2016年 09月 02日
リスの王国 |
12歳の少女アンバーは理不尽な父親に腹を立てて家出し、森の木の上で一泊することにした。だが、その森はミンクテイルと呼ばれるリスたちが長い間かかって築き上げた人間の手の届かない『リスの王国』だった。〈下の世界〉からの思いがけない侵入にリスたちは不安になったが、そこにアンバーの父親による発砲事件が起こって一気にパニックが発生、人間を相手どった戦争へと発展する・・・。
うわあ。カバーの雰囲気からして、森のリスを主人公にしたかわいらしい動物ファンタジーかと思っていたら、なんとも凄まじい話でした。リスが主人公だから一見お伽噺っぽいけど、これを同じ人間同士と考えれば、世界中で起こっているあらゆる民族紛争、政治闘争、あるいは侵略戦争そのものです。どんな紛争・戦争も根っこのところはこんな小さな摩擦や誤解から起こるのだと、作者は未来をになう子供たちに訴えたいのかな。
権力と暴力を好む無法者のリスは群れを煽り、戦争に向かわせようとします。それにストップをかけ、もっと相手を理解しようと訴える平和主義者のリスを臆病者呼ばわりして群れから孤立させます。頭も体も老いて自分たちの地位にふさわしくなくなっている長老リスたちは、無法者リスを利用することで自分たちの安寧を謀ります。いやはやまったく。
そんな中で救いとなるのは、常にまっすぐな眼差しで真実を見究めようとするリス、ウッドバインと、彼を支えるローレル、リスたちが暮らす自然を守ろうと知恵をしぼるアンバーと金魚のフン的な弟ウェンデルの存在ですが、お話の中ではとりあえずハッピーエンドとなっても、現実にはそうはいかないよねえ、と大人の読者はため息をついてしまいました。
あと、これは子供でも納得いかないんじゃないかと思うんですが、あれほどひどいことをした父親を、人間というのはそういうものだと悟りきったようなことを言って許してしまうアンバーは、どうなのよ? いくらなんでも12歳であそこまで悟れないでしょう? というか、悟っちゃいけないでしょう。もっと怒らなくちゃ。あの部分は、作者が大人の自分を反映させすぎているような気がしました。
リスの王国―ミンクテイルたちの森 (世界の子どもライブラリー)
原題:Forest
作者:ジャネット・テイラー・ライル
イラスト:村田収
訳者:金原瑞人
出版社:講談社
ISBN:4061947362
うわあ。カバーの雰囲気からして、森のリスを主人公にしたかわいらしい動物ファンタジーかと思っていたら、なんとも凄まじい話でした。リスが主人公だから一見お伽噺っぽいけど、これを同じ人間同士と考えれば、世界中で起こっているあらゆる民族紛争、政治闘争、あるいは侵略戦争そのものです。どんな紛争・戦争も根っこのところはこんな小さな摩擦や誤解から起こるのだと、作者は未来をになう子供たちに訴えたいのかな。
権力と暴力を好む無法者のリスは群れを煽り、戦争に向かわせようとします。それにストップをかけ、もっと相手を理解しようと訴える平和主義者のリスを臆病者呼ばわりして群れから孤立させます。頭も体も老いて自分たちの地位にふさわしくなくなっている長老リスたちは、無法者リスを利用することで自分たちの安寧を謀ります。いやはやまったく。
そんな中で救いとなるのは、常にまっすぐな眼差しで真実を見究めようとするリス、ウッドバインと、彼を支えるローレル、リスたちが暮らす自然を守ろうと知恵をしぼるアンバーと金魚のフン的な弟ウェンデルの存在ですが、お話の中ではとりあえずハッピーエンドとなっても、現実にはそうはいかないよねえ、と大人の読者はため息をついてしまいました。
あと、これは子供でも納得いかないんじゃないかと思うんですが、あれほどひどいことをした父親を、人間というのはそういうものだと悟りきったようなことを言って許してしまうアンバーは、どうなのよ? いくらなんでも12歳であそこまで悟れないでしょう? というか、悟っちゃいけないでしょう。もっと怒らなくちゃ。あの部分は、作者が大人の自分を反映させすぎているような気がしました。
リスの王国―ミンクテイルたちの森 (世界の子どもライブラリー)
原題:Forest
作者:ジャネット・テイラー・ライル
イラスト:村田収
訳者:金原瑞人
出版社:講談社
ISBN:4061947362
by timeturner
| 2016-09-02 19:19
| 和書
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