作に流れる空気は後期ロマン派のそれだったのかと気がつきました。調べてみたら斉藤さんて元々はドイツ文学者だったんですね!(いまさらの恥)
ドローセルマイアーの人形劇場 (グリーンフィールド)
作者:斉藤 洋
イラスト:森田みちよ
出版社:あかね書房
ISBN:4251066545
アルフレートの時計台
子どもの頃に住んでいたイェーデシュタットに市立病院の小児科医として赴任したクラウスは、昔住んでいた界隈の思い出深い広場に行ってみた。ペガサスの噴水から水は出ていないし、時計台の時計が3時で止まったままなのも昔のままだったが、不思議なことに時計台の入口は開いていた。中に入ってみたクラウスはそこで驚くような経験をする・・・。
三部作の中でこれがいちばんファンタジー風味が強いし、児童文学にも近い印象。斉藤洋さんの魅力が全部つめこまれた話でした。そして、1作目のドローセルマイアーさんはもちろん、3作目へとつながる登場人物たちにも出会えて感激。そうか、あの絵はこういうふうにして生まれたのか。
うっかり3作目から読み始めてしまったわけですが、これはこれで謎解きの楽しみが増してかえってよかったかも。でも、そうなると、三部作で終わらせず、続きをどんどん書いてほしいなあ。オイレ夫人の刊行が2016年だから、次は3、4年後かなあ。待ち遠しい。
アルフレートの時計台
作者:斉藤 洋
イラスト:森田みちよ
出版社:偕成社
ISBN:4036430807
オイレ夫人の深夜画廊
ベルリン大学で哲学を学ぶフランツは、ミュンヘンの大学に移籍するため列車に乗っていたが、積雪のため途中の駅でおろされてしまった。イェーデシュタットというその町で、なんとかホテルをみつけ、駅で聞いた「深夜画廊」という名の夜間専門の書店に足を運ぶと・・・。
こちらは前2作と少し変わって、イェーデシュタットの町を主人公と一緒に歩く散歩小説にもなっています。
第一次大戦時に活躍した撃墜王も登場しますが、戦争の栄光や悲惨を描くのではなく、「翼」というテーマにつながる鍵のひとつにすぎないというところも気に入りました。作者あとがきのマレーネ・ディートリッヒに関するあたりはちょっと余計じゃないかという気がしましたけど。
オイレ夫人の深夜画廊
作者:斉藤 洋
イラスト:森田みちよ
出版社:偕成社
ISBN:4036431501
作者が『ルドルフとイッパイアッテナ』や《しろくま》シリーズの斉藤洋さんなので児童書の棚にありましたが、もったいないと思いました。大人も読みたい幻想小説です。
実際には3作目⇒1作目⇒2作目という順序で読んでしまったのですが、特に問題はありませんでした。でも、これから読むなら順番通りがおすすめ。

高校で数学を教える若者エルンストは、ある日、人形師のドローセルマイアーと出会った。彼の演じる人形芝居を見たエルンストは、自分でも理解しがたいほどその魅力にとりつかれてしまう・・・。
『オイレ夫人の深夜画廊』では鉄道でイェーデシュタットを通りかかった旅人の視点から描かれていましたが、こちらは住人であるエルンストがイェーデシュタットから鉄道で出ていく話。なんともうまくおさめてあったんですね。
作品中でホフマンの『黄金の壺』に触れられているのですが、それを読んで、そうか、この三部作に流れる空気は後期ロマン派のそれだったのかと気がつきました。調べてみたら斉藤さんて元々はドイツ文学者だったんですね!(いまさらの恥)
迷いこむだって? だれだって迷いこんで生まれてくるのだ。迷いこんで、医師や弁護士や、高校教師になるのだ。迷いこみ、迷いつづけて、一生を終えるのだ。それなら、好きな場所で迷っていたほうがいい。エルンストのこの述懐は、大学で教えていたころに斉藤さん自身が感じていたことなのでしょうか。
ドローセルマイアーの人形劇場 (グリーンフィールド)
作者:斉藤 洋
イラスト:森田みちよ
出版社:あかね書房
ISBN:4251066545

子どもの頃に住んでいたイェーデシュタットに市立病院の小児科医として赴任したクラウスは、昔住んでいた界隈の思い出深い広場に行ってみた。ペガサスの噴水から水は出ていないし、時計台の時計が3時で止まったままなのも昔のままだったが、不思議なことに時計台の入口は開いていた。中に入ってみたクラウスはそこで驚くような経験をする・・・。
三部作の中でこれがいちばんファンタジー風味が強いし、児童文学にも近い印象。斉藤洋さんの魅力が全部つめこまれた話でした。そして、1作目のドローセルマイアーさんはもちろん、3作目へとつながる登場人物たちにも出会えて感激。そうか、あの絵はこういうふうにして生まれたのか。
うっかり3作目から読み始めてしまったわけですが、これはこれで謎解きの楽しみが増してかえってよかったかも。でも、そうなると、三部作で終わらせず、続きをどんどん書いてほしいなあ。オイレ夫人の刊行が2016年だから、次は3、4年後かなあ。待ち遠しい。
アルフレートの時計台
作者:斉藤 洋
イラスト:森田みちよ
出版社:偕成社
ISBN:4036430807

ベルリン大学で哲学を学ぶフランツは、ミュンヘンの大学に移籍するため列車に乗っていたが、積雪のため途中の駅でおろされてしまった。イェーデシュタットというその町で、なんとかホテルをみつけ、駅で聞いた「深夜画廊」という名の夜間専門の書店に足を運ぶと・・・。
こちらは前2作と少し変わって、イェーデシュタットの町を主人公と一緒に歩く散歩小説にもなっています。
第一次大戦時に活躍した撃墜王も登場しますが、戦争の栄光や悲惨を描くのではなく、「翼」というテーマにつながる鍵のひとつにすぎないというところも気に入りました。作者あとがきのマレーネ・ディートリッヒに関するあたりはちょっと余計じゃないかという気がしましたけど。
オイレ夫人の深夜画廊
作者:斉藤 洋
イラスト:森田みちよ
出版社:偕成社
ISBN:4036431501
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by timeturner
| 2017-11-08 19:00
| 和書
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