2016年 07月 23日
誰かが足りない |
駅前の広場に面した小さなレストラン「ハライ」。おいしくて、感じがよくて、やさしくて、懐かしいという評判で、予約を取ることが難しいと言われる店だ。ある年の10月31日の夜、ここを訪れた客たちのそれぞれの過去を章ごとに描いた連作短編集。
地方都市から東京の大学に進学したものの、まともな会社に就職できずコンビニでバイトをしている青年。認知症の症状が出始めた老婦人。母を失ったショックで家から出られなくなった青年。人の失敗を文字通り嗅ぎ分けられてしまう女性……。人生のある段階で何かを失い、その穴を埋められないまま茫然と生きている人たちが、ふとした出会いで再生への道を歩み始めるという筋書きですが、安易に「おいしい食べ物を口にした途端に生きる気力が」になっていなかったので安心しました。
いや、宮下さんがそんな話を書くわけがないとは思ったんですが、あらすじを読むとちょっと不安になったもので。
わりと誰にでも思い当たる喪失が多いのですが、そんな中で異彩を放っている超能力めいた嗅覚をもつ女性が主人公の話が面白かった。作中で主人公も述懐しているのですが、成功の臭いではなく失敗の臭いが嗅げちゃうというのがイヤですよねえ。まあでも、死の臭いよりはましかな。
残念だったのは食事のすぐ前で話は終わっているので、具体的にハライでどんな料理が出されるのかは最後までわからないこと。まあ、読む人によって食べ物の好みはさまざまですから、「なーんだ」とがっかりされる危険を回避した巧みなやり方なのかもしれません。
誰かが足りない (双葉文庫)
作者:宮下奈都
出版社:双葉社
ISBN:4575517178
地方都市から東京の大学に進学したものの、まともな会社に就職できずコンビニでバイトをしている青年。認知症の症状が出始めた老婦人。母を失ったショックで家から出られなくなった青年。人の失敗を文字通り嗅ぎ分けられてしまう女性……。人生のある段階で何かを失い、その穴を埋められないまま茫然と生きている人たちが、ふとした出会いで再生への道を歩み始めるという筋書きですが、安易に「おいしい食べ物を口にした途端に生きる気力が」になっていなかったので安心しました。
いや、宮下さんがそんな話を書くわけがないとは思ったんですが、あらすじを読むとちょっと不安になったもので。
わりと誰にでも思い当たる喪失が多いのですが、そんな中で異彩を放っている超能力めいた嗅覚をもつ女性が主人公の話が面白かった。作中で主人公も述懐しているのですが、成功の臭いではなく失敗の臭いが嗅げちゃうというのがイヤですよねえ。まあでも、死の臭いよりはましかな。
残念だったのは食事のすぐ前で話は終わっているので、具体的にハライでどんな料理が出されるのかは最後までわからないこと。まあ、読む人によって食べ物の好みはさまざまですから、「なーんだ」とがっかりされる危険を回避した巧みなやり方なのかもしれません。
誰かが足りない (双葉文庫)
作者:宮下奈都
出版社:双葉社
ISBN:4575517178
by timeturner
| 2016-07-23 19:27
| 和書
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