2014年 09月 23日
猫の紳士の物語 |
2歳の紳士猫は自由きままに暮らす巷猫。みずから望んでホームレスになったものの、そろそろこんな暮らしもきつく感じられるようになってきた。プライドを捨てずに人間と共生する道を探そうと、理想のハウスキーパー(飼い主)を探し、とうとう二人のオールドミスをみつける・・・。
メイ・サートンの他の著書は読んだことがないのですが、老いてなお凛とした生き方を貫いた人のようで、このユーモラスに描かれた軽い読み物からもそんな彼女の感性が感じ取れます。全体に猫の視点から、それもかなり上から目線で書かれているので、ハウスキーパーふたりの人となりは一方的にしかわかりませんが、「ぶっきら声」と呼ばれているほうがサートン、もうひとりの「やさし声」のほうがサートンのパートナーだった女性なのでしょう。
まえがきによると、この紳士猫トム・ジョーンズ氏は飼い主ふたりが長期休暇で出かけている間、その家を貸したナボコフ夫妻に面倒をみてもらっていたのだそう。文学好きには羨ましいような話ですね。文学史上に名前が残る作家二人と共に過ごしたことがあるなんて。
原題のThe Fur Personというのは実に巧い言葉だなあと思います。確かに猫には単なるペット動物ではない、どこか人間的なものを感じます。猫のほうでも自分を人間だと思っているように思えるときもあります。
仔猫の時代から野良猫へ、そして飼い猫になったのちも喧嘩っ早いオス猫から手術を受けて平和を愛する哲学猫へと変わっていく過程がとても細やかに描かれていて、本当にサートンは猫が大好きだったんだなあと感じられます。よほどしっかり観察していなければここまで猫の気持ちになりきって書くことはできませんもの。
哲学猫となったトム・ジョーンズがじっくり考えぬいた「猫の紳士の十戒」はなるほどと思える内容ですが、これに付け足された第十一戒は、ちょっとおセンチかもしれませんが、とても温かく心に残りました。
猫の紳士の物語
原題:The Fur Person
作者:メイ・サートン
イラスト:ベンジャミン・レヴィ
訳者:武田尚子
出版社:みすず書房
ISBN:4622047039
メイ・サートンの他の著書は読んだことがないのですが、老いてなお凛とした生き方を貫いた人のようで、このユーモラスに描かれた軽い読み物からもそんな彼女の感性が感じ取れます。全体に猫の視点から、それもかなり上から目線で書かれているので、ハウスキーパーふたりの人となりは一方的にしかわかりませんが、「ぶっきら声」と呼ばれているほうがサートン、もうひとりの「やさし声」のほうがサートンのパートナーだった女性なのでしょう。
まえがきによると、この紳士猫トム・ジョーンズ氏は飼い主ふたりが長期休暇で出かけている間、その家を貸したナボコフ夫妻に面倒をみてもらっていたのだそう。文学好きには羨ましいような話ですね。文学史上に名前が残る作家二人と共に過ごしたことがあるなんて。
原題のThe Fur Personというのは実に巧い言葉だなあと思います。確かに猫には単なるペット動物ではない、どこか人間的なものを感じます。猫のほうでも自分を人間だと思っているように思えるときもあります。
仔猫の時代から野良猫へ、そして飼い猫になったのちも喧嘩っ早いオス猫から手術を受けて平和を愛する哲学猫へと変わっていく過程がとても細やかに描かれていて、本当にサートンは猫が大好きだったんだなあと感じられます。よほどしっかり観察していなければここまで猫の気持ちになりきって書くことはできませんもの。
哲学猫となったトム・ジョーンズがじっくり考えぬいた「猫の紳士の十戒」はなるほどと思える内容ですが、これに付け足された第十一戒は、ちょっとおセンチかもしれませんが、とても温かく心に残りました。
人間にほんとうに愛されたとき、猫の紳士は毛皮の人となる
猫の紳士の物語
原題:The Fur Person
作者:メイ・サートン
イラスト:ベンジャミン・レヴィ
訳者:武田尚子
出版社:みすず書房
ISBN:4622047039
by timeturner
| 2014-09-23 19:41
| 和書
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