2016年 12月 30日
ガンメタル・ゴースト |
第二次世界大戦中、英空軍で活躍する不死身のパイロット、アクアク・マカークは、隻眼で葉巻と二丁拳銃がトレードマークの猿。だがある日彼は、隠されていた真実を知った。彼が戦ってきた世界はゲームの中にだけ存在する仮想空間だったのだ。一方、英仏連合王国がヨーロッパを牛耳る西暦2059年のパリでは、若き皇太子メロヴィクや人工脳を装着した元記者のヴィクトリアたちが恐ろしい陰謀に気づき、なんとか阻止しようと立ち上がる・・・。
読む前はねえ、および腰だったのよ。私、猿は造形的に苦手で、スティーヴ・マックィーンやブラッド・ピットも好みじゃない。いざ読み始めても最初の頃は「わっ、ボリボリ掻いてるよ」とか「げ、やっぱ臭いいんだ」とか顔をしかめてたんだけど、そのうち気にならなくなって、最後には「猿、やるじゃん!」と(心の中で)叫んでいました。
猿問題以外にも、作品世界の仕組みが100ページくらい読み進めないと理解できないくらい複雑で、途中で挫折する危険もはらんでいるのですが、そこを越えちゃえばあとは一気に入っていけます。
仮想空間と現実が交錯するあたりは「マトリックス」みたいですが、あんなふうにスタイリッシュで哲学風なところは全くなくて、どこまでも娯楽冒険路線を突っ走ります。マカークのキャラはかつてのハードボイルド探偵たちを彷彿とさせるし、脳の半分以上をジェルウェアなる高性能な人工脳と入れ替えられた美女ヴィクトリアは身体能力がスーパーマン並み。まあ、そのわりには活躍場面があまりなくて、やられてるときのほうが多いのが腑に落ちないんですが。ひょっとして、女はどこまでも男(たとえ猿でも)に守られるものでなくてはという気持ちが作者の中にあるのかしらね。天才少女ハッカーも、期待ほどには力を発揮してくれなかったしなあ。
カルト組織が目指す地球壊滅計画は穴だらけだし、それを阻止しようとするメロヴィク皇太子、ヴィクトリア、マカークの陣営も人材不足だしで、あまり迫力のある対決とはいえないんですが、飛行船とかアンドロイドとか核攻撃とか火星行きのロケットといった派手な道具立てでドンパチにぎやかなので気になりません。
これ、ハリウッドで映画化したらけっこういけるんじゃないかな。今ならCGと特殊メイクでマカークも完璧に作れるしね。
それにしても、陰謀を企む国際カルト組織の名前が「アンダイイング Undying」だというのにはちょっと笑っちゃいました。なんか「死ね死ね団」みたい。
そういえば巻末におまけという形で、マカーク登場第一弾ともいうべき短編が載っているのですが、これはないほうがよかったんじゃないかなあ。
ガンメタル・ゴースト (創元SF文庫)
原題:Ack-Ack Macaque
作者:ガレス・L・パウエル
イラスト:鷲尾直広
訳者:三角和代
出版社:東京創元社
ISBN:4488759017
読む前はねえ、および腰だったのよ。私、猿は造形的に苦手で、スティーヴ・マックィーンやブラッド・ピットも好みじゃない。いざ読み始めても最初の頃は「わっ、ボリボリ掻いてるよ」とか「げ、やっぱ臭いいんだ」とか顔をしかめてたんだけど、そのうち気にならなくなって、最後には「猿、やるじゃん!」と(心の中で)叫んでいました。
猿問題以外にも、作品世界の仕組みが100ページくらい読み進めないと理解できないくらい複雑で、途中で挫折する危険もはらんでいるのですが、そこを越えちゃえばあとは一気に入っていけます。
仮想空間と現実が交錯するあたりは「マトリックス」みたいですが、あんなふうにスタイリッシュで哲学風なところは全くなくて、どこまでも娯楽冒険路線を突っ走ります。マカークのキャラはかつてのハードボイルド探偵たちを彷彿とさせるし、脳の半分以上をジェルウェアなる高性能な人工脳と入れ替えられた美女ヴィクトリアは身体能力がスーパーマン並み。まあ、そのわりには活躍場面があまりなくて、やられてるときのほうが多いのが腑に落ちないんですが。ひょっとして、女はどこまでも男(たとえ猿でも)に守られるものでなくてはという気持ちが作者の中にあるのかしらね。天才少女ハッカーも、期待ほどには力を発揮してくれなかったしなあ。
カルト組織が目指す地球壊滅計画は穴だらけだし、それを阻止しようとするメロヴィク皇太子、ヴィクトリア、マカークの陣営も人材不足だしで、あまり迫力のある対決とはいえないんですが、飛行船とかアンドロイドとか核攻撃とか火星行きのロケットといった派手な道具立てでドンパチにぎやかなので気になりません。
これ、ハリウッドで映画化したらけっこういけるんじゃないかな。今ならCGと特殊メイクでマカークも完璧に作れるしね。
それにしても、陰謀を企む国際カルト組織の名前が「アンダイイング Undying」だというのにはちょっと笑っちゃいました。なんか「死ね死ね団」みたい。
そういえば巻末におまけという形で、マカーク登場第一弾ともいうべき短編が載っているのですが、これはないほうがよかったんじゃないかなあ。
ガンメタル・ゴースト (創元SF文庫)
原題:Ack-Ack Macaque
作者:ガレス・L・パウエル
イラスト:鷲尾直広
訳者:三角和代
出版社:東京創元社
ISBN:4488759017
by timeturner
| 2016-12-30 19:00
| 和書
|
Comments(0)