2016年 06月 05日
The Star of Kazan |
1896年のオーストリア。三人の教授に仕えるコックのエリーと家政婦のシグリッドは休みの日にアルプスの山に登るのを楽しみにしていたが、ある時、山上の小さな教会で生まれたばかりの赤ん坊をみつけた。ウィーンに戻ったふたりは、教授たちの許しを得て赤ん坊をアニカと名付け、育てることにした。周囲の人たちの愛情をたっぷり浴びて育ったアニカは、元気で働き者の少女に育ったが、ある日、ずっと夢見ていた本物の母親が現れた・・・。
いやあ、さすがエヴァ・イボットソン、ハズレがないなあ。楽しくて楽しくて、毎晩ベッドに入るのが楽しみでした(洋書は基本的にKindle読書で、寝る前にベッドの中で読むことにしている)。後半三分の一はやめられなくなって明け方までかけて一気読みでした。
性格のいい孤児の少女の前に貴族の母親が現れ、広大な館に連れていかれるという筋はありがちのようだけど、そこはイボットソンですからそれだけではありません。二転三転、あっちにひねり、こっちにひねり、いろんな要素を盛り込んで、読む楽しみを堪能させてくれます。
なんといっても登場人物たちがすべてよく出来ている。類型的なキャラもなきにしもあらずなんだけど、そういう場合でもしっかり肉付けしてあるのでとてもリアル。先祖伝来の領地と館に執着する貴族の女性、士官学校をめざして自己鍛錬を怠らないその息子、専門馬鹿で浮世離れしているけれど人のよい教授たち、料理上手で母性愛にあふれたエリーと厳しいながらも公正で愛情深いシグリッド、読書好きでなんでも知っているけど広場恐怖症の親友ポーリーン、力持ちで思いやり深い幼馴染のステファン……ほかにも笑わせてくれる脇役をたっぷりそろえていて飽きさせません。
エリーがアニカをコックとして仕込む場面も多く、いかにもウィーンらしいさまざまな料理が登場するのも魅力です。もちろん、ザッハーなど有名店の料理やお菓子も登場します。子どもが主人公なので、残念ながら町はずれの森にあるホイリゲ村は出てきません(^^;)。
イボットソンはイギリス人なのに、どうしてウィーンやドイツを舞台にした話を書いたのかしら?と思っていたら、イボットソン自身がウィーン生まれのユダヤ人で、8歳でイギリスに移るまでウィーンで育ったのだそう。なるほど、だからこんなにウィーンの通りから通りへと街の様子をリアルに書けたんだな。ついでに言うと、父親は生理学者、母親は作家だったそうなので、浮世離れした教授たちのようすは父親やその同僚からヒントを得たのかもしれませんね。
おそらくペーパーバックのものと思われるカバー画もすごく好き。
The Star of Kazan (English Edition)
作者:Eva Ibbotson
出版社:Macmillan Children's Books
ISBN:Kindle版
いやあ、さすがエヴァ・イボットソン、ハズレがないなあ。楽しくて楽しくて、毎晩ベッドに入るのが楽しみでした(洋書は基本的にKindle読書で、寝る前にベッドの中で読むことにしている)。後半三分の一はやめられなくなって明け方までかけて一気読みでした。
性格のいい孤児の少女の前に貴族の母親が現れ、広大な館に連れていかれるという筋はありがちのようだけど、そこはイボットソンですからそれだけではありません。二転三転、あっちにひねり、こっちにひねり、いろんな要素を盛り込んで、読む楽しみを堪能させてくれます。
なんといっても登場人物たちがすべてよく出来ている。類型的なキャラもなきにしもあらずなんだけど、そういう場合でもしっかり肉付けしてあるのでとてもリアル。先祖伝来の領地と館に執着する貴族の女性、士官学校をめざして自己鍛錬を怠らないその息子、専門馬鹿で浮世離れしているけれど人のよい教授たち、料理上手で母性愛にあふれたエリーと厳しいながらも公正で愛情深いシグリッド、読書好きでなんでも知っているけど広場恐怖症の親友ポーリーン、力持ちで思いやり深い幼馴染のステファン……ほかにも笑わせてくれる脇役をたっぷりそろえていて飽きさせません。
エリーがアニカをコックとして仕込む場面も多く、いかにもウィーンらしいさまざまな料理が登場するのも魅力です。もちろん、ザッハーなど有名店の料理やお菓子も登場します。子どもが主人公なので、残念ながら町はずれの森にあるホイリゲ村は出てきません(^^;)。
イボットソンはイギリス人なのに、どうしてウィーンやドイツを舞台にした話を書いたのかしら?と思っていたら、イボットソン自身がウィーン生まれのユダヤ人で、8歳でイギリスに移るまでウィーンで育ったのだそう。なるほど、だからこんなにウィーンの通りから通りへと街の様子をリアルに書けたんだな。ついでに言うと、父親は生理学者、母親は作家だったそうなので、浮世離れした教授たちのようすは父親やその同僚からヒントを得たのかもしれませんね。
おそらくペーパーバックのものと思われるカバー画もすごく好き。
The Star of Kazan (English Edition)
作者:Eva Ibbotson
出版社:Macmillan Children's Books
ISBN:Kindle版
by timeturner
| 2016-06-05 19:00
| 洋書
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