2017年 10月 24日
歴史・時代小説 縦横無尽の読みくらべガイド |
書店の店頭にあふれる時代小説、歴史小説の中から、 時代小説を愛する書評家が傑作五百作超を楽しくオススメする本。
『読み出したら止まらない! 女子ミステリー マストリード100』みたいに一冊につき一章の形で面白本を紹介してくれるのだとばかり思っていたら、一テーマにつき一章で複数の本をいろいろな形で紹介していた。最初は、えーっ、これじゃあ目当ての本がみつけにくいじゃないか!と思ったのだけれど(特に目次を見たとき)、読み始めて納得した。
歴史・時代小説というのは実際に存在した**時代の世界を背景に、実在あるいは架空の人物たちの生き方を語る小説だから、あらすじだけで並べていくとどれも似たようなものになってしまうのよね。
そういう似たような設定の中でどの作家もそれぞれに工夫をこらしているのだから、そのへんをちゃんとわかるように書かなくてはならない。だから、四人の作家の『三国志』を読み比べるというアプローチがあるのは実に的を射たやり方だと思った。
これを読んで再認識したのは、私は歴史小説のファンではないということ。そもそも歴史小説を好む人たちってNHKの大河ドラマを好む人でもあるのではないかな。大矢さんもそうで、ことあるごとにドラマの話が挿入されていて、わかる人にはそれがまたたまらなく面白いのだろうけど、テレビを観ない私はそのたびにちょっとシラケた。
なので、途中から歴史小説の比重が大きい章は適当に読み飛ばし、時代小説のパートだけ熟読することにした。この手の本はそういう読み方ができるのがいいよね。いつか、歴史小説にも興味をもてるようになったら、そのときまたこの本を出してきて読む楽しみもあるというもの。
で、時代小説の話。実は私、《銭形平次》シリーズを最初の1巻で挫折したんですが、挫折した理由である猟奇的な要素はこの『金色の処女(こんじきのおとめ)』だけで、これだけがシリーズの中でも異色作らしい。3巻以降、ガラッ八が登場してからはかなり面白くなるそうなので、そっちから読み始めればよかったのだ。よし、がんばる。
陰陽師は漫画全巻を読んだことがあるので、もういいかと思っていたのですが、大矢さんが書いたものを読むと、やっぱり原作を読まなくちゃなあという気になってくる。でもさあ、ものすごい数だよね。ライフワークになるかも……と思ったけど、一作目を読んだらいけると思った。
ただ、オススメされている中には私がジェンダー論的な視点から「こんなもの二度と読まない」(なめくじ長屋シリーズ)と思ったものもあるので、そこはやはり個人の好みというものがあるから、なにもかも鵜呑みにするわけにはいかない。
というふうに割り切って、読みたい本にどんどん付箋を貼っていったら、前作と同じくらい付箋だらけになっちゃった、しかもまずいことに時代小説というのはシリーズ物が多いのよね。うっかり読んでみて気に入っちゃったらどうしてくれるんだ。いや、それを求めてこの本を買ったわけだけど、それにしたって余生では読み切れない量の「読みたい」リストは精神的なストレスになるよねえ……。
あ、そういうときこそ伝家の宝刀「忘却」を抜けばいいんだ!(そうか?)
【今後のためのメモ】
幡大介『猫間地獄のわらべ歌』『股旅探偵上州呪い村』《大富豪同心》シリーズ
山本一力『かんじき飛脚』
山本巧次『開化鐡道探偵』《大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう》シリーズ
北森鴻『なぜ絵版師に頼まなかったのか』
西山ガラシャ『公方様のお通り抜け』
西條奈加『九十九藤』
高田崇史『鬼神伝』
藤沢周平『秘太刀馬の骨』『驟り雨』《彫師伊之助捕物覚え》シリーズ
あさのあつこ『弥勒の月』《おいち不思議がたり》シリーズ
坂井希久子《居酒屋ぜんや》シリーズ
小早川涼《包丁人侍事件帖》シリーズ
篠綾子《更紗屋おりん雛形帖》シリーズ
武内涼《妖草師》シリーズ
そういえば、前に読みかけてヒロインの主体性のなさに辟易して途中で投げ出し、二度とこの作家のものは読むまいと思った平岩弓枝の《御宿かわせみ》シリーズですが、この本によれば時代につれてヒロイン像が変わり、《新・御宿かわせみ》シリーズでは男たちを𠮟りとばし、先頭を切って行動するタイプになっているらしい。まあ、そうでなくちゃ新しい読者を獲得できないものね。そこまで聞いても読み直す気になれないのだから、よほどトラウマが大きかったようだ。
【誤植メモ】 p.245 6行目 又四郎⇒又八郎
歴史・時代小説 縦横無尽の読みくらべガイド (文春文庫 お 72-1)
作者:大矢博子
出版社:文藝春秋
ISBN:978-4-16-790934-5
『読み出したら止まらない! 女子ミステリー マストリード100』みたいに一冊につき一章の形で面白本を紹介してくれるのだとばかり思っていたら、一テーマにつき一章で複数の本をいろいろな形で紹介していた。最初は、えーっ、これじゃあ目当ての本がみつけにくいじゃないか!と思ったのだけれど(特に目次を見たとき)、読み始めて納得した。
歴史・時代小説というのは実際に存在した**時代の世界を背景に、実在あるいは架空の人物たちの生き方を語る小説だから、あらすじだけで並べていくとどれも似たようなものになってしまうのよね。
そういう似たような設定の中でどの作家もそれぞれに工夫をこらしているのだから、そのへんをちゃんとわかるように書かなくてはならない。だから、四人の作家の『三国志』を読み比べるというアプローチがあるのは実に的を射たやり方だと思った。
これを読んで再認識したのは、私は歴史小説のファンではないということ。そもそも歴史小説を好む人たちってNHKの大河ドラマを好む人でもあるのではないかな。大矢さんもそうで、ことあるごとにドラマの話が挿入されていて、わかる人にはそれがまたたまらなく面白いのだろうけど、テレビを観ない私はそのたびにちょっとシラケた。
なので、途中から歴史小説の比重が大きい章は適当に読み飛ばし、時代小説のパートだけ熟読することにした。この手の本はそういう読み方ができるのがいいよね。いつか、歴史小説にも興味をもてるようになったら、そのときまたこの本を出してきて読む楽しみもあるというもの。
で、時代小説の話。実は私、《銭形平次》シリーズを最初の1巻で挫折したんですが、挫折した理由である猟奇的な要素はこの『金色の処女(こんじきのおとめ)』だけで、これだけがシリーズの中でも異色作らしい。3巻以降、ガラッ八が登場してからはかなり面白くなるそうなので、そっちから読み始めればよかったのだ。よし、がんばる。
陰陽師は漫画全巻を読んだことがあるので、もういいかと思っていたのですが、大矢さんが書いたものを読むと、やっぱり原作を読まなくちゃなあという気になってくる。でもさあ、ものすごい数だよね。ライフワークになるかも……と思ったけど、一作目を読んだらいけると思った。
ただ、オススメされている中には私がジェンダー論的な視点から「こんなもの二度と読まない」(なめくじ長屋シリーズ)と思ったものもあるので、そこはやはり個人の好みというものがあるから、なにもかも鵜呑みにするわけにはいかない。
というふうに割り切って、読みたい本にどんどん付箋を貼っていったら、前作と同じくらい付箋だらけになっちゃった、しかもまずいことに時代小説というのはシリーズ物が多いのよね。うっかり読んでみて気に入っちゃったらどうしてくれるんだ。いや、それを求めてこの本を買ったわけだけど、それにしたって余生では読み切れない量の「読みたい」リストは精神的なストレスになるよねえ……。
あ、そういうときこそ伝家の宝刀「忘却」を抜けばいいんだ!(そうか?)
【今後のためのメモ】
幡大介『猫間地獄のわらべ歌』『股旅探偵上州呪い村』《大富豪同心》シリーズ
山本一力『かんじき飛脚』
山本巧次『開化鐡道探偵』《大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう》シリーズ
北森鴻『なぜ絵版師に頼まなかったのか』
西山ガラシャ『公方様のお通り抜け』
西條奈加『九十九藤』
高田崇史『鬼神伝』
藤沢周平『秘太刀馬の骨』『驟り雨』《彫師伊之助捕物覚え》シリーズ
あさのあつこ『弥勒の月』《おいち不思議がたり》シリーズ
坂井希久子《居酒屋ぜんや》シリーズ
小早川涼《包丁人侍事件帖》シリーズ
篠綾子《更紗屋おりん雛形帖》シリーズ
武内涼《妖草師》シリーズ
そういえば、前に読みかけてヒロインの主体性のなさに辟易して途中で投げ出し、二度とこの作家のものは読むまいと思った平岩弓枝の《御宿かわせみ》シリーズですが、この本によれば時代につれてヒロイン像が変わり、《新・御宿かわせみ》シリーズでは男たちを𠮟りとばし、先頭を切って行動するタイプになっているらしい。まあ、そうでなくちゃ新しい読者を獲得できないものね。そこまで聞いても読み直す気になれないのだから、よほどトラウマが大きかったようだ。
【誤植メモ】 p.245 6行目 又四郎⇒又八郎
歴史・時代小説 縦横無尽の読みくらべガイド (文春文庫 お 72-1)
作者:大矢博子
出版社:文藝春秋
ISBN:978-4-16-790934-5
by timeturner
| 2017-10-24 19:00
| 和書
|
Comments(2)
Commented
by
YAGI節
at 2017-10-24 23:57
x
わー、面白そうな本ですね!
表紙に新選組っ!!
私は逆で、時代小説には殆ど興味がないです。
>歴史小説を好む人たちってNHKの大河ドラマを好む人でも
>あるのではないかな。
深ーく頷いちゃいました(といいつつ、今年は観てない)。
もっとも、歴史小説といっても私の場合、幕末ですが。
偏りまくりなので、立ち読みがいいのかも(爆)。
挙げられている本は知らない物ばかりでしたが(恥)、『秘太刀馬の骨』のドラマは好きでした(大河ではない)。
>でもさあ、ものすごい数だよね。
はい、二冊で「もう、いいか」と思いました>小説『陰陽師』。
漫画は漫画喫茶で第一巻で挫折しました(恥)。
稲垣吾郎さんが晴明役のNHKドラマは大好きでした。
リアルタイムでは、映画の野村萬斎さん版より好きだったのですが、まさか後に萬斎さんのファンになるとは(苦笑)。
でも、晴明といえば、もう羽生選手ですよねー(フクザツ)。
表紙に新選組っ!!
私は逆で、時代小説には殆ど興味がないです。
>歴史小説を好む人たちってNHKの大河ドラマを好む人でも
>あるのではないかな。
深ーく頷いちゃいました(といいつつ、今年は観てない)。
もっとも、歴史小説といっても私の場合、幕末ですが。
偏りまくりなので、立ち読みがいいのかも(爆)。
挙げられている本は知らない物ばかりでしたが(恥)、『秘太刀馬の骨』のドラマは好きでした(大河ではない)。
>でもさあ、ものすごい数だよね。
はい、二冊で「もう、いいか」と思いました>小説『陰陽師』。
漫画は漫画喫茶で第一巻で挫折しました(恥)。
稲垣吾郎さんが晴明役のNHKドラマは大好きでした。
リアルタイムでは、映画の野村萬斎さん版より好きだったのですが、まさか後に萬斎さんのファンになるとは(苦笑)。
でも、晴明といえば、もう羽生選手ですよねー(フクザツ)。
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by
timeturner at 2017-10-25 14:23
> YAGI節さん
そうそう、これを読みながら大矢さんとYAGI節さん、気が合いそうだなあと思ってました(^^)。
第三部なんて「幕末・明治を読む」ですよ。もちろん新撰組とか戊辰戦争とかおおいにフィーチャーされています。私なんてそのへんの章はYAGI節さんのブログで培った知識だけを頼りに読みました(^^;)。
紹介されている本を読むかどうかはともかく、大矢さんの歴史愛にはおおいに共感できるはず。まずは立ち読みしてください。
陰陽師、全巻読むのは大変だから漫画で続きを読もうとしたのですが、読むのがめんどくさくて私も挫折しました。漫画より小説のほうが読みやすいです。慣れなんでしょうか?
陰陽師を読んでいたら平安朝の女性の生き方が気になってきたので、今はそちらを読んでいるところ。ある程度わかったらまた陰陽師に戻るつもりです。
そうそう、これを読みながら大矢さんとYAGI節さん、気が合いそうだなあと思ってました(^^)。
第三部なんて「幕末・明治を読む」ですよ。もちろん新撰組とか戊辰戦争とかおおいにフィーチャーされています。私なんてそのへんの章はYAGI節さんのブログで培った知識だけを頼りに読みました(^^;)。
紹介されている本を読むかどうかはともかく、大矢さんの歴史愛にはおおいに共感できるはず。まずは立ち読みしてください。
陰陽師、全巻読むのは大変だから漫画で続きを読もうとしたのですが、読むのがめんどくさくて私も挫折しました。漫画より小説のほうが読みやすいです。慣れなんでしょうか?
陰陽師を読んでいたら平安朝の女性の生き方が気になってきたので、今はそちらを読んでいるところ。ある程度わかったらまた陰陽師に戻るつもりです。