2016年 12月 13日
森のきのこ採り |
きのこの魅力にとりつかれた日本でただひとりの女性きのこ画家が、春・夏・秋・冬に出るきのこについての体験談を語るエッセイ集。
いやあ、どんなことにでもマニアというかオタクというものは存在するものなんですね。まあ、菌類と聞くと南方熊楠のような奇人変人をまず思い浮かべますから、そもそもオタク向けのアイテムなんでしょうね。でも、この本を読んでいると、元々変な人だけでなく、ごくふつうに生きてきた人たちまでおかしくしてしまう魔力がきのこにはあるようです。
でもね、それがすごく楽しそう。いいなあ、私もこういうオタクに混じって山を歩きたいなあと思っちゃったりする。ま、山登りも虫も苦手だから行かないけどね。それに、こういう人たちと一緒でないと毒きのこを採ってしまうだろうし。きのこの毒ってすぐに死ぬわけじゃなくて、長いこと嘔吐や下痢に苦しめられるみたいだから最悪な死に方ですよね。第一、すごく意地汚い感じでみっともないじゃないですか。
画家が書いているエッセイ集ですから、もちろんご本人の手になる挿絵がたくさん添えられています。きのこの形は文章で説明されただけではわからないので、リアルに正確に描かれた挿絵があるととても助かります。で、きのこはリアルなのに一緒に描かれる人間たちはなぜかクマ。擬人化の反対なんだけど、こういうのなんて言うんのかな? 知らずにぱらぱらめくっただけだと童話の本かと思ってしまいそうです。残念なのはモノクロの線画だということで、きのこの色については文字から想像するしかない。
でも、この著者がきのこを描いたカラー絵本も出ていて、これはもう、うっとりするほどきれいなので、そういうのを手元に置いて読むといいと思う。
この人のきのこの絵は上記を含めた3、4冊の絵本は別にして、売れる絵ではなかったらしい。ところがなんと、イギリスのキュー植物園から植物画コレクションに収蔵したいという申し入れがあって承諾したのだそうです。小林さんの画力はもとより、それをみつけるキューも凄いなあと感心しつつも、すぐれた才能がどんどん国外に流出する風潮は相変わらずなんだとため息。
文中に何度も登場するきのこ仲間のカメラマンが撮った写真絵本もあって、こちらにはめったなことでは見られない珍種のきのこがたくさん紹介されているので、これも手元に置いて読むとさらによし。
実は私、翻訳仲間の友人からこの三冊をお借りして、理想の条件で読ませていただきました。ありがとー!
【誤植メモ】 p.62 3行目 科学の発展ために⇒科学の発展のために
森のきのこ採り―すぐそばにあるアナザー・ワールド
作者:小林路子
出版社:白日社
ISBN:4891731095
森のきのこ (絵本図鑑シリーズ)
作者:小林路子
出版社:岩崎書店
ISBN:4265029116
ほら、きのこが… (たくさんのふしぎ傑作集)
文:越智典子
写真:伊沢正名
出版社:福音館書店
ISBN:4834016730
いやあ、どんなことにでもマニアというかオタクというものは存在するものなんですね。まあ、菌類と聞くと南方熊楠のような奇人変人をまず思い浮かべますから、そもそもオタク向けのアイテムなんでしょうね。でも、この本を読んでいると、元々変な人だけでなく、ごくふつうに生きてきた人たちまでおかしくしてしまう魔力がきのこにはあるようです。
でもね、それがすごく楽しそう。いいなあ、私もこういうオタクに混じって山を歩きたいなあと思っちゃったりする。ま、山登りも虫も苦手だから行かないけどね。それに、こういう人たちと一緒でないと毒きのこを採ってしまうだろうし。きのこの毒ってすぐに死ぬわけじゃなくて、長いこと嘔吐や下痢に苦しめられるみたいだから最悪な死に方ですよね。第一、すごく意地汚い感じでみっともないじゃないですか。
画家が書いているエッセイ集ですから、もちろんご本人の手になる挿絵がたくさん添えられています。きのこの形は文章で説明されただけではわからないので、リアルに正確に描かれた挿絵があるととても助かります。で、きのこはリアルなのに一緒に描かれる人間たちはなぜかクマ。擬人化の反対なんだけど、こういうのなんて言うんのかな? 知らずにぱらぱらめくっただけだと童話の本かと思ってしまいそうです。残念なのはモノクロの線画だということで、きのこの色については文字から想像するしかない。
でも、この著者がきのこを描いたカラー絵本も出ていて、これはもう、うっとりするほどきれいなので、そういうのを手元に置いて読むといいと思う。
この人のきのこの絵は上記を含めた3、4冊の絵本は別にして、売れる絵ではなかったらしい。ところがなんと、イギリスのキュー植物園から植物画コレクションに収蔵したいという申し入れがあって承諾したのだそうです。小林さんの画力はもとより、それをみつけるキューも凄いなあと感心しつつも、すぐれた才能がどんどん国外に流出する風潮は相変わらずなんだとため息。
文中に何度も登場するきのこ仲間のカメラマンが撮った写真絵本もあって、こちらにはめったなことでは見られない珍種のきのこがたくさん紹介されているので、これも手元に置いて読むとさらによし。
実は私、翻訳仲間の友人からこの三冊をお借りして、理想の条件で読ませていただきました。ありがとー!
【誤植メモ】 p.62 3行目 科学の発展ために⇒科学の発展のために
森のきのこ採り―すぐそばにあるアナザー・ワールド
作者:小林路子
出版社:白日社
ISBN:4891731095
森のきのこ (絵本図鑑シリーズ)
作者:小林路子
出版社:岩崎書店
ISBN:4265029116
ほら、きのこが… (たくさんのふしぎ傑作集)
文:越智典子
写真:伊沢正名
出版社:福音館書店
ISBN:4834016730
by timeturner
| 2016-12-13 19:00
| 和書
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