2016年 03月 23日
イギリス四季暦(春夏篇・秋冬篇) |
イギリス通の作者が《春・夏》と《秋・冬》の二冊に分けてイギリスの四季をたっぷりと語ります。美しい水彩画の挿絵もたっぷり。描いているのは作者の息子さんですね。一緒に出かけて描いたと思われる臨場感が素晴らしい。
近所の図書館で見かけてぱらぱらと見たら、住んでみないとなかなか体感できないような季節感がしっかりとらえられていた。イギリスの作家が書いた本を読んでいて、ときどき「これってどういうことなのかなあ」と思うような状況や言葉がすっとわかるようになりそう。やさしく書かれたエッセイ集なのに資料的価値が大。挿絵もたくさんあるので目でも確認できる。それよりなにより見ていて心が癒される。これはどうしても手元に置かなくてはと、借りずに帰宅してAmazonで検索しました。
単行本で出たあと文庫にもなっているけど、今ではどちらも絶版になっていて、古書しかありません。絵と字が大きいほうがいいので、単行本のなるべく状態のよさそうなものをそれぞれ別の業者に注文しました。
届いた本(春夏篇のほう)を読んでいたら、124ページまで来たところで続きがない! なんと、125~128ページが抜けていた。無線綴じの本なので古くなってその4ページだけ外れちゃったんでしょうね。売ってた店でも気づかずに仕入れたんだと思います。古書価より送料のほうが高いような状態だったので返品・交換は求めませんでしたが、検品はしっかりしてほしいというメールだけは出しました。中身は図書館で読めるしね。ただ、抜けたページにはタワーブリッジの絵があったので、それだけは残念です。
『春夏篇』は3月、ちょうど東京の今くらいから始まっているので、実際にその空気を肌に感じるように読めました。オックスフォードに行ったのも3月の終わりから4月にかけてだったので、イギリスの春にはことさら愛着があります。
クロッカスや水仙の球根が芽を出し、小鳥たちのさえずりが聞こえ始める3月。いいですよねえ。もっともイギリスの3月は東京よりずっとずっと寒いんですけどね。でも、そんな中にクロッカスや水仙の花が咲いているのがなんともいえずいじらしく、かわいい。
有名な行事やお祭りのことはインターネットで調べればいくらでも出てきますが、春になると住宅街にやってくる窓ふきの話や、田舎の土地の境界に植えられている生垣は幅が1メートルくらいもあるということや、夏のヒースに咲くヘザーの枝を折ろうとすると針金みたいに硬いとか、イギリスには蝉がいないので蝉しぐれもなく、だから鳥の声が楽しめるのだとか、7月の最後の月曜にはSwan Uppingなるものが行われるとか、へえっと思うことがたくさん書いてあります。
ひとつ、あれっと思ったのは、ロンドンの地下鉄の話。
この片側明けのルール、近ごろでは鉄道会社やエスカレーター業界では「歩行禁止」の方向に変えようとしていますよね。キャンペーン・ポスターも見かけました。エスカレーターは立ち止まって乗るように作られているものだから歩けば危険、事故があったら鉄道会社やエスカレーター会社のせいにされるのはかなわん、ということなのでしょう。もっとも、朝の駅を見る限り、片側明けルールは相変わらず守られています。あそこで右側に立ち止まったりしたら、どんな目に遭わされることか。
どうやらロンドンでも同様の動きがあるようで、最近ツイッターか何かでそういうニュースを見かけました。こちらのほうが私には驚き。だって、イギリス人って危険な崖とかでも柵を作ったりせずat your own riskで個々人の良識に任せるようなところがあるじゃないですか。エスカレーターを走って転んで怪我したって、それは走ったほうが悪いと誰もが考えるような気がするんだけど。
あ、でも、今のロンドンって観光客の数が半端じゃないですから、そっちを対象にしてのルールなのかな。だったらわかる。
あれ、なんか脱線しちゃった。
『秋冬篇』は暗く寂しい雰囲気になるのかなと思っていたら、絵の色彩が全体的に寒色になっただけで、こちらも月ごとにイギリス好きならではの良さがあって楽しめました。まあでも、冬のイギリスに短期間旅行するのはお勧めしません。朝起きると雨が降ってて、8時になっても外は真っ暗。観光に出かけてもどこも寒いし、すぐに暗くなる。観光名所は4時か5時には閉まるので、夜の予定(ライヴ、ミュージカル、芝居など)を入れておかない限りホテルに戻って退屈するばかり、みたいなことになってしまいますから。どこか、田舎のほうの、暖房設備がきちんと整った家で1、2か月暮らすのだったら楽しいだろうと思うけど。
イギリス四季暦〈春・夏〉
作者:出口保夫
イラスト:出口雄大
出版社:中央公論社
ISBN:4487751942
イギリス四季暦〈秋・冬〉
作者:出口保夫
イラスト:出口雄大
出版社:中央公論社
ISBN:4487752086
近所の図書館で見かけてぱらぱらと見たら、住んでみないとなかなか体感できないような季節感がしっかりとらえられていた。イギリスの作家が書いた本を読んでいて、ときどき「これってどういうことなのかなあ」と思うような状況や言葉がすっとわかるようになりそう。やさしく書かれたエッセイ集なのに資料的価値が大。挿絵もたくさんあるので目でも確認できる。それよりなにより見ていて心が癒される。これはどうしても手元に置かなくてはと、借りずに帰宅してAmazonで検索しました。
単行本で出たあと文庫にもなっているけど、今ではどちらも絶版になっていて、古書しかありません。絵と字が大きいほうがいいので、単行本のなるべく状態のよさそうなものをそれぞれ別の業者に注文しました。
届いた本(春夏篇のほう)を読んでいたら、124ページまで来たところで続きがない! なんと、125~128ページが抜けていた。無線綴じの本なので古くなってその4ページだけ外れちゃったんでしょうね。売ってた店でも気づかずに仕入れたんだと思います。古書価より送料のほうが高いような状態だったので返品・交換は求めませんでしたが、検品はしっかりしてほしいというメールだけは出しました。中身は図書館で読めるしね。ただ、抜けたページにはタワーブリッジの絵があったので、それだけは残念です。
『春夏篇』は3月、ちょうど東京の今くらいから始まっているので、実際にその空気を肌に感じるように読めました。オックスフォードに行ったのも3月の終わりから4月にかけてだったので、イギリスの春にはことさら愛着があります。
クロッカスや水仙の球根が芽を出し、小鳥たちのさえずりが聞こえ始める3月。いいですよねえ。もっともイギリスの3月は東京よりずっとずっと寒いんですけどね。でも、そんな中にクロッカスや水仙の花が咲いているのがなんともいえずいじらしく、かわいい。
有名な行事やお祭りのことはインターネットで調べればいくらでも出てきますが、春になると住宅街にやってくる窓ふきの話や、田舎の土地の境界に植えられている生垣は幅が1メートルくらいもあるということや、夏のヒースに咲くヘザーの枝を折ろうとすると針金みたいに硬いとか、イギリスには蝉がいないので蝉しぐれもなく、だから鳥の声が楽しめるのだとか、7月の最後の月曜にはSwan Uppingなるものが行われるとか、へえっと思うことがたくさん書いてあります。
ひとつ、あれっと思ったのは、ロンドンの地下鉄の話。
東京では地下鉄のエスカレーターは、右側に立ったり左側に立ったり、まだきまった習慣はなく、ことによると二列に並んだ立つことさえある。このあとロンドンの地下鉄では皆右側に立ち、急ぐ人のために左側は空けておくということが書いてあるのですが、東京だって左側に立って右側を空けておくことが暗黙の了解になっていますよね。思わず奥付を見たら、この本の初版は1989年。ということは、1980年代まではエスカレーターの片側空けはまだ暗黙のルールにはなっていなかったのかな。いや、そんなことはないよなあ。作者は文筆業でラッシュアワーに電車に乗る生活をしていないし、住んでいるのも鎌倉だそうだから知らなかっただけではないか。
この片側明けのルール、近ごろでは鉄道会社やエスカレーター業界では「歩行禁止」の方向に変えようとしていますよね。キャンペーン・ポスターも見かけました。エスカレーターは立ち止まって乗るように作られているものだから歩けば危険、事故があったら鉄道会社やエスカレーター会社のせいにされるのはかなわん、ということなのでしょう。もっとも、朝の駅を見る限り、片側明けルールは相変わらず守られています。あそこで右側に立ち止まったりしたら、どんな目に遭わされることか。
どうやらロンドンでも同様の動きがあるようで、最近ツイッターか何かでそういうニュースを見かけました。こちらのほうが私には驚き。だって、イギリス人って危険な崖とかでも柵を作ったりせずat your own riskで個々人の良識に任せるようなところがあるじゃないですか。エスカレーターを走って転んで怪我したって、それは走ったほうが悪いと誰もが考えるような気がするんだけど。
あ、でも、今のロンドンって観光客の数が半端じゃないですから、そっちを対象にしてのルールなのかな。だったらわかる。
あれ、なんか脱線しちゃった。
『秋冬篇』は暗く寂しい雰囲気になるのかなと思っていたら、絵の色彩が全体的に寒色になっただけで、こちらも月ごとにイギリス好きならではの良さがあって楽しめました。まあでも、冬のイギリスに短期間旅行するのはお勧めしません。朝起きると雨が降ってて、8時になっても外は真っ暗。観光に出かけてもどこも寒いし、すぐに暗くなる。観光名所は4時か5時には閉まるので、夜の予定(ライヴ、ミュージカル、芝居など)を入れておかない限りホテルに戻って退屈するばかり、みたいなことになってしまいますから。どこか、田舎のほうの、暖房設備がきちんと整った家で1、2か月暮らすのだったら楽しいだろうと思うけど。
イギリス四季暦〈春・夏〉
作者:出口保夫
イラスト:出口雄大
出版社:中央公論社
ISBN:4487751942
イギリス四季暦〈秋・冬〉
作者:出口保夫
イラスト:出口雄大
出版社:中央公論社
ISBN:4487752086
by timeturner
| 2016-03-23 23:06
| 和書
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