2016年 01月 25日
日暮れ竹河岸 |
江戸の十二カ月を鮮やかに切りとった十二の掌篇と広重の「名所江戸百景」を舞台とした七つの短篇。
前半の掌編12編を読んだとき、ひとつ読み始めるごとにその場の情景が一枚のポストカードのように眼前に浮かび上がり、その絵あるいは写真に合わせて一幕の物語が演じられるのを見ているような気がしました。
ビジュアルとテキストが一体化したような。たった7~8ページの掌編なのに、そこまでの力を持たせるなんて凄いなあと思っていたのですが、巻末の作者あとがきを読んだら、こんなことが書いてあってびっくり。
後半の短編は広重の「名所江戸百景」から探せばよいので、こちらは絵を見ながら読みました。
【江戸おんな絵姿十二景】
夜の雪
うぐいす
おぼろ月
つばめ
梅雨の傘
朝顔
晩夏の光
十三夜
明烏
枯野
年の市
三日の暮色
【広重「名所江戸百景」より】
日暮れ竹河岸
飛鳥山
雪の比丘尼橋
大はし夕立ち少女
猿若町月あかり
桐畑に雨のふる日
品川洲崎の男
これが作者生前最後の作品集だそうですが、もう、とことん極めた人ならではの名人芸。特に前半の掌編は、どれひとつとってもむだな言葉はひとつもなくとぎすまされた文章でいながら、硬さや鋭さはまったくない。まったりと情感あふれ、人間性の奥底ををのぞきこむような深みのある作品ばかりです。
日暮れ竹河岸 (文春文庫)
作者:藤沢周平
出版社:文藝春秋
ISBN:4167192349
前半の掌編12編を読んだとき、ひとつ読み始めるごとにその場の情景が一枚のポストカードのように眼前に浮かび上がり、その絵あるいは写真に合わせて一幕の物語が演じられるのを見ているような気がしました。
ビジュアルとテキストが一体化したような。たった7~8ページの掌編なのに、そこまでの力を持たせるなんて凄いなあと思っていたのですが、巻末の作者あとがきを読んだら、こんなことが書いてあってびっくり。
「江戸おんな絵姿十二景」は、かなり前に文藝春秋本誌に一年間連載したもので、一枚の絵から主題を得て、ごく短い一話をつくり上げるといった趣向の企画だった。一話が大体原稿用紙十二、三枚といった分量ではなかったかと思う。いわゆる掌編小説である。私がポストカードを思い浮かべたのも当然だったわけですね。ただし、それが、現に目の前にある絵ではなく、見えない絵をもとにして書かれたというところが只者ではないところ。また、藤沢さんもこのあとで書いていますが、それに合わせた絵を探してきた編集者も大変だったと思います。文庫にはこの時の絵は掲載されていないのがとても残念でした。せめて、なんという絵だったのかリストを載せてくれたらネット検索できるのに。
どんな種類の絵にするかは、その当時浮世絵に凝っていたのですぐにこれと決まったが、ただ漫然と自分の好みの浮世絵にお話をつけるだけでは、おもしろくも何ともない。そこで一月から十二月まで季節に対応した話を、ごく簡単なあらすじだけつくって、担当編集者の佐野佳苗さんにわたし、それに対応するような絵をさがしてもらうことにした。
その上で、小説に仕上げるときは微調整を行うことにした。絵を編集者の選択にゆだねることで、創作のときのハードルを高くしたわけである。
後半の短編は広重の「名所江戸百景」から探せばよいので、こちらは絵を見ながら読みました。
【江戸おんな絵姿十二景】
夜の雪
うぐいす
おぼろ月
つばめ
梅雨の傘
朝顔
晩夏の光
十三夜
明烏
枯野
年の市
三日の暮色
【広重「名所江戸百景」より】
日暮れ竹河岸
飛鳥山
雪の比丘尼橋
大はし夕立ち少女
猿若町月あかり
桐畑に雨のふる日
品川洲崎の男
これが作者生前最後の作品集だそうですが、もう、とことん極めた人ならではの名人芸。特に前半の掌編は、どれひとつとってもむだな言葉はひとつもなくとぎすまされた文章でいながら、硬さや鋭さはまったくない。まったりと情感あふれ、人間性の奥底ををのぞきこむような深みのある作品ばかりです。
日暮れ竹河岸 (文春文庫)
作者:藤沢周平
出版社:文藝春秋
ISBN:4167192349
by timeturner
| 2016-01-25 21:10
| 和書
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