2016年 05月 23日
十三番目の子 |
イニスコール島の村にはある言い伝えがあった。一人の女が産んだ十三番目の子は、その十三回目の誕生日に、いけにえとして暗黒の神ドンドに捧げるべし。その命と引き替えに、村には十三年の繁栄が約束される、というものだ。明日は、ダーラの十三歳の誕生日。双子の兄の次に、十三番目の子として生まれた娘だ。この世で過ごす最後の夜、ダーラの前に、クロウタドリに姿を変えた空の神ルグが現れた・・・。四十七歳の若さで他界したシヴォーン・ダウドが生前に完成させていた作品のうちの、最後の未発表作品となる。
まるでケルト神話を読んでいるような味わい。パム・スマイの青と黒だけで描かれた絵にもアイルランドの空気を感じます。
どう考えてもハッピーエンドにはなりえない話だけど、それでもこれはおそらく考えられる限り最良のエンディングだろうなあ。アザラシにはちょっとびびったけど、結局はリスだし(意味不明ですみません)。
現代の小説だったら、たとえ村の掟がどうであろうと親は子供を守って島を出ていくだろうと思うけど、問題は「十三年の繁栄」かなあ。欲に目がくらんだ村人たちが総出で止めたら無理だわね。こんな原始的な形ではなくても、今でも公共の福祉のために個人が犠牲になる話は数えきれないくらいあるわけだし。
それにしても、そんなおどろおどろしい話だというのに、なんて静かに、ひそやかに語るのでしょう。愛情の吐露も憎しみの爆発も決してこれみよがしの派手派手しさは見せません。それなのに、深々と心にしみこんできます。『怪物はささやく』のときも感じましたが、少ないページ数の中に濃密な感情をとじこめることのできる作家なのだと思う。それでいて説明はしすぎない。読者ひとりひとりの解釈にゆだねる。素晴らしい作品をもっともっとたくさん遺せたはずなのにと思うと本当に残念です。
ああ、それにしても『ボグ・チャイルド』がまだ読めていない。近所の図書館にあったのでいつでも読めると油断していたら、盗まれたのか破損されたのかなくなってしまいました。区内に一冊もありません。児童書・YA関連のお勧めリストには必ずといっていいくらい載っている本なのに、どうして買い直さないのだろう。いっそ私が買って読み終えたら寄付すればいいのか?(でも、そういう問題じゃないような気がする)
十三番目の子 (児童単行本)
原題:The Ransom of Dond
作者:シヴォーン・ダウド
イラスト:パム・スマイ
訳者:池田真紀子
出版社:小学館
ISBN:4092905602
まるでケルト神話を読んでいるような味わい。パム・スマイの青と黒だけで描かれた絵にもアイルランドの空気を感じます。
どう考えてもハッピーエンドにはなりえない話だけど、それでもこれはおそらく考えられる限り最良のエンディングだろうなあ。アザラシにはちょっとびびったけど、結局はリスだし(意味不明ですみません)。
現代の小説だったら、たとえ村の掟がどうであろうと親は子供を守って島を出ていくだろうと思うけど、問題は「十三年の繁栄」かなあ。欲に目がくらんだ村人たちが総出で止めたら無理だわね。こんな原始的な形ではなくても、今でも公共の福祉のために個人が犠牲になる話は数えきれないくらいあるわけだし。
それにしても、そんなおどろおどろしい話だというのに、なんて静かに、ひそやかに語るのでしょう。愛情の吐露も憎しみの爆発も決してこれみよがしの派手派手しさは見せません。それなのに、深々と心にしみこんできます。『怪物はささやく』のときも感じましたが、少ないページ数の中に濃密な感情をとじこめることのできる作家なのだと思う。それでいて説明はしすぎない。読者ひとりひとりの解釈にゆだねる。素晴らしい作品をもっともっとたくさん遺せたはずなのにと思うと本当に残念です。
ああ、それにしても『ボグ・チャイルド』がまだ読めていない。近所の図書館にあったのでいつでも読めると油断していたら、盗まれたのか破損されたのかなくなってしまいました。区内に一冊もありません。児童書・YA関連のお勧めリストには必ずといっていいくらい載っている本なのに、どうして買い直さないのだろう。いっそ私が買って読み終えたら寄付すればいいのか?(でも、そういう問題じゃないような気がする)
十三番目の子 (児童単行本)
原題:The Ransom of Dond
作者:シヴォーン・ダウド
イラスト:パム・スマイ
訳者:池田真紀子
出版社:小学館
ISBN:4092905602
by timeturner
| 2016-05-23 19:50
| 和書
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