2017年 05月 16日
レイン 雨を抱きしめて |

一人称のローズ視点で書かれているので、自分でもどうにもならない苦しさが読んでいるこちらにも伝わってきて、なんともいえない気持ちになってしまいました。とはいえ、そういうローズとつきあうまわりの人たちの気持ちもよくわかるから、いやあ、これは地獄だなあとも思う。
全体の設定は『夜中に犬に起こった奇妙な事件』とよく似ています。あっちのクリストファーは男の子、こっちのローズは女の子だけれど、どららも母親がいなくて、父親が男手ひとつで育てている。子どもは高機能自閉症(アスペルガー症候群)で頭はいいけれど、こだわりが強く、人に触られるのが苦手。予想していなかったことが起こるとパニックを起こしてしまう。
あちらでは母親を探しに行くのに対して、こちらでは犬を探すわけだけれど、アメリカは車社会だから子どもがひとりで出かけるわけにはいかず、その点で動きが制限されて話がちんまりまとまってしまった感がある。電話か、大人に連れていってもらうしかないからね。
あと、ウェルドンおじさんの存在が微妙。ああいう父親にああいう娘という設定で始まったときには、うわあ、悲惨な話になりそうだなあとびびったのだけれど、すぐにウェルドンおじさんが登場してくれて、ほっとすると同時に、ちょっと都合よすぎるんじゃない?とも思った。それに、あの終わり方じゃお父さんが気の毒すぎる。つらい子ども時代をおくった挙句にあれじゃあ可哀相だ。
レイン: 雨を抱きしめて (Sunnyside Books)
原題:Rain Reign
作者:アン・M・マーティン
訳者:西本かおる
出版社:小峰書店
ISBN:433828711X
by timeturner
| 2017-05-16 19:00
| 和書
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