2015年 02月 07日
希望の海へ |
第二次大戦後のイギリス。6歳のアーサーは、たったひとりの肉親キティと離ればなれにされ、見知らぬ子どもたちと船でオーストラリアに渡った。別れぎわにキティがくれた鍵が唯一のお守りだった。シドニーで船を降りたアーサーと少年たちは、狂信的な牧師が運営する農場に連れていかれ、苛酷な奴隷の生活が始まった・・・。
イギリスとオーストラリアの間で行われた児童移民をテーマにした話です。第二次世界大戦後に大量に発生した孤児や貧困による浮浪児を労働者不足に悩むオーストラリアに強制的に移民させてしまうという、とても信じられないような政策が実際にあったのです。資源ゴミを廃品回収業者に渡すようなそっけなさで、とても生身の人間を相手にしているとは思えませんが、あの頃は人の心も戦争で疲弊していてなんとも感じなくなっていたのかもしれません。
2部に分かれていて、前半は65歳になったアーサーが過去を振り返り、娘のアリーに口述筆記をさせた記録。後半はアーサーの遺志を継いでアリーがたったひとりアーサーが設計したヨット《キティ4号》でオーストラリアからイギリスまで航海する間の日記やメールをまとめた形になっています。
あいかわらず達者で読ませるモーパーゴですが、前半はやや材料にひきずられた感あり。あまりにも材料がありすぎて、それを組み立てるだけでページ数が尽きてしまったようなところがあります。マーティなど、せっかくのキャラクターを充分に生かせないまま終わってしまっている面もある。
アーサーの子ども時代、少年時代は実に生き生きと詳細に描いているのに、30代以降からは話をかなりはしょって飛ばしているのは、やはり児童文学作家だからなんでしょうか。大人のつまらない問題は書きたくないのかもしれませんねえ。
それとは逆に、アリーが主役になる後半はもうモーパーゴの独壇場といった感じ。なにしろ大好きな海と船の話ですから、作者が目をきらきらさせながら書いている様子が目に浮かびました。アリーが海で出会う苦難も喜びも、ひとつひとつが実にくっきりと目に見えるように描かれていて、後半に入ってからは息もつかずに最後まで読みました。それにしても、最近は単独航海といってもGPSや自動操縦機やインターネットメールや緊急電話なんてものがあって、『太平洋ひとりぼっち』の頃とは大違いなんですねえ(古すぎる?)。
とはいえ、便利な機械があればあったで、その故障や不調に振り回されたりするわけですが。
希望の海へ
原題:Alone on A Wide Wide Sea
作者:マイケル・モーパーゴ
訳者:佐藤見果夢
出版社:評論社
ISBN:4566024490
イギリスとオーストラリアの間で行われた児童移民をテーマにした話です。第二次世界大戦後に大量に発生した孤児や貧困による浮浪児を労働者不足に悩むオーストラリアに強制的に移民させてしまうという、とても信じられないような政策が実際にあったのです。資源ゴミを廃品回収業者に渡すようなそっけなさで、とても生身の人間を相手にしているとは思えませんが、あの頃は人の心も戦争で疲弊していてなんとも感じなくなっていたのかもしれません。
2部に分かれていて、前半は65歳になったアーサーが過去を振り返り、娘のアリーに口述筆記をさせた記録。後半はアーサーの遺志を継いでアリーがたったひとりアーサーが設計したヨット《キティ4号》でオーストラリアからイギリスまで航海する間の日記やメールをまとめた形になっています。
あいかわらず達者で読ませるモーパーゴですが、前半はやや材料にひきずられた感あり。あまりにも材料がありすぎて、それを組み立てるだけでページ数が尽きてしまったようなところがあります。マーティなど、せっかくのキャラクターを充分に生かせないまま終わってしまっている面もある。
アーサーの子ども時代、少年時代は実に生き生きと詳細に描いているのに、30代以降からは話をかなりはしょって飛ばしているのは、やはり児童文学作家だからなんでしょうか。大人のつまらない問題は書きたくないのかもしれませんねえ。
それとは逆に、アリーが主役になる後半はもうモーパーゴの独壇場といった感じ。なにしろ大好きな海と船の話ですから、作者が目をきらきらさせながら書いている様子が目に浮かびました。アリーが海で出会う苦難も喜びも、ひとつひとつが実にくっきりと目に見えるように描かれていて、後半に入ってからは息もつかずに最後まで読みました。それにしても、最近は単独航海といってもGPSや自動操縦機やインターネットメールや緊急電話なんてものがあって、『太平洋ひとりぼっち』の頃とは大違いなんですねえ(古すぎる?)。
とはいえ、便利な機械があればあったで、その故障や不調に振り回されたりするわけですが。
希望の海へ
原題:Alone on A Wide Wide Sea
作者:マイケル・モーパーゴ
訳者:佐藤見果夢
出版社:評論社
ISBN:4566024490
by timeturner
| 2015-02-07 19:03
| 和書
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