2017年 01月 08日
夜の庭師 |

うおおおお、怖い、面白い、怖い、面白い……そして感動のエンディング。いいなあ、これ。まさに大人のための児童文学。
物語を語ることができる才能というものは、こんなにも強力な武器になるのかと思わされます。武器といってもむやみに他人を攻撃するためのものではありませ。作中でもお話と嘘の違いについて何度か触れられていますが、本物の善いお話は誰も傷つけず、語り手と語り手が大切に思う人たちを守ってくれるものなんですよね。
これを読んでいてジーン・ウルフの『ピース』に出てくるアイルランド人の子守りケイティーを思い出しました。彼女の語る奇妙な味わいのあるお話の数々は実に魅力的でした。やはりアイルランド人にはそういう才能があると思われているのかな。
登場する人たちは主人公も含め、善悪をあわせもった人間らしい人間たちばかり。狂言回しのように使われる小悪党は別として、それぞれが自分の弱い部分と終わりのない戦いをつづけながら成長していこうとしています。老いた語り部ヘスターも、低年齢向きのお伽噺にあるような「親切な魔女」という位置に甘んじてはいません。だから、最後の最後まで力を抜かずに読み進められる。
これ、もう映画化権が売れているそうですが、買ったのはディズニーなんですよねえ。子ども向けの生ぬるいものにならないといいなあ。こういう話は怖いところは思いきり怖く作らないと最後の感動が弱くなってしまう。
夜の庭師 (創元推理文庫)
原題:The Night Gardener
作者:ジョナサン・オージエ
訳者:山田順子
出版社:東京創元社
ISBN:4488539025
by timeturner
| 2017-01-08 19:00
| 和書
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