2016年 12月 25日
モンタギューおじさんの怖い話 |

うわあ、不思議な雰囲気。子供向けのヴィクトリア朝怪奇小説という趣です。M・R・ジェイムズの怪奇小説を思い出します。そう思いながら最後に訳者あとがきを読んだら、モンタギューおじさんとエドガーの名前はあの方々からいただいたとほのめかしてありました。やっぱりねえ。
ひとつひとつの話は短いけれど、それぞれにアイディアも展開も実によく練られていて、よくもまあこんなにたくさん思いつくものだと感心してしまいます。エドガーが一人っ子で、それなのに両親がふたりとも子供の相手をするのが苦手な人間だという設定も、ちょっとしたことだけど巧いなと思います。家の中に居場所のない少年がモンタギューおじさんの屋敷に惹きつけられるのは必然ですよね。
森をぬけて
ノボルノ、ヤメロ
元ドア
ベンチ飾り
ささげもの
剪定
額ぶち
精霊(ジン)
毛布箱
道
おじさんの物語
モンタギューおじさんが語る話のほとんどは、主人公の子供が悪さをした結果ひどい目に遭うことになっているので、教育的とまではいかないまでも、読者の子供が自分はこんなに悪い子じゃないから大丈夫だと安心できる余地を残してあるのもいいです。いつなんどき自分も同じ目に遭うかもしれない恐ろしい話ばかりだったらトラウマになっちゃいますし、そもそも読んでもらえませんからね。
ただ、エドガーがこうした話をすべて一回の訪問で聴いたという設定はちょっと無理があるように思いました。こんなに長時間、お茶を飲み続け、話を聴き続けるなんて、現実にはありえませんし、読んでる間何度も「まだ帰らないのか、エドガー」と思ってしまいました。
寄宿学校に行っているらしいエドガーが長い休みで家に帰ってきたときだけモンタギューおじさんの屋敷を訪問できるという設定だから仕方がないのかもしれないけれど、もうちょっと工夫が欲しかったかも。
クリス・プリーストリーの一連の《怖い話〉シリーズは、デイビッド・ロバーツが描くエドワード・ゴーリー風のカバーや挿絵がものすごく魅力的で、ずっと興味がありました。やっと一冊読めたのですが、期待通り面白かったのでシリーズのほかの本も読んでいくつもりです。
モンタギューおじさんの怖い話
原題:Uncle Montague's tales of terror
作者:クリス・プリーストリー
イラスト:デイビッド・ロバーツ
訳者:三辺律子
出版社:理論社
ISBN:4652079419
by timeturner
| 2016-12-25 19:00
| 和書
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