2017年 03月 02日
ドラゴン・ヴォランの部屋 |
ナポレオン戦争直後、パリへと向かう英国人の青年は、途上で謎めいた美貌の伯爵夫人と出会い、恋に落ちる。そしてこの恋が青年を奇怪な冒険に巻き込んでいく・・・。表題作の中編と短編4作を収録。
平井呈一訳の『吸血鬼カーミラ』に続くレ・ファニュ作品集第二弾という位置づけらしく、そのことといかにも恐ろしいことが起こりそうなタイトルからどれだけ怖い話だろうとドキドキしながら読んだのですが、あらま、びっくり、表題作は怪奇小説じゃなかった。
世間知らずの若者が美女に目がくらみ、巧妙に仕組まれた罠に自らはまりこんでいくようすを描いたサスペンス小説で、警察官が登場してちゃんと謎解きまでしてくれます。主人公が泊まる旅館ドラゴン・ヴォラン亭のたたずまいや因縁話など、幽霊譚めいたエピソードはたくさん出てくるのですが、最後まで超常現象はありません。もちろん悪魔も出てきません。(悪魔のような人間はたくさん出てきますが)
大袈裟な書きっぷりには滑稽味があり、どちらかというと『墓地に建つ館』に近い雰囲気かなあ。そういえば国書刊行会から出ている『レ・ファニュ傑作集』もそういう作品が多かったっけ。あれに載っていた「タイローン河のある名家の物語」はこの本の「ティローン州のある名家の物語」と同じ作品です。
ロバート・アーダ卿の運命
ティローン州のある名家の物語
ウルトー・ド・レイシー
ローラ・シルヴァー・ベル
ドラゴン・ヴォランの部屋
そうはいっても、表題作以外の4編は、悪魔と取引した人間の悲惨な運命(ロバート・アーダ卿の運命)、『ジェイン・エア』ばりの重婚疑惑をからめた悲劇(ティローン州のある名家の物語)、復讐心にこりかたまった幽霊に誘惑される乙女(ウルトー・ド・レイシー)、妖精に誘惑される娘と魔女と呼ばれる老婆の話(ローラ・シルヴァー・ベル)と、いかにもレ・ファニュな内容です。
【誤植メモ】 172p 後ろから3行目 豊富な引用が飾り立てており⇒豊富な引用で飾り立ててあり?
ドラゴン・ヴォランの部屋 (レ・ファニュ傑作選) (創元推理文庫)
原題:The Room in The Dragon Volant
作者:J・S・レ・ファニュ
訳者:千葉康樹
出版社:東京創元社
ISBN:448850602X
平井呈一訳の『吸血鬼カーミラ』に続くレ・ファニュ作品集第二弾という位置づけらしく、そのことといかにも恐ろしいことが起こりそうなタイトルからどれだけ怖い話だろうとドキドキしながら読んだのですが、あらま、びっくり、表題作は怪奇小説じゃなかった。
世間知らずの若者が美女に目がくらみ、巧妙に仕組まれた罠に自らはまりこんでいくようすを描いたサスペンス小説で、警察官が登場してちゃんと謎解きまでしてくれます。主人公が泊まる旅館ドラゴン・ヴォラン亭のたたずまいや因縁話など、幽霊譚めいたエピソードはたくさん出てくるのですが、最後まで超常現象はありません。もちろん悪魔も出てきません。(悪魔のような人間はたくさん出てきますが)
大袈裟な書きっぷりには滑稽味があり、どちらかというと『墓地に建つ館』に近い雰囲気かなあ。そういえば国書刊行会から出ている『レ・ファニュ傑作集』もそういう作品が多かったっけ。あれに載っていた「タイローン河のある名家の物語」はこの本の「ティローン州のある名家の物語」と同じ作品です。
ロバート・アーダ卿の運命
ティローン州のある名家の物語
ウルトー・ド・レイシー
ローラ・シルヴァー・ベル
ドラゴン・ヴォランの部屋
そうはいっても、表題作以外の4編は、悪魔と取引した人間の悲惨な運命(ロバート・アーダ卿の運命)、『ジェイン・エア』ばりの重婚疑惑をからめた悲劇(ティローン州のある名家の物語)、復讐心にこりかたまった幽霊に誘惑される乙女(ウルトー・ド・レイシー)、妖精に誘惑される娘と魔女と呼ばれる老婆の話(ローラ・シルヴァー・ベル)と、いかにもレ・ファニュな内容です。
【誤植メモ】 172p 後ろから3行目 豊富な引用が飾り立てており⇒豊富な引用で飾り立ててあり?
ドラゴン・ヴォランの部屋 (レ・ファニュ傑作選) (創元推理文庫)
原題:The Room in The Dragon Volant
作者:J・S・レ・ファニュ
訳者:千葉康樹
出版社:東京創元社
ISBN:448850602X
by timeturner
| 2017-03-02 19:00
| 和書
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