2017年 01月 26日
はじめての海外文学フェア |
2015年に一書店員さんの提案で始まった《はじめての海外文学》フェア。一回目は書店員、翻訳者、出版社の中の人など本に関わりの深い50人が各人1冊ずつ選びました。これまでに多かった古典名作は避け、価格も最高で2500円という縛りをつけたものです。
昨年、2016年にはめでたく第二回目が開催され、今回は翻訳者の方々がメインの選者になり、《ビギナー篇》と《ちょっと背伸び篇》とに分けて本が紹介されました。
関わった翻訳者の方々が一堂に会してのイベントも開催されたのですが、残念ながら私は見にいけませんでした。でも、このイベントの様子が動画つきでこちらに紹介されました。本の表紙で名前だけはよく知っている翻訳者さんたちが生身の姿で、緊張しつつも熱くお勧め本を紹介する姿がすてきです。
2015年のリストには正直言って「海外文学を読んだことのない読者にこれを読ませるのか?!」と驚くような本も混じっていましたが、2016年は難易度を二段階に分けたことで、より初心者向けのフェアになっていると思いました。
ただ、それでもまだ「ほんとにこれで海外文学の読者を増やすことができるのだろうか?」という疑問は残ります。そもそも「はじめて海外文学を読む」人の範囲が広すぎる。海外文学を読まないだけで日本の作家の作品はしっかり読んでいる人から、漫画だけ、ラノベだけの人、全く読まない文学無縁の人たちまでを含むわけで、誰をも満足させる本なんてみつからないよなあ、と思ってしまいます。
第一回も第二回も、選んでいるのは海外文学をさんざん読んでいる人ばかりなので、自分が初めて翻訳文学を読んだときの戸惑いなんて完全に忘れてるんじゃないかな。私だって「海外文学を読んだことのない人にお勧めの本は?」と訊かれたら途方にくれると思います。とはいえ『罪と罰』とか『ピース』なんていうのを出してくるのはちょっとなあ。漫画しか読んだことがない人に『失われた時を求めて』や『ロリータ』を渡しても読み通せないと思う。
ツイッターなどで見た感じでは、このフェアに勇んで出かけていく人、フェアで本を買ったと報告している人は、もともと海外文学好きな人たちがほとんどのように見える。それでも、海外文学の売上が伸びればいいじゃないかということなんだけど、それってその人が別の海外文学を買うつもりだった予算をフェアの本にまわしただけじゃないかという気も(^^;)。
とはいえ、それじゃあどうしたらいいかと考えるとすごく難しい。考えられるのは、対象読者に近い人たち(ある程度本を読んでいる高校生とか、2回のフェアで海外文学の魅力に開眼した人とか)も選者に入れたらいいのではないかということと、新旧の本を山ほど読んでいるプロの書評家の方たちの意見も欲しいとか、かな。
このフェアを長く続けていき、利用者の声をこまめに拾っていくことで、どういう本が実際に初心者のハートをつかむのかというデータが蓄積されていくのかもしれませんね。そのためにはフェア本を買った人たちに事後アンケート(買った本がどうだったかだけでなく、その人の読書履歴なども)をできるといいんですけどね。
【2015年 はじめての海外文学vol.1】(こちらから紹介文つきの小冊子pdfをダウンロードできます)
翼ひろげて/ロビン・クライン
罪と罰/フョードル・ドストエフスキー
ディア・ライフ/アリス・マンロー
伝奇集/ホルヘ・ルイス・ボルヘス
都市は何によってできているのか/パク・ソンウォン
肉体の悪魔/レイモン・ラディゲ
バスカヴィル家の犬/アーサー・コナン・ドイル
花言葉を探して/ヴァネッサ・ディフェンバー
バビロン行きの夜行列車/レイ・ブラッドベリ
春にして君を離れ/アガサ・クリスティ
ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅/レイチェル・ジョイス
ピース/ジーン・ウルフ
復讐法廷/ヘンリー・デンカー
変愛小説集
ペンギンの憂鬱/アンドレイ・クルコフ
町でいちばんの美女/チャールズ・ブコウスキー
マルセロ・イン・ザ・リアルワールド/フランシスコ・X・ストーク
ミスター・ピップ/ロイド・ジョーンズ
6日目の未来/J・アッシャー、キャロリン・マックラー
郵便配達は二度ベルを鳴らす/ジェームズ・M・ケイン
雪の中の三人男/エーリヒ・ケストナー
よしきた、ジーヴス/P・G・ウッドハウス
レイモンド・カーヴァー傑作選
老人と海/アーネスト・ヘミングウェイ
若き日の哀しみ/ダニロ・キシュ
穴/ルイス・サッカー
アメリカの鱒釣り/リチャード・ブローティガン
いちばんここに似合う人/ミランダ・ジュライ
一角獣・多角獣/シオドア・スタージョン
オフシーズン/ジャック・ケッチャム
カーデュラ探偵社/ジャック・リッチー
怪物はささやく/パトリック・ネス
ガットショット・ストレート/ルー・バーニー
クローディアの秘密/E・L・カニグズバーグ
黒後家蜘蛛の会1/アイザック・アシモフ
ゴーストマン 時限紙幣/ロジャー・ホッブズ
ゴールデンボーイ 恐怖の四季 春夏編/スティーヴン・キング
五匹の子豚/アガサ・クリスティー
最後の物たちの国で/ポール・オースター
さよならを待つふたりのために/ジョン・グリーン
ジーヴズの事件簿 大胆不敵の巻/P・G・ウッドハウス
シカゴ育ち/スチュアート・ダイベック
初秋/ロバート・B・パーカー
スイート・ホーム殺人事件/クレイグ・ライス
ストリート・キッズ/ドン・ウィンズロウ
設計者/キム・オンス
地上最後の刑事/ベン・H・ウィンタース
チャイナタウンからの葉書/リチャード・ブローティガン
新訳 チェーホフ短編集
【2016年 はじめての海外文学vol.2】
《ビギナー篇》(こちらで紹介文つきの冊子が見られます)
あなたが選んでくれるもの/ミランダ・ジュライ
歩道橋の魔術師/呉明益
幽霊たち/ポール・オースター
新訳 チェーホフ短編集
古森の秘密/ディーノ・ブッツァーティ
クリスマス・プレゼント/ジェフリー・ディーヴァー
屋根裏の仏さま/ジュリー・オオツカ
ハルムスの世界/ダニイル・ハルムス
菜食主義者/ハン・ガン
亡命ロシア料理/ピョートル・ワイリ&アレクサンドル・ゲニス
卵をめぐる祖父の戦争/デイヴィッド・ベニオフ
34丁目の奇跡/ヴァレンタイン・デイヴィス
紅玉は終わりにして始まり 時間旅行者の系譜/ケルスティン・ギア
不思議を売る男/ジェラルディン・マコックラン
ハートビート/シャロン・クリーチ
海に住む少女/シュペルヴィエル
火打箱/サリー・ガードナー
靴を売るシンデレラ/ジョーン・バウアー
悪童日記/アゴタ・クリストフ
サラスの旅/シヴォーン・ダウド
幸せはどこにある/フランソワ・ルロール
失踪当時の服装は/ヒラリー・ウォー
ペンギンの憂鬱/アンドレイ・クルコフ
スイート・ホーム殺人事件/クレイグ・ライス
時の娘 ロマンティック時間SF傑作選
容疑者/ロバート・クレイス
エベレスト・ファイル シェルパたちの山/マット・ディキンソン
グルブ消息不明/エドゥアルド・メンドサ
カラーパープル/アリス・ウォーカー★
世界の果てのビートルズ/ミカエル・ニエミ
パイは小さな秘密を運ぶ/アラン・ブラッドリー
通い猫アルフィーの奇跡/レイチェル・ウェルズ
アンダー、サンダー、テンダー/チョン・セラン
カモメに飛ぶことを教えた猫/ルイス・セプルペダ
ティファニーで朝食を/トルーマン・カポーティ★
《ちょっと背伸び篇》(こちらで紹介文つきの冊子が見られます)
ナジャ/アンドレ・ブルトン
パライソ・トラベル/ホルヘ・フランコ
ヘルプ 心がつなぐストーリー/キャスリン・ストケット
<グレン・キャリグ号>のボート/ウィリアム・ホープ・ホジスン
歌うダイアモンド/ヘレン・マクロイ
フランケンシュタイン/メアリー・シェリー
阿Q正伝・狂人日記/魯迅
失われた時を求めて1/プルースト
1ドルの価値/賢者の贈り物/O・ヘンリー
ガラパゴスの箱舟/カート・ヴォネガット
ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹/ジェフリー・ユージェニデス
紙の動物園/ケン・リュウ
囀る魚/アンドレアス・セシェ
はるかな星/ロベルト・ボラーニョ
コドモノセカイ
ロリータ/ウラジーミル・ナボコフ
七人の死者/神を見た犬/ブッツァーティ
by timeturner
| 2017-01-26 15:58
| 和書
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