2016年 08月 05日
証拠が問題 |
八月の月曜の晩、家でひとりの時間を過ごしていたアリソンは、ダブリン出張のはずだった夫スティーヴンが突然帰宅したことに驚かされる。しかも、かなり動揺したようすだった。そのうえ真夜中過ぎに二人の刑事が訪れ、今夜起こった殺人事件の現場から逃げ出すスティーヴンの姿が目撃されたと告げ・・・。
これまで読んだ『血染めのエッグ・コージイ事件 』『切り裂かれたミンクコート事件 』と違い、今回はある程度ゆとりはあるとはいえ中流家庭での話。住まいもカントリーハウスなどではなく、夫婦ふたり暮らしにふさわしいこじんまりした家や、高級とまではいかないフラットしか出てきません。裏カバーにある内容紹介を読んだときには「これは好みじゃないかもなあ」と思ったのですが、アンダーソン、巧いですねえ。面白かった。
被害者の兄を呼んでみたらスコットランドヤードの首席刑事だったという設定がまず素晴らしい。これだけでごはん3杯くらい食べられる感じ。地元警察との微妙なやりとりとか、容疑者やその家族との関係とか、すごくうまく使ってました。
ファルス度に関しては、担当の首席警部と部下の部長刑事とのやりとりで笑わせてくれるものの、これまでほどばかばかしい笑いはありませんでした。ああ、でも、真犯人に翻弄される警察の間抜けぶりそのものがファルスだとも言えるかな。1988年の作品とはいえ、警察の捜査が生ぬるくて「えーっ?!」と思うことたびたびでしたからね。重大な鍵を握る証人が出国したからって行方を捜そうともしない警察なんてあり得る? いつごろ出国したかわかってるんだから、出国管理の記録を見ればすぐにわかることじゃないか。まあ、そういう突っ込みを入れながら読むところもこの人の作品の楽しみのひとつであるわけなんですが。
犯人は3分の1くらい読んだところで「こいつしかいないだろう」とわかります。それでも、話の流れがどう進むのかまったく見当がつかないので、退屈せずに読めました。有栖川有栖さんが解説を書いているのですが、これがいちいち納得のいく内容で、この人が勧めるものは信用できるかもしれないと思いましたよ。『殺意の団欒』読まなくては。
証拠が問題 (創元推理文庫)
原題:Additional Evidence
作者:ジェームズ・アンダーソン
訳者:藤村裕美
出版社:東京創元社
ISBN:4488228046
これまで読んだ『血染めのエッグ・コージイ事件 』『切り裂かれたミンクコート事件 』と違い、今回はある程度ゆとりはあるとはいえ中流家庭での話。住まいもカントリーハウスなどではなく、夫婦ふたり暮らしにふさわしいこじんまりした家や、高級とまではいかないフラットしか出てきません。裏カバーにある内容紹介を読んだときには「これは好みじゃないかもなあ」と思ったのですが、アンダーソン、巧いですねえ。面白かった。
被害者の兄を呼んでみたらスコットランドヤードの首席刑事だったという設定がまず素晴らしい。これだけでごはん3杯くらい食べられる感じ。地元警察との微妙なやりとりとか、容疑者やその家族との関係とか、すごくうまく使ってました。
ファルス度に関しては、担当の首席警部と部下の部長刑事とのやりとりで笑わせてくれるものの、これまでほどばかばかしい笑いはありませんでした。ああ、でも、真犯人に翻弄される警察の間抜けぶりそのものがファルスだとも言えるかな。1988年の作品とはいえ、警察の捜査が生ぬるくて「えーっ?!」と思うことたびたびでしたからね。重大な鍵を握る証人が出国したからって行方を捜そうともしない警察なんてあり得る? いつごろ出国したかわかってるんだから、出国管理の記録を見ればすぐにわかることじゃないか。まあ、そういう突っ込みを入れながら読むところもこの人の作品の楽しみのひとつであるわけなんですが。
犯人は3分の1くらい読んだところで「こいつしかいないだろう」とわかります。それでも、話の流れがどう進むのかまったく見当がつかないので、退屈せずに読めました。有栖川有栖さんが解説を書いているのですが、これがいちいち納得のいく内容で、この人が勧めるものは信用できるかもしれないと思いましたよ。『殺意の団欒』読まなくては。
証拠が問題 (創元推理文庫)
原題:Additional Evidence
作者:ジェームズ・アンダーソン
訳者:藤村裕美
出版社:東京創元社
ISBN:4488228046
by timeturner
| 2016-08-05 19:13
| 和書
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