2014年 08月 14日
月の部屋で会いましょう |
肌が宇宙服になってしまう奇病、バーバ・ヤガーのような怪物になってしまった幼馴染の少女、恋人の手編みのセーターの中で迷子になる男、誰もが金魚鉢を抱えていなければいけない星への休暇旅行・・・。とびきり奇妙な33編の短編集!
うっわぁ、ひとりの人間がよくこれだけ変な話を思いつくものだ。そういえばこの人の作品は変態アンソロジー『居心地の悪い部屋』や『変愛小説集』に収録されていたっけ。「ささやき」は『居心地の悪い部屋』、「僕らが天王星に着くころ」「セーター」は『変愛小説集』に収録されていたもの。岸本訳はこの既訳3作と「最終果実」だけです。
たいていの奇想小説を書く人は行きつく先がほぼ決まっていて、途中の展開にバラエティを持たせているのだけれど、この人の場合は着地先の見当がまったくつかないので、読んでいる間ずっとドキドキしてしまいます。めちゃくちゃ怖いホラー風なのか、薄気味悪いグロ系なのか、ちょっと切ないロマン系なのか。そこに至るまでわからないのよねえ。
「母さんの小さな友だち」は体内にすみついたナノピープルが宿主である人間の人格を変えてしまうという、『1984』を思わせる話。こっちのほうがすっきりしていてわかりやすい。三部作なんかにしなくても、これで十分だったんじゃないかと思ってしまう。
「彗星なし」と「冷蔵庫の中」は茶色の紙袋でつながった姉妹編みたいなものなのかな? というか、この人、何かを頭にかぶる話が好きよね。一種のフェティシズムなんだろうか。
月の部屋で会いましょう (創元海外SF叢書)
原題:Meet Me in The Moon Room
作者:レイ・ヴクサヴィッチ
訳者:市田 泉、岸本佐知子
出版社:東京創元社
ISBN:4488014534
うっわぁ、ひとりの人間がよくこれだけ変な話を思いつくものだ。そういえばこの人の作品は変態アンソロジー『居心地の悪い部屋』や『変愛小説集』に収録されていたっけ。「ささやき」は『居心地の悪い部屋』、「僕らが天王星に着くころ」「セーター」は『変愛小説集』に収録されていたもの。岸本訳はこの既訳3作と「最終果実」だけです。
たいていの奇想小説を書く人は行きつく先がほぼ決まっていて、途中の展開にバラエティを持たせているのだけれど、この人の場合は着地先の見当がまったくつかないので、読んでいる間ずっとドキドキしてしまいます。めちゃくちゃ怖いホラー風なのか、薄気味悪いグロ系なのか、ちょっと切ないロマン系なのか。そこに至るまでわからないのよねえ。
僕らが天王星に着くころSFと奇想がくっついた話が多く、SFと呼ぶには非科学的だけど、単なる奇想と呼ぶには論理的だったりする。まあ、ジャンル分けなんて無意味なことだけどね。とにかく、読んでるこちらの頭が変になってしまいそうな、ぐちゃぐちゃ・でろでろ・ひくひくした話が多いです。かなりグロテスクな話もあるけれど、6~10ページくらいの短編がほとんどなので気分が悪くなる前に読み終えることができます。ただし、「家庭療法」はゴ***が苦手な方は読まないほうがいい。私、がんばりましたが途中でギブアップしました。
床屋のテーマ
バンジョー抱えたビート族
最終果実
ふり
母さんの小さな友だち
彗星なし
危険の存在
ピンクの煙
シーズン最終回
セーター
家庭療法
息止めコンテスト
派手なズボン
冷蔵庫の中
最高のプレゼント
魚が伝えるメッセージ
キャッチ
指
ジョイスふたたび
ぼくの口ひげ
俺たちは自転車を殺す
休暇旅行
大きな一歩
正反対
服役
次善の策
猛暑
儀式
排便
宇宙の白人たち
ささやき
月の部屋で会いましょう
「母さんの小さな友だち」は体内にすみついたナノピープルが宿主である人間の人格を変えてしまうという、『1984』を思わせる話。こっちのほうがすっきりしていてわかりやすい。三部作なんかにしなくても、これで十分だったんじゃないかと思ってしまう。
「彗星なし」と「冷蔵庫の中」は茶色の紙袋でつながった姉妹編みたいなものなのかな? というか、この人、何かを頭にかぶる話が好きよね。一種のフェティシズムなんだろうか。
月の部屋で会いましょう (創元海外SF叢書)
原題:Meet Me in The Moon Room
作者:レイ・ヴクサヴィッチ
訳者:市田 泉、岸本佐知子
出版社:東京創元社
ISBN:4488014534
by timeturner
| 2014-08-14 17:27
| 和書
|
Comments(2)
Commented
by
nobara
at 2014-08-18 10:59
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着地点の見当がつかないという感想に激しく同意。キジ・ジョンスンよりも読後に疲れて車酔いしたみたいになりました。食料品店の茶色い紙袋、それも文字が入ってるヤツに拘りがあるのでしょうか。「宇宙の白人たち」のドクはバックトゥーザフユーチャーのドクを思い出します。
最終果実はラテンアメリカ文学のマジックリアリズムのよう。
最終果実はラテンアメリカ文学のマジックリアリズムのよう。
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by
timeturner at 2014-08-18 22:36
短いのでどんどん読めちゃうんですが、そうすると車酔いしちゃうんですよね。一日一話ずつ、薬のように服用するのがいいのかも。(でも、返却期限がある場合は無理)
そして今、話の内容を思い出そうとしたら、ほとんど忘れていました(^^;)。短編ってそういうことが多いです。
そして今、話の内容を思い出そうとしたら、ほとんど忘れていました(^^;)。短編ってそういうことが多いです。