2016年 01月 15日
火打箱 |
農場で幸せに暮らしていた少年オットーは、戦争で家族を失い、兵士の群れに加わった。深い森の奥で敵や仲間の死体に囲まれていたとき、死神と出会い、「きさまは恋に落ち、自分の王国を手に入れる」と告げられた。奇跡的に死神の手を逃れ、男装の少女サファイアーに出会い、恋におちる・・・。
アンデルセンの『火打箱』を『マザーランドの月』のサリー・ガードナーが作り直したヤングアダルト向きフェアリーテールです。
『火打箱』は、アンデルセンの原作に基づいた絵本を2種類くらい読んだことがありますが、そのつど納得いかない感に満たされていました。いくら相手が魔法使いとはいえ、何か悪いことをされたわけでもなく、それどころか金貨を山ほど手に入れることができたのに、火打箱を渡すのが惜しいというだけで魔法使いを殺してしまうのってひどくない? 人格破綻してるよね。
それに、会ったこともないお姫さまを、相手の意志も確かめずに勝手に城から連れてきて、眠っているところにキスするのもひどい。犯罪だよ。
そういった現代人の読者が抱きそうな不満はしっかり解消され、原作には欠けていた人間らしいさまざまな感情がたっぷり加えられ、背筋がひやっとするような怪奇風味も散りばめて、実に読み応えのあるダーク・ファンタジーになっています。特に最後が怖いよ。
白と黒だけのシャープな線で描かれた挿絵も雰囲気をさらに盛り上げています。ところどころで血の赤を効かせているのもはっとするほど印象的です。
火打箱
原題:Tinder
作者:サリー・ガードナー
イラスト:デイヴィッド・ロバーツ
訳者:山田順子
出版社:東京創元社
ISBN:4488010520
アンデルセンの『火打箱』を『マザーランドの月』のサリー・ガードナーが作り直したヤングアダルト向きフェアリーテールです。
『火打箱』は、アンデルセンの原作に基づいた絵本を2種類くらい読んだことがありますが、そのつど納得いかない感に満たされていました。いくら相手が魔法使いとはいえ、何か悪いことをされたわけでもなく、それどころか金貨を山ほど手に入れることができたのに、火打箱を渡すのが惜しいというだけで魔法使いを殺してしまうのってひどくない? 人格破綻してるよね。
それに、会ったこともないお姫さまを、相手の意志も確かめずに勝手に城から連れてきて、眠っているところにキスするのもひどい。犯罪だよ。
そういった現代人の読者が抱きそうな不満はしっかり解消され、原作には欠けていた人間らしいさまざまな感情がたっぷり加えられ、背筋がひやっとするような怪奇風味も散りばめて、実に読み応えのあるダーク・ファンタジーになっています。特に最後が怖いよ。
白と黒だけのシャープな線で描かれた挿絵も雰囲気をさらに盛り上げています。ところどころで血の赤を効かせているのもはっとするほど印象的です。
火打箱
原題:Tinder
作者:サリー・ガードナー
イラスト:デイヴィッド・ロバーツ
訳者:山田順子
出版社:東京創元社
ISBN:4488010520
by timeturner
| 2016-01-15 21:05
| 和書
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