2016年 11月 10日
川のうた/アフリカ系アメリカ人の絵本いくつか |
最近出た『川のうた』という絵本を読みました。これ、アメリカの詩人ラングストン・ヒューズの詩にE・B・ルイスという画家が絵をつけたものです。
ラングストン・ヒューズはここのところよく目にするので興味をもったのですが、いやあもう、がつんとやられました。
詩は最初に読んだときは、ふーんという程度にしか感じなかったのですが(感受性が鈍い私)、絵の迫力が半端じゃない。すごく力強いのに繊細さや哀しみも伝わってくる素晴らしい水彩画です。そのおかげで、詩にもその力が流れ込み、何度も読み直すうちに、さまざまな寓意が含まれていることに気づきます。
ヒューズは20世紀初めに生まれたブラック・アメリカン(アフリカ系、ユダヤ系、アメリカ先住民が混血した家系らしい)で、ハーレム・ルネッサンスの指導者とも呼ばれた人です。
だったら、きっと、黒人の権利を声高に主張した詩なんだろうと思うでしょうが、これが全然ちがう。すごくやさしくて素直に読めるんですよ。それなのに、読むうちに川が何を意味しているのか、読んだ人ごとにいろいろなことが思い浮かんでくる。「The Negro Speaks of Rivers」という詩のタイトルとLangston Hughesでネット検索すると原詩が見られます(まだ、著作権は生きていると思うのですが)。
あまりにも感動したので、ラングストン・ヒューズの詩をもっと読んでみたくなり、ちょうど図書館にいたのを幸い、棚を探してみましたが全然みつからない。端末で探してみたけど、区内の他の図書館に何冊かあるものの、今いる図書館にはない。せめて詩のアンソロジーか何かに入っていないかと、問い合わせカウンターでキーワード検索をしてもらいました。
ところが、なんとまあ、ないんです。ラングストン・ヒューズがというより、アフリカ系アメリカ人の詩人の作品を収録していたり、解説していたりする本がない。それならとアメリカ文学評論などの本を置いている棚を教えてもらい、探してみましたが、『アメリカ文学史』と銘打った何百ページもあるような大部の本を見ても、名前と数行の説明があるだけでした。
私自身、アメリカにも、エスニック系アメリカ人の文学者にも興味がなかったのでこれまで気づかなかったのですが、要するにアメリカにおける黒人の位置というものが、こんなところにも反映されていたわけなのでした。
川のうた
原題:The Negro Speaks of Rivers
作者:ラングストン・ヒューズ
イラスト:E・B・ルイス
訳者:さくまゆみこ
出版社:光村教育図書
ISBN:4895728226
『ハーレムの闘う本屋 ルイス・ミショーの生涯 』を読んでから、私のアンテナが少し敏感になったのか、絵本の世界で積極的にそういう空白を埋めていこうという動きを感じます。というか、光村教育図書さんががんばっているみたい。
というわけで、これまでに読んで心に残ったアフリカ系アメリカ人作家による絵本をいくつかご紹介。いずれも作者には語るべきことがあり、それに共鳴した才能あふれるアーティストが絵を提供しているので、大人にも意味のある内容になっています。子供に読ませるとしても、小学校中学年以上かな。
かあさんをまつふゆ
原題:Coming on Home Soon
作者:ジャクリーン・ウッドソン
イラスト:E・B・ルイス
訳者:さくまゆみこ
出版社:光村教育図書
ISBN:4895726991
ノックノック―みらいをひらくドア
原題:Knock Knock
作者:ダニエル・ビーティー
イラスト:ブライアン・コリアー
訳者:さくまゆみこ
出版社:光村教育図書
ISBN:4895728749
『ゴードン・パークス』は多方面で活躍したアフリカ系アメリカ人アーティスト、ゴードン・パークスの、カメラマンとしての経歴をメインにした自伝で、掃除婦だった彼の母親の貧しくとも毅然とした生き方が核になっています。
ゴードン・パークス
原題:Gordon Parks
作者:キャロル・ボストン・ウェザーフォード
イラスト:ジェイミー・クリストフ
訳者:越前敏弥
出版社:光村教育図書
ISBN:4895728978
ラングストン・ヒューズはここのところよく目にするので興味をもったのですが、いやあもう、がつんとやられました。
詩は最初に読んだときは、ふーんという程度にしか感じなかったのですが(感受性が鈍い私)、絵の迫力が半端じゃない。すごく力強いのに繊細さや哀しみも伝わってくる素晴らしい水彩画です。そのおかげで、詩にもその力が流れ込み、何度も読み直すうちに、さまざまな寓意が含まれていることに気づきます。
ヒューズは20世紀初めに生まれたブラック・アメリカン(アフリカ系、ユダヤ系、アメリカ先住民が混血した家系らしい)で、ハーレム・ルネッサンスの指導者とも呼ばれた人です。
だったら、きっと、黒人の権利を声高に主張した詩なんだろうと思うでしょうが、これが全然ちがう。すごくやさしくて素直に読めるんですよ。それなのに、読むうちに川が何を意味しているのか、読んだ人ごとにいろいろなことが思い浮かんでくる。「The Negro Speaks of Rivers」という詩のタイトルとLangston Hughesでネット検索すると原詩が見られます(まだ、著作権は生きていると思うのですが)。
あまりにも感動したので、ラングストン・ヒューズの詩をもっと読んでみたくなり、ちょうど図書館にいたのを幸い、棚を探してみましたが全然みつからない。端末で探してみたけど、区内の他の図書館に何冊かあるものの、今いる図書館にはない。せめて詩のアンソロジーか何かに入っていないかと、問い合わせカウンターでキーワード検索をしてもらいました。
ところが、なんとまあ、ないんです。ラングストン・ヒューズがというより、アフリカ系アメリカ人の詩人の作品を収録していたり、解説していたりする本がない。それならとアメリカ文学評論などの本を置いている棚を教えてもらい、探してみましたが、『アメリカ文学史』と銘打った何百ページもあるような大部の本を見ても、名前と数行の説明があるだけでした。
私自身、アメリカにも、エスニック系アメリカ人の文学者にも興味がなかったのでこれまで気づかなかったのですが、要するにアメリカにおける黒人の位置というものが、こんなところにも反映されていたわけなのでした。
川のうた
原題:The Negro Speaks of Rivers
作者:ラングストン・ヒューズ
イラスト:E・B・ルイス
訳者:さくまゆみこ
出版社:光村教育図書
ISBN:4895728226
というわけで、これまでに読んで心に残ったアフリカ系アメリカ人作家による絵本をいくつかご紹介。いずれも作者には語るべきことがあり、それに共鳴した才能あふれるアーティストが絵を提供しているので、大人にも意味のある内容になっています。子供に読ませるとしても、小学校中学年以上かな。
『かあさんをまつふゆ』は、戦争で男たちが少なくなったシカゴの町に出稼ぎに出た母親を待つ女の子の気持ちを、『川のうた』のE・B・ルイスが、ここではアンドリュー・ワイエス風のリアルでありながら抒情的な絵で描きだしています。
黒人で女性という二重に抑圧されてきた存在を浮き上がらせている秀作です。
原題:Coming on Home Soon
作者:ジャクリーン・ウッドソン
イラスト:E・B・ルイス
訳者:さくまゆみこ
出版社:光村教育図書
ISBN:4895726991
『ノックノック みらいをひらくドア』は、俳優、歌手、作曲家、詩人として活躍するダニエル・ビーティーの詩をもとにして創られた絵本で、父親が突然いなくなった少年の気持ちと成長を描いています。
父親の失踪の理由が書かれていないだけに、読者にいろいろなことを考えさせます。
ビーティーは音楽と動きと言葉を組み合わせたひとりパフォーマンスで知られる人だそうで、その表現力がこの本にも発揮されています。
原題:Knock Knock
作者:ダニエル・ビーティー
イラスト:ブライアン・コリアー
訳者:さくまゆみこ
出版社:光村教育図書
ISBN:4895728749
原題:Gordon Parks
作者:キャロル・ボストン・ウェザーフォード
イラスト:ジェイミー・クリストフ
訳者:越前敏弥
出版社:光村教育図書
ISBN:4895728978
by timeturner
| 2016-11-10 19:00
| 和書
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