2017年 04月 09日
Operation Pax |
ケチな詐欺師稼業のRouthはたまたま通りかかったコッツウォルズの小さな村でマナーハウスにおびき入れられ、監禁される。そこは何かの研究所になっているようで、厳重な警戒がしかれていたが、Routhは機密書類を奪って脱出し、オックスフォードまで逃れた。一方、そのオックスフォードには、妹の行方不明になった婚約者を探すため、スコットランドヤードの副総監であるアプルビーがBede's Collegeを訪れていた・・・。
うひゃあ、イネス、ご乱心?と思ってしまったくらいトンデモハップンな展開。そもそも最初の三分の一くらいアプルビイのアの字も出てこなくて、ひたすらRouthというケチな詐欺で生きている小悪党の視点で話が進む。アプルビイ物と思って買ったけれど、ひょっとしたら勘違いだったのかもしれないと、ネットで調べちゃったくらい毛色が違う。
それでも、三分の一を超えたあたりで舞台がオクスフォードに移り、ようやくアプルビイ(副警視総監くらいに出世してる)が出てきたのですが、これがまた正式な警視庁の捜査ではなく、妹の婚約者が行方不明になったのを私人として調べにきているという。妹といっても『ストップ・プレス』に出てきた妹じゃなくて、ジョンとはすごく年が離れた妹でまだオックスフォードの学生なんですって。都合よく出してくるなあ。
学寮でのドンたちの会話は『Death at the Presidents Lodging』と同様、めちゃめちゃ笑えるんだけど、事件の形はまだほとんど見えてこない。アプルビイがRouthと偶然出会ったあたりから、だんだんと話がスピード感を増してくるんですが、いいぞいいぞと思っていると、また急に視点が妹に移り、しかもその妹が乗ったタクシーの運転手が素人とは思えない行動力の持主で、あれよあれよという間に二人で敵地にのりこみ、暴力をふるうは家に火をつけるはの大暴れ。ひょっとしてサイコパス? それとも秘密諜報員? と思ったけど、結局わからないまま終わってしまった。もしかしたら、このあと別の本で使うつもりなのかな。
いやもう、手に汗握るアクションシーンの連続で、『A Private View』のときはヒッチコック映画級と思ったけれど、これはもっと現代に近く、マイケル・ベイの映画になりそうな派手派手しさでした。生まれるのが早すぎたねえ、イネス。今書いてたらおそらくダン・ブラウンみたいな作家になって大儲けしていたかもしれないのに。あ、でも、ダン・ブラウンみたいなシリアスさはイネスにはないな。アメリカとイギリスの違いかな。
それにしてもここで描かれているドンたちは『大学のドンたち』に書かれていたのをさらに戯画化したように滑稽で大笑いしてしまいます。一般のイギリス人がオックスブリッジのドンに対してもつイメージってこうなんでしょうね。
私個人としては派手なアクションシーンよりもオクスフォードの街とボドリアン図書館が主要な舞台になっているのがいちばんの魅力でした。ボドリアンの地下の書庫については前からすごく興味があったので、終盤はもうわくわくしっぱなし。
そのボドリアンについてこんなことが書かれていて、とても納得しました。図書館の中に漂う独特の匂いについてです。
ところで、アマゾンから《Inspector Appleby》シリーズのKindle版がいっせいに姿を消してしまいました。今でも買えるのは『Death at the Presidents Lodging』だけです。版権がらみで何かトラブルでもあったのでしょうか。ハードカバー、ペーパーバックも新刊はなく、すべて中古、しかもけっこうな値段がついています。英国アマゾンではAudio 版が無料トライアルでダウンロードできるようになっていますが、オーディオ版じゃねえ。失敗したなあ。Kindle本はかさばるものじゃないんだから、まとめて買っておけばよかった。
Operation Pax (Inspector Appleby) (English Edition)
作者:Michael Innes
出版社:House of Stratus
ISBN:Kindle版
うひゃあ、イネス、ご乱心?と思ってしまったくらいトンデモハップンな展開。そもそも最初の三分の一くらいアプルビイのアの字も出てこなくて、ひたすらRouthというケチな詐欺で生きている小悪党の視点で話が進む。アプルビイ物と思って買ったけれど、ひょっとしたら勘違いだったのかもしれないと、ネットで調べちゃったくらい毛色が違う。
それでも、三分の一を超えたあたりで舞台がオクスフォードに移り、ようやくアプルビイ(副警視総監くらいに出世してる)が出てきたのですが、これがまた正式な警視庁の捜査ではなく、妹の婚約者が行方不明になったのを私人として調べにきているという。妹といっても『ストップ・プレス』に出てきた妹じゃなくて、ジョンとはすごく年が離れた妹でまだオックスフォードの学生なんですって。都合よく出してくるなあ。
学寮でのドンたちの会話は『Death at the Presidents Lodging』と同様、めちゃめちゃ笑えるんだけど、事件の形はまだほとんど見えてこない。アプルビイがRouthと偶然出会ったあたりから、だんだんと話がスピード感を増してくるんですが、いいぞいいぞと思っていると、また急に視点が妹に移り、しかもその妹が乗ったタクシーの運転手が素人とは思えない行動力の持主で、あれよあれよという間に二人で敵地にのりこみ、暴力をふるうは家に火をつけるはの大暴れ。ひょっとしてサイコパス? それとも秘密諜報員? と思ったけど、結局わからないまま終わってしまった。もしかしたら、このあと別の本で使うつもりなのかな。
いやもう、手に汗握るアクションシーンの連続で、『A Private View』のときはヒッチコック映画級と思ったけれど、これはもっと現代に近く、マイケル・ベイの映画になりそうな派手派手しさでした。生まれるのが早すぎたねえ、イネス。今書いてたらおそらくダン・ブラウンみたいな作家になって大儲けしていたかもしれないのに。あ、でも、ダン・ブラウンみたいなシリアスさはイネスにはないな。アメリカとイギリスの違いかな。
それにしてもここで描かれているドンたちは『大学のドンたち』に書かれていたのをさらに戯画化したように滑稽で大笑いしてしまいます。一般のイギリス人がオックスブリッジのドンに対してもつイメージってこうなんでしょうね。
私個人としては派手なアクションシーンよりもオクスフォードの街とボドリアン図書館が主要な舞台になっているのがいちばんの魅力でした。ボドリアンの地下の書庫については前からすごく興味があったので、終盤はもうわくわくしっぱなし。
そのボドリアンについてこんなことが書かれていて、とても納得しました。図書館の中に漂う独特の匂いについてです。
As long as this smell endures Oxford will endure too. If its undergraduate population were dispensed with, Oxford would not be very much changed. If its bells, even, fell silent, something would be left. But if this smell evaporated it would be a sign that the soul of Oxford had departed its tenement of grey, eroded stone, and that only its shell, only its tangible and visible surfaces, remained.アプルビイって『Death at the Presidents Lodging』で舞台になったSt Anthony's Collegeの卒業生でしたよね? この本ではBede's Collageの学長が「私の教え子」って言ってるんですが、St.Anthonyで指導教授をしていた人が出世してBede'sの学長になったのかな? 実際のオックスフォード大学にBede'sというカレッジはありませんが、St Anthony'sはあります。
ところで、アマゾンから《Inspector Appleby》シリーズのKindle版がいっせいに姿を消してしまいました。今でも買えるのは『Death at the Presidents Lodging』だけです。版権がらみで何かトラブルでもあったのでしょうか。ハードカバー、ペーパーバックも新刊はなく、すべて中古、しかもけっこうな値段がついています。英国アマゾンではAudio 版が無料トライアルでダウンロードできるようになっていますが、オーディオ版じゃねえ。失敗したなあ。Kindle本はかさばるものじゃないんだから、まとめて買っておけばよかった。
Operation Pax (Inspector Appleby) (English Edition)
作者:Michael Innes
出版社:House of Stratus
ISBN:Kindle版
by timeturner
| 2017-04-09 19:00
| 洋書
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