2015年 11月 01日
あやし |
角川ホラー文庫なんていうのがあるんですね。それだけホラー小説は人気があるんでしょうか? それとも、角川らしくニッチな市場に参入してみたのかな。なんにせよ、作家はメジャー、路線はマイナーという選択は賢明だと思いました。
確かにいずれも怖い話ばかりです。小僧の居眠りに出てきた若主人の心中死体(居眠り心中)、嫁にうとまれて座敷牢に閉じ込められた姑の呪い(影牢)、できた奉公人ばかりのお店で新入りを布団部屋にとじこめるしきたり(布団部屋)、決まりかけていた奉公先を器量よしの友人にさらわれた娘の願掛け(梅の花降る)、鬼にとりつかれた姑に使える女中あがりの嫁(安達家の鬼)、かぼちゃ畑で拾われた捨て子の男の子を襲う唐紙に描かれた女の生首(女の首)などなど。
が、《怖さ》にもいろいろあって、どちらかというとここで描かれている怖いものは、怪異現象そのものではなく、それを招いた人の心に重点が置かれているようです。とはいえ、同じくらいの比重で人間の善いところ、捨てがたいところも描いていて、つまりは人間の心をまるごと見せてくれているということなのかな。
居眠り心中
影牢
布団部屋
梅の花降る
安達家の鬼
女の首
時雨鬼
灰神楽
蜆塚
これまで読んだものは商人だったり、武士だったり、岡っ引きだったり、職人だったりといろいろでしたが、この本の9編はすべて奉公人視点で書かれています。寝るところと食べるものだけは保証されているけれど、それ以外はまったく自由がなく、楽しみもなく、ひたすら仕えて働くだけの日々。どうしてそんな境遇に甘んじていられたのかと一瞬思うけれど、よくよく考えてみると今の会社勤めだって似たようなものじゃないかな。休みが増えて、多少の贅沢品が手に入れられるようになっただけで。だからこそ、ここに出てくる女中や丁稚たちの気持ちが自然に身にしみて感じられるのかもしれない。
あ、そういえば、2編に政五郎親分が出てきて、ちょっとうれしかったです。なんかもう知り合いのような気分。
あやし (角川ホラー文庫)
作者:宮部みゆき
出版社:角川書店
ISBN:4043611145
確かにいずれも怖い話ばかりです。小僧の居眠りに出てきた若主人の心中死体(居眠り心中)、嫁にうとまれて座敷牢に閉じ込められた姑の呪い(影牢)、できた奉公人ばかりのお店で新入りを布団部屋にとじこめるしきたり(布団部屋)、決まりかけていた奉公先を器量よしの友人にさらわれた娘の願掛け(梅の花降る)、鬼にとりつかれた姑に使える女中あがりの嫁(安達家の鬼)、かぼちゃ畑で拾われた捨て子の男の子を襲う唐紙に描かれた女の生首(女の首)などなど。
が、《怖さ》にもいろいろあって、どちらかというとここで描かれている怖いものは、怪異現象そのものではなく、それを招いた人の心に重点が置かれているようです。とはいえ、同じくらいの比重で人間の善いところ、捨てがたいところも描いていて、つまりは人間の心をまるごと見せてくれているということなのかな。
居眠り心中
影牢
布団部屋
梅の花降る
安達家の鬼
女の首
時雨鬼
灰神楽
蜆塚
これまで読んだものは商人だったり、武士だったり、岡っ引きだったり、職人だったりといろいろでしたが、この本の9編はすべて奉公人視点で書かれています。寝るところと食べるものだけは保証されているけれど、それ以外はまったく自由がなく、楽しみもなく、ひたすら仕えて働くだけの日々。どうしてそんな境遇に甘んじていられたのかと一瞬思うけれど、よくよく考えてみると今の会社勤めだって似たようなものじゃないかな。休みが増えて、多少の贅沢品が手に入れられるようになっただけで。だからこそ、ここに出てくる女中や丁稚たちの気持ちが自然に身にしみて感じられるのかもしれない。
あ、そういえば、2編に政五郎親分が出てきて、ちょっとうれしかったです。なんかもう知り合いのような気分。
あやし (角川ホラー文庫)
作者:宮部みゆき
出版社:角川書店
ISBN:4043611145
by timeturner
| 2015-11-01 18:40
| 和書
|
Comments(0)