2016年 09月 22日
ワイン通の復讐 |
一流の作家陣による美酒犯罪ミステリー12編を集めたアンソロジーで、いくつかは他のアンソロジーで読んだことがありますが、大半は初読でした。いずれも酒に関わったばかりに身の破滅を招いた人たちが出てきて、やっぱ酒は毒だよなあと思わされます。
これ、 AA(Alcoholics Anonymous)推薦図書にしてもいいかもしれない。まあ、好きな人はそれでも飲むんでしょうけど。
アンソロジーなのに編者によるあとがきがついていないのは珍しいなと思ったら奥付のところに、フリーの翻訳者の集まりである「翻訳グループ葦の会」のメンバーそれぞれが各人の嗜好にあわせて作品を選んだという断り書きがありました。
そのためか、訳文の出来にばらつきがあり、なんのひっかかりもなくすんなり読めて作品を楽しめるものがあるかと思うと、学生が宿題で訳したのではないかと思うものもあります。相互チェックはしているんでしょうが、同じグループの仲間の訳文をそうそう率直には指摘しにくいものなんでしょうね。そういう時こそ編集者の出番、と思いますが、出版社はどうやらただ受け取った原稿を本にするだけのところみたいです。
ワイン通の復讐/ロアルド・ダール(渡辺真理訳)
アモンティリャードの樽/エドガー・アラン・ポー(堀たほ子訳)
マーマレードワイン/ジョーン・エイケン(磯部和子訳)
宴の前に/サマセット・モーム著(山上竜子訳)
所得税の謎/マイケル・ギルバート著(江川仲子訳)
アブサンのボトルをめぐって/W・C・モロー著(市岡隆訳)
未亡人に乾杯/クリスチアナ・ブランド著(本田紀久子訳)
失踪/E・C・ベントリー著(古久保美恵子訳)
ハイボールの罠/クレイグ・ライス著(竹沢千恵子訳)
競売前夜/ジョルジュ・シムノン著(芦真璃子訳)
ワイン探偵ベリング/ローレンス・G・ブロックマン著(西井敏世訳)
最後の一瓶/スタンリー・エリン(小坂和子訳)
いちばんあっさりしていて外連味のない「失踪」が好みかな。最初のうちアガサ・クリスティの失踪事件みたいだと思ったせいもあるかも。よけいなことは出さずにワインと謎解きに焦点を絞っているのがいさぎよいと思いました。
【誤植メモ】 p.113 3行目 眼鏡⇒グラス? p.115 15行目 とりに出るの待って⇒とりに出るのを待って p.149 8行目 まだ多量残っている⇒まだ大量に残っている p.227 12行目 愚にもつかないのボトル⇒愚にもつかないボトル p.264 1行目 サン・トアンの取り引きする機会⇒サン・トアンの取り引きをする機会 p.277 8行目 これまでどおりり⇒これまでどおり p.278 14行目 だれがが⇒だれかが
ワイン通の復讐―美酒にまつわるミステリー選集
作者:ロアルド・ダール
訳者:渡辺真理他
出版社:心交社
ISBN:4883023257
by timeturner
| 2016-09-22 19:29
| 和書
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