2015年 03月 08日
Humorous Ghost Stories |
ユーモアあふれる英米仏のゴースト・ストーリー19編を集めた短編集。
怖くしたり不気味にしたりするのはちょっとしたコツがあればそれなりに出来るけれど、笑わせるのは大変なんだなあとつくづく感じました。やりすぎるとわざとらしさが鼻につくし、多少の怖さがないと幽霊物らしくないし、そもそも笑いというのは読者によって好みがけっこう分かれるものですからね。
そういう意味で、この中でどれが面白いかについては読む人によってばらばらに分かれるんじゃないかと思います。
The Canterville Ghost / Oscar Wilde 由緒正しい貴族の館の幽霊が現実主義のアメリカ人一家に苦しめられる話。前半のこれでもかというほどの意地悪さと感動秘話的エンディングとのギャップがすごい。どっちもワイルドなんだけど。『カンタヴィルの幽霊』に表題作として掲載。
The Ghost-Extinguisher / Gelett Burgess 消火器ならぬ消霊器を発明した男の話で、映画「ゴーストバスターズ」の元ネタかと思った。最後がちょっと締まらない気はするけど面白かった。
“Dey Ain't No Ghosts” / Ellis Parker Butler アフリカ系アメリカ人(?)のスラングをそのままスペリングしているので、ものすごく読みにくくて疲れてしまい、面白いのかどうか判断できない。ネイティヴならすぐに見当がつくのだろうけど。
The Transferred Ghost / Frank R. Stockton 『世界怪談名作集』に「幽霊の移転」として収録。
The Mummy's Foot / Theophile Gautier ゴーティエにしては馬鹿っぽさがうすくて物足りない。エジプト風味をまぶしすぎて、違う方向に突っ走っちゃった感じ。
The Rival Ghosts / Brander Matthews 家に憑く幽霊と人に憑く幽霊の対決という構図が面白い。主人公がニューヨークで活躍している弁護士だというのもミソ。
The Water Ghost of Harrowby Hall / John Kendrick Bangs この幽霊封じはユニークだし、見方によっては美しいけど、なんだか幽霊が気の毒になった。年に一度、一時間くらい我慢してやればいいのに。でもまあ、幽霊も呪われていたわけだから、その呪いから解放してあげたとも考えられるのか。(何を真剣に)
Back from that Bourne / Anonymous 新聞に掲載された話のようですが、作者不明というより匿名なのかな。アイディアといい、構成といい、笑わせておきながら背筋が寒くなるような終わらせ方といい、かなりよく書けてて、素人の作ではないと思う。
The Ghost-Ship / Richard Middleton なんとも人を食った楽しいほらばなし。翻訳短編集『幽霊船』の他作品から受ける印象からは別人が書いたとしか思えない。ほかにもこういうの書いてるのかな。
The Transplanted Ghost / Wallace Irwin イギリスからアメリカに古城を移築した億万長者は、憑いているはずの幽霊が出ないことが不満で・・・。新世界に連れていかれた幽霊の話は前にもいくつか読んだけど、こういう方向で描かれているのには初めて出会った。ロマン優先の旧世界への憧れと今風の合理主義がいっしょくたになっているのが面白い。
The Last Ghost in Harmony / Nelson Lloyd 文明化しすぎてしまった村ではだれも幽霊を見ないし聞かない。現代人は自分たちに理解できないものは無視するからね。それにしてもこの幽霊は気弱すぎると思う。
The Ghost of Miser Brimpson / Eden Phillpotts こういう方向に行くんだろうなあというのは誰にでもわかるけど、それを具体的にどう実現するかというところで読者それぞれに考える余地があるし、解答を見てなるほどと納得できるところがいい。それにしても、ジョナサンの母親は気の毒すぎる。
The Haunted Photograph / Ruth McEnery Stuart とり憑かれている写真(心霊写真でも妖精写真でもない)というアイディアは面白い。ハリー・ポッターの世界の写真にも似てるけど、ちょっと違うか。
The Ghost that Got the Button / Will Adams 戦争と中国人と犬……いかにも何か出そうな設定。でも、まさか、ああいうものが出るとは!
The Specter Bridegroom / Washington Irving こてこてのゴシック。ひさしぶりにこういうのを読むと不思議となごむ自分が怖い。
The Specter of Tappington / Compiled by Richard Harris Barham 妙なものに憑りつく幽霊だなと思っていたら……。18世紀生まれの牧師さんが書いたので、くどくどしい表現や古めかしい単語が多く、読むのに苦労した。
In the Barn / Burges Johnson ちょ、ちょっと待って。この本は『Humorous Ghost Stories』だと思ってたんだけど……。めっちゃ怖いじゃないか。
A Shady Plot / Elsie Brown ウィジャボードの流行にうんざりしている幽霊のストライキというアイディアは面白いけど、主人公の恐妻家(愛妻家?)ぶりがわざとらしいのが難。編者が教えている作文教室の生徒の提出物だそうで。ウィジャボードは日本のコックリさんみたいなものらしい。
The Lady and the Ghost /Rose Cecil O'Neill ぽかーん。どうしてこれがこの本の最後に? あの詩がひょっとしてユーモアになるほど下手なのかな?(詩はわからない) とりあえず作者がキューピー人形の生みの親であることはわかった。本業はイラストレーターだけど詩人でもあり婦人参政権活動家でもあったらしい。なのにあのエンディングってどういうこと? これを収録したのは作品の質によるのではなく、ローズ・オニールという女性への編者からのオマージュなのかもしれない。
Humorous Ghost Stories (English Edition)
編者:Dorothy Scarborough
出版社:Kindle版
怖くしたり不気味にしたりするのはちょっとしたコツがあればそれなりに出来るけれど、笑わせるのは大変なんだなあとつくづく感じました。やりすぎるとわざとらしさが鼻につくし、多少の怖さがないと幽霊物らしくないし、そもそも笑いというのは読者によって好みがけっこう分かれるものですからね。
そういう意味で、この中でどれが面白いかについては読む人によってばらばらに分かれるんじゃないかと思います。
The Canterville Ghost / Oscar Wilde 由緒正しい貴族の館の幽霊が現実主義のアメリカ人一家に苦しめられる話。前半のこれでもかというほどの意地悪さと感動秘話的エンディングとのギャップがすごい。どっちもワイルドなんだけど。『カンタヴィルの幽霊』に表題作として掲載。
The Ghost-Extinguisher / Gelett Burgess 消火器ならぬ消霊器を発明した男の話で、映画「ゴーストバスターズ」の元ネタかと思った。最後がちょっと締まらない気はするけど面白かった。
“Dey Ain't No Ghosts” / Ellis Parker Butler アフリカ系アメリカ人(?)のスラングをそのままスペリングしているので、ものすごく読みにくくて疲れてしまい、面白いのかどうか判断できない。ネイティヴならすぐに見当がつくのだろうけど。
The Transferred Ghost / Frank R. Stockton 『世界怪談名作集』に「幽霊の移転」として収録。
The Mummy's Foot / Theophile Gautier ゴーティエにしては馬鹿っぽさがうすくて物足りない。エジプト風味をまぶしすぎて、違う方向に突っ走っちゃった感じ。
The Rival Ghosts / Brander Matthews 家に憑く幽霊と人に憑く幽霊の対決という構図が面白い。主人公がニューヨークで活躍している弁護士だというのもミソ。
The Water Ghost of Harrowby Hall / John Kendrick Bangs この幽霊封じはユニークだし、見方によっては美しいけど、なんだか幽霊が気の毒になった。年に一度、一時間くらい我慢してやればいいのに。でもまあ、幽霊も呪われていたわけだから、その呪いから解放してあげたとも考えられるのか。(何を真剣に)
Back from that Bourne / Anonymous 新聞に掲載された話のようですが、作者不明というより匿名なのかな。アイディアといい、構成といい、笑わせておきながら背筋が寒くなるような終わらせ方といい、かなりよく書けてて、素人の作ではないと思う。
The Ghost-Ship / Richard Middleton なんとも人を食った楽しいほらばなし。翻訳短編集『幽霊船』の他作品から受ける印象からは別人が書いたとしか思えない。ほかにもこういうの書いてるのかな。
The Transplanted Ghost / Wallace Irwin イギリスからアメリカに古城を移築した億万長者は、憑いているはずの幽霊が出ないことが不満で・・・。新世界に連れていかれた幽霊の話は前にもいくつか読んだけど、こういう方向で描かれているのには初めて出会った。ロマン優先の旧世界への憧れと今風の合理主義がいっしょくたになっているのが面白い。
The Last Ghost in Harmony / Nelson Lloyd 文明化しすぎてしまった村ではだれも幽霊を見ないし聞かない。現代人は自分たちに理解できないものは無視するからね。それにしてもこの幽霊は気弱すぎると思う。
The Ghost of Miser Brimpson / Eden Phillpotts こういう方向に行くんだろうなあというのは誰にでもわかるけど、それを具体的にどう実現するかというところで読者それぞれに考える余地があるし、解答を見てなるほどと納得できるところがいい。それにしても、ジョナサンの母親は気の毒すぎる。
The Haunted Photograph / Ruth McEnery Stuart とり憑かれている写真(心霊写真でも妖精写真でもない)というアイディアは面白い。ハリー・ポッターの世界の写真にも似てるけど、ちょっと違うか。
The Ghost that Got the Button / Will Adams 戦争と中国人と犬……いかにも何か出そうな設定。でも、まさか、ああいうものが出るとは!
The Specter Bridegroom / Washington Irving こてこてのゴシック。ひさしぶりにこういうのを読むと不思議となごむ自分が怖い。
The Specter of Tappington / Compiled by Richard Harris Barham 妙なものに憑りつく幽霊だなと思っていたら……。18世紀生まれの牧師さんが書いたので、くどくどしい表現や古めかしい単語が多く、読むのに苦労した。
In the Barn / Burges Johnson ちょ、ちょっと待って。この本は『Humorous Ghost Stories』だと思ってたんだけど……。めっちゃ怖いじゃないか。
A Shady Plot / Elsie Brown ウィジャボードの流行にうんざりしている幽霊のストライキというアイディアは面白いけど、主人公の恐妻家(愛妻家?)ぶりがわざとらしいのが難。編者が教えている作文教室の生徒の提出物だそうで。ウィジャボードは日本のコックリさんみたいなものらしい。
The Lady and the Ghost /Rose Cecil O'Neill ぽかーん。どうしてこれがこの本の最後に? あの詩がひょっとしてユーモアになるほど下手なのかな?(詩はわからない) とりあえず作者がキューピー人形の生みの親であることはわかった。本業はイラストレーターだけど詩人でもあり婦人参政権活動家でもあったらしい。なのにあのエンディングってどういうこと? これを収録したのは作品の質によるのではなく、ローズ・オニールという女性への編者からのオマージュなのかもしれない。
Humorous Ghost Stories (English Edition)
編者:Dorothy Scarborough
出版社:Kindle版
by timeturner
| 2015-03-08 17:12
| 洋書
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