2014年 07月 24日
奇跡の子 |
1926年3月のある晩、丘の上農場の羊の出産場に男の赤んぼうが捨てられていた。羊飼いのトムと妻のキャシーは赤ん坊を育てることにしたが、成長するにしたがって、スパイダーと呼ばれるこの少年が「ふつう」の子どもではないことが明らかになってきた・・・。
これまでのディック・キング=スミスの作品とはひと味もふた味も違う話でした。スパイダーはサヴァン症候群と思われる子どもで、知的障害はあるものの特定の分野ではすぐれた才能を示します。スパイダーの場合、その特定の分野というのは動物と心を通じさせること。
これまでのディック・キング=スミスだったら、スパイダーがその才能によって認められ、幸せになれるという展開にしていたところで、私も途中までは当然そうなるものと考えていました。ところが、いつまで経ってもその兆しがなく、全体の4分の3まで読んだところで、ひょっとしたら作者は別のことを考えているんじゃないかとようやく気づきました。
考えてみれば、これまでずっとディック・キング=スミスは、人間にとって本当に必要なものって何だろう? 幸福な人生ってどんなもの? と読者に考えさせるような本を書いてきました。たとえ作品の主人公は豚だったり馬だったりしてもです。この作品はそうした作者の思いを究極まで追求し、提示したもののように思えます。
訳者あとがきに著者のインタビューがいくつか紹介されており、そこで「この作品は、わたしのほかの農場物語とはちがっています。すこし年齢の高い子どもたちから大人の人にまで読んでもらいたいと思って書きました」と言っています。また、舞台になっているのは彼が若いとき、1940年に農業の手ほどきを受けたウィルトシャーの農場そのままなのだそうです。スパイダーもモデルになる実在の少年がいたそう。
奇跡の子
原題:The Crowstarver
作者:ディック・キング=スミス
イラスト:華鼓
訳者:さくま ゆみこ
出版社:講談社
ISBN:4062107880
これまでのディック・キング=スミスの作品とはひと味もふた味も違う話でした。スパイダーはサヴァン症候群と思われる子どもで、知的障害はあるものの特定の分野ではすぐれた才能を示します。スパイダーの場合、その特定の分野というのは動物と心を通じさせること。
これまでのディック・キング=スミスだったら、スパイダーがその才能によって認められ、幸せになれるという展開にしていたところで、私も途中までは当然そうなるものと考えていました。ところが、いつまで経ってもその兆しがなく、全体の4分の3まで読んだところで、ひょっとしたら作者は別のことを考えているんじゃないかとようやく気づきました。
考えてみれば、これまでずっとディック・キング=スミスは、人間にとって本当に必要なものって何だろう? 幸福な人生ってどんなもの? と読者に考えさせるような本を書いてきました。たとえ作品の主人公は豚だったり馬だったりしてもです。この作品はそうした作者の思いを究極まで追求し、提示したもののように思えます。
訳者あとがきに著者のインタビューがいくつか紹介されており、そこで「この作品は、わたしのほかの農場物語とはちがっています。すこし年齢の高い子どもたちから大人の人にまで読んでもらいたいと思って書きました」と言っています。また、舞台になっているのは彼が若いとき、1940年に農業の手ほどきを受けたウィルトシャーの農場そのままなのだそうです。スパイダーもモデルになる実在の少年がいたそう。
奇跡の子
原題:The Crowstarver
作者:ディック・キング=スミス
イラスト:華鼓
訳者:さくま ゆみこ
出版社:講談社
ISBN:4062107880
by timeturner
| 2014-07-24 21:19
| 和書
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