2015年 07月 29日
ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件 |
引退し、サセックスで養蜂を営むホームズは、第二次世界大戦後まもなくの日本を訪れ、広島を含む中国地方を旅したのちにイギリスに戻ってきた。自宅のそばのコテージには家政婦のマロー夫人と息子のロジャーが暮らしており、ロジャーはホームズを崇拝して、どこへ行くにもついてきてあらゆることを吸収しようとしていた・・・。
93歳になったホームズを描いた作品で、すでにイアン・マッケラン主演で映画化され、もうすぐ日本でも公開される予定です。映画の詳しい内容にはあまり近づかないようにしていたのですが、訳者あとがきによると真田宏之がウメザキ役で出演するらしい。そうか、日本でのエピソードも入るのか。
おおまかに分けて3つの流れがあり、ひとつは現在の養蜂場でのホームズの暮らし、ひとつは数か月前の日本での経験、そしてもうひとつは何十年も昔、現役時代のホームズが関わった事件で、これはホームズが執筆中の原稿の中に登場して、数少ないホームズの恋物語にもなっています。
年老いたホームズが主人公ということから、それほど明るく元気な話ではないだろうと思っていました。BBCシャーロックみたいな冒険物語にはなるわけないようなあと。とはいえ、ここまで鬱々とした内容だとは思わなかった。うっとおしい雨が続く時期に読んだのもよくなかった。
なにしろ、愛し、信頼した人たち(ワトソン、マイクロフト、ハドソン夫人など)はすべて死んでしまい、かつては剃刀の刃のように鋭かったホームズの脳も老化による記憶力の減退と混濁に悩まされ、執筆も遅々として進まず、養蜂にもたいして魅力を感じなくなっているのですから、なんかもう生きててもしょうがないね状態。おまけに過去の恋愛(というか片思い)は悲劇的な結末を迎えてるしで、もう不幸のてんこ盛り状態。作者はいったいどうしたかったのかと最後のページを読み終えたときに思いました。
つまらないとは言わないけれど、3編のパスティーシュとして読んだとしてもそれほど出来のいいものとは思えないし、かといって老いを描いた純文学として読むには芸も深みもなさすぎる。キャラクターの誰一人として魅力を感じられる人がいないというのもつらい。期待していた本だけに失望も大きかった。
それにしても、山椒がこれほど神秘のパワーに満ちた植物だったとは! 作者は一体どこからそういう知識を得たんだろうな。
ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件
原題:A Slight Trick of The Mind
作者:ミッチ・カリン
訳者:駒月雅子
出版社:KADOKAWA/角川書店
ISBN:4041015596
93歳になったホームズを描いた作品で、すでにイアン・マッケラン主演で映画化され、もうすぐ日本でも公開される予定です。映画の詳しい内容にはあまり近づかないようにしていたのですが、訳者あとがきによると真田宏之がウメザキ役で出演するらしい。そうか、日本でのエピソードも入るのか。
おおまかに分けて3つの流れがあり、ひとつは現在の養蜂場でのホームズの暮らし、ひとつは数か月前の日本での経験、そしてもうひとつは何十年も昔、現役時代のホームズが関わった事件で、これはホームズが執筆中の原稿の中に登場して、数少ないホームズの恋物語にもなっています。
年老いたホームズが主人公ということから、それほど明るく元気な話ではないだろうと思っていました。BBCシャーロックみたいな冒険物語にはなるわけないようなあと。とはいえ、ここまで鬱々とした内容だとは思わなかった。うっとおしい雨が続く時期に読んだのもよくなかった。
なにしろ、愛し、信頼した人たち(ワトソン、マイクロフト、ハドソン夫人など)はすべて死んでしまい、かつては剃刀の刃のように鋭かったホームズの脳も老化による記憶力の減退と混濁に悩まされ、執筆も遅々として進まず、養蜂にもたいして魅力を感じなくなっているのですから、なんかもう生きててもしょうがないね状態。おまけに過去の恋愛(というか片思い)は悲劇的な結末を迎えてるしで、もう不幸のてんこ盛り状態。作者はいったいどうしたかったのかと最後のページを読み終えたときに思いました。
つまらないとは言わないけれど、3編のパスティーシュとして読んだとしてもそれほど出来のいいものとは思えないし、かといって老いを描いた純文学として読むには芸も深みもなさすぎる。キャラクターの誰一人として魅力を感じられる人がいないというのもつらい。期待していた本だけに失望も大きかった。
それにしても、山椒がこれほど神秘のパワーに満ちた植物だったとは! 作者は一体どこからそういう知識を得たんだろうな。
ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件
原題:A Slight Trick of The Mind
作者:ミッチ・カリン
訳者:駒月雅子
出版社:KADOKAWA/角川書店
ISBN:4041015596
by timeturner
| 2015-07-29 17:55
| 和書
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