2017年 06月 19日
村上春樹「騎士団長殺し」メッタ斬り! |
『騎士団長殺し』を筆頭に、『1Q84』『女のいない男たち』『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』といったこの10年の村上春樹作品を俎上に載せ、言いたいことを言いまくる徹底放談。
『村上春樹『騎士団長殺し』34の謎』がすごく面白くて、ふだん自分から外に出かけていって読書会に参加したりすることが苦手(翻訳がらみの読書会には出ますけど)な私には向いている企画だなあと思い、こちらにも手を出してみました。
批評家としても文筆家としてもすぐれたおふたりが歯に衣着せずにメッタ斬りにしたら、どれほど凄いことになるのだろうとドキドキワクワクしながら読んだのですが、意外に普通だったかなあ。
というか、この二人、村上春樹をリアルタイムで読んできた人たちなんですよね。と言っても18歳くらいで読んだというから、私よりはかなり下。でも、それからずっと読み続けてきたから微妙な同士愛みたいなものが身体にしみこんでいて、遠慮をしているわけじゃないんだけど、客観的になれないところがある。
この前の本の米光一成さんと鴻巣友季子さんは、この二人と2、3歳しか違わないんだけど、感覚的には今の若い人たちに近い感じがする。米光さんの場合は特にゲームクリエイターとして常に若い人たちの感覚についてきたわけだから、村上春樹という60代男性に対してはもっと距離をもって見られるのではないか。両組の突っ込みどころの違いを見て、そう感じました。
まあでも、おかしいとか辻褄が合わないとか思うところはみんな共通していて、そういうのを自分ひとりで悶々と考えているだけでなく、「やっぱり、みんなそう思うよね!」と納得できるのがこういう本のいいところ。特に「そうだよね!」と思ったのは以下のところ(ネタバレなので隠しておきます)。
あとがきで豊崎さんがずいぶんと気をつかった言い訳じみたことを書いていますが、こういうのをわざわざ読んで文句を言ってくる人がいるのかなあ。私なんか、『1Q84』BOOK3に関するおふたりの言葉を読んで、ようやく胸のつかえがおりたような気になれたのに。
村上春樹「騎士団長殺し」メッタ斬り!
作者:大森望、豊崎由美
出版社:河出書房新社
ISBN:4309025676
『村上春樹『騎士団長殺し』34の謎』がすごく面白くて、ふだん自分から外に出かけていって読書会に参加したりすることが苦手(翻訳がらみの読書会には出ますけど)な私には向いている企画だなあと思い、こちらにも手を出してみました。
批評家としても文筆家としてもすぐれたおふたりが歯に衣着せずにメッタ斬りにしたら、どれほど凄いことになるのだろうとドキドキワクワクしながら読んだのですが、意外に普通だったかなあ。
というか、この二人、村上春樹をリアルタイムで読んできた人たちなんですよね。と言っても18歳くらいで読んだというから、私よりはかなり下。でも、それからずっと読み続けてきたから微妙な同士愛みたいなものが身体にしみこんでいて、遠慮をしているわけじゃないんだけど、客観的になれないところがある。
この前の本の米光一成さんと鴻巣友季子さんは、この二人と2、3歳しか違わないんだけど、感覚的には今の若い人たちに近い感じがする。米光さんの場合は特にゲームクリエイターとして常に若い人たちの感覚についてきたわけだから、村上春樹という60代男性に対してはもっと距離をもって見られるのではないか。両組の突っ込みどころの違いを見て、そう感じました。
まあでも、おかしいとか辻褄が合わないとか思うところはみんな共通していて、そういうのを自分ひとりで悶々と考えているだけでなく、「やっぱり、みんなそう思うよね!」と納得できるのがこういう本のいいところ。特に「そうだよね!」と思ったのは以下のところ(ネタバレなので隠しておきます)。
豊崎 この免色さんがね、なんか、こう雑な描き方になっているような気がしてしかたないんですよ。雑というか、物語を駆動させるための道具にされちゃってるというか。SF、ミステリー、ファンタジーといったジャンル小説を馬鹿にしているという点についてはこの本で指摘されて初めて気がつきました。だから、あんなふうに宙ぶらりんで終わることが多いのか。カズオ・イシグロがファンタジーを馬鹿にしてル・グィンから怒られた(ル・グィン自身のブログ上でだけど)という話は初めて知りました。純文学作家って、そういう上から視線みたいなものが心の奥にあるものなんでしょうか。
大森 いやいや、ぜんぜん助けてないよ。騎士団長があんなアドバイスをせずに、まりえがおとなしく免色さんに見つかっていれば、なんの問題もなく家に帰されたはず。
大森(前略)今回よかったのはホラーとサスペンスの演出。謎解きはともかく、謎や怪異の提示ではものすごく強いヒキがある。解決のガッカリ感はあるにしても、前二作にくらべて、大枠では比較的ちゃんと話が閉じてるし。
大森(前略)だからこういう話って、普通は子どもを主人公にして描くんですよね。そうすれば、『千と千尋の神隠し』になる。三十六歳の男が穴をくぐって生まれ変わるみたいな話は、普通成立しない。少年期か、ぎりぎり青年まででしょ。でもまあ、今の三十六歳で考えると、たしかにこういうイニシエーションを必要としている人は多いかもという気がするので、そういう意味では、現代にふさわしい、大人のためのファンタジーとして成立している。
あとがきで豊崎さんがずいぶんと気をつかった言い訳じみたことを書いていますが、こういうのをわざわざ読んで文句を言ってくる人がいるのかなあ。私なんか、『1Q84』BOOK3に関するおふたりの言葉を読んで、ようやく胸のつかえがおりたような気になれたのに。
村上春樹「騎士団長殺し」メッタ斬り!
作者:大森望、豊崎由美
出版社:河出書房新社
ISBN:4309025676
by timeturner
| 2017-06-19 19:00
| 和書
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