2015年 08月 12日
ブロード街の12日間 |
ヴィクトリア朝のロンドン。13歳の孤児の少年イールは、醸造所のメッセンジャーボーイとして働くかたわら、泥さらいや高名な麻酔医の研究所で動物の世話をするなどして、必死に金を稼いでいた。秘密の目的のために金が必要だったので。そんなある日、イールがアルバイトをしていた仕立屋の主人が急病で倒れた。その症状を見る限り、どうやらだれもが怖れ、「青い恐怖」と呼んでいるコレラのようだ・・・。
第一章の章扉に、いきなりヘンリー・メイヒューの引用ですよ。これを見ただけでもう私好みの内容だとわかりました。
著者あとがきを読んでわかったのですが、これは史実をもとに書かれた小説で、登場する人たちの中でスノウ博士、ホワイトヘッド牧師、ファー博士といった人たちは実在の人物なのだそうです。そういえばヴィクトリア女王の出産の際に麻酔をかけた医師のことは『外科の夜明け』で読んで記憶がありますが、名前までは覚えていませんでしたし、ましてやコレラの原因をつきとめ、それまでだったらもっと死者が増えていたはずのところをストップさせた、という事実も知りませんでした(実際にはスノウが存命の頃には完全に理解されたわけではなかったようですが)。
そうした事実に、なにやら謎の過去をもつ少年とその周囲のロンドン庶民たちを登場させることで、とても生き生きとした歴史読み物になっています。ディケンズの作品に探偵小説やサスペンス小説の風味を加え、スピーディにしたみたいな感じ。
ブロード街の12日間
原題:The Great Trouble
作者:デボラ・ホプキンソン
訳者:千葉茂樹
出版社:あすなろ書房
ISBN:4751524801
第一章の章扉に、いきなりヘンリー・メイヒューの引用ですよ。これを見ただけでもう私好みの内容だとわかりました。
著者あとがきを読んでわかったのですが、これは史実をもとに書かれた小説で、登場する人たちの中でスノウ博士、ホワイトヘッド牧師、ファー博士といった人たちは実在の人物なのだそうです。そういえばヴィクトリア女王の出産の際に麻酔をかけた医師のことは『外科の夜明け』で読んで記憶がありますが、名前までは覚えていませんでしたし、ましてやコレラの原因をつきとめ、それまでだったらもっと死者が増えていたはずのところをストップさせた、という事実も知りませんでした(実際にはスノウが存命の頃には完全に理解されたわけではなかったようですが)。
そうした事実に、なにやら謎の過去をもつ少年とその周囲のロンドン庶民たちを登場させることで、とても生き生きとした歴史読み物になっています。ディケンズの作品に探偵小説やサスペンス小説の風味を加え、スピーディにしたみたいな感じ。
ブロード街の12日間
原題:The Great Trouble
作者:デボラ・ホプキンソン
訳者:千葉茂樹
出版社:あすなろ書房
ISBN:4751524801
by timeturner
| 2015-08-12 19:02
| 和書
|
Comments(2)
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by
八朔
at 2015-08-13 19:12
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またまた、面白そうな本ですね。千葉茂樹さんは、「メアリー・スミス」を訳した人ですよね。
ヘンリー・メーヒューも、聴講している授業の中で「小公女」を取り上げた時に「二人の孤児の花売り娘について」という記事を読んで(日本語です)、俄然、興味がわきました。
time turnerさんのブログをたどって、ヘンリー・メーヒューの本の翻訳があることを知りました。こちらも読みたいです。
ヘンリー・メーヒューも、聴講している授業の中で「小公女」を取り上げた時に「二人の孤児の花売り娘について」という記事を読んで(日本語です)、俄然、興味がわきました。
time turnerさんのブログをたどって、ヘンリー・メーヒューの本の翻訳があることを知りました。こちらも読みたいです。
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by
timeturner at 2015-08-14 00:07
これは絶対に八朔さんの好みだと思います。お子さんの夏休みの読書感想文の宿題にもお勧め。『ロンドン路地裏の生活史』もすごく面白いですよ。メイヒューの原書のKindle版は200円くらいで買えますので持っていると何かと便利かも。短縮版が多いので選ぶときにはご注意ください。ページ数が多いのを選ぶといいです。