2014年 02月 09日
ビバ!ドラゴン ファンタジイ傑作集2 |
『のんきなりゅう』『The Book of Dragons』と読んだらすっかりドラゴンづいて、こんなのも読んでみました。アメリカ人作家が二人、イギリス人作家が三人。同じドラゴンをテーマにして書いているのに、雰囲気が違うのが面白い。イギリス人が書くドラゴンには、失われたものに対する郷愁のようなものを感じるのに対して、アメリカ人のドラゴンは、話のタネとして面白い珍しい怪獣にすぎないのではないか、という印象がある。どちらがいいとかいう話ではなく、風土の違いって面白いなと思った。
ネズビットのドラゴンがケネス・グレアムの『のんきなりゅう』そっくりなので、あらららと思っていたら、あとがきにそういう悪くない竜が十九世紀末あたりから登場してきたという経緯があるらしい。ひょっとしたらそれが上述の郷愁とも結びついているのかも。で、グレアムからネズビット、それからC.S.フォレスターの『プー・プーと竜』、ローズマリイ・ウィアーの『アルバート』、ローズマリイ・マニングの『グリーン・スモーク』とつながって、最後はトールキンの『農夫ジャイルズの冒険』に行きつくのだそうです。
ボームの2作はどちらも紫色の竜を主人公にしたものだけれど、竜そのものよりも王様や王国の人々ののんきな性格で笑わせるタイプの話で、悪者役は凶悪なタイプなら別に竜でもかまわない存在。王様の作戦会議に犬だのロバだのが加わるのは、いかにもオズの作者という雰囲気でした。
チェスタートンがこんなファンタジーを書いていたとは驚きですが、騎士とドラゴンの鉄板な組み合わせをひねくれた方向に持って行ったのはさすがながら、結末がなんだか落ち着かない感じ。
ブロックの作品は怪奇物ではなくお笑いですが、これこそもうドラゴンである必要はほとんどなくて、ゴジラでもキングコングでも恐竜でもいいじゃん、面白ければというはちゃめちゃぶり。おバカな西部劇みたいでした。
「コンラッドと竜」は、子供向けのファンタジーではまったくなくて、人の心の奥にひそむ何かが現実の形をもって現れるという、幻想風味の心理小説のような趣です。最初から最後まで細かいところにまでアイロニーが効いていて、いかにもイギリスという感じ。
ビバ!ドラゴン―ファンタジイ傑作集2 (ハヤカワ文庫 FT 28)
作者:G.K.チェスタートンほか
訳者:佐藤高子、 渡辺南都子
出版社:早川書房
ISBN:4150200289
ネズビットのドラゴンがケネス・グレアムの『のんきなりゅう』そっくりなので、あらららと思っていたら、あとがきにそういう悪くない竜が十九世紀末あたりから登場してきたという経緯があるらしい。ひょっとしたらそれが上述の郷愁とも結びついているのかも。で、グレアムからネズビット、それからC.S.フォレスターの『プー・プーと竜』、ローズマリイ・ウィアーの『アルバート』、ローズマリイ・マニングの『グリーン・スモーク』とつながって、最後はトールキンの『農夫ジャイルズの冒険』に行きつくのだそうです。
王さまの首の不思議な冒険/L・フランク・ボームヘルミオネ姫の求婚者達を襲うドラゴン。繰り返される惨劇が国中の人々を湧き立たせる。ドラゴンへ挑むことになった少年コンラッドを待ち受ける運命は。
ムラサキ・ドラゴン退治/L・フランク・ボーム
最後のドラゴン/E・ネズビット
竜とカクレンボ/G・K・チェスタートン
ドラゴンの執念/ロバート・ブロック
コンラッドと竜/L・P・ハートリィ
ボームの2作はどちらも紫色の竜を主人公にしたものだけれど、竜そのものよりも王様や王国の人々ののんきな性格で笑わせるタイプの話で、悪者役は凶悪なタイプなら別に竜でもかまわない存在。王様の作戦会議に犬だのロバだのが加わるのは、いかにもオズの作者という雰囲気でした。
チェスタートンがこんなファンタジーを書いていたとは驚きですが、騎士とドラゴンの鉄板な組み合わせをひねくれた方向に持って行ったのはさすがながら、結末がなんだか落ち着かない感じ。
ブロックの作品は怪奇物ではなくお笑いですが、これこそもうドラゴンである必要はほとんどなくて、ゴジラでもキングコングでも恐竜でもいいじゃん、面白ければというはちゃめちゃぶり。おバカな西部劇みたいでした。
「コンラッドと竜」は、子供向けのファンタジーではまったくなくて、人の心の奥にひそむ何かが現実の形をもって現れるという、幻想風味の心理小説のような趣です。最初から最後まで細かいところにまでアイロニーが効いていて、いかにもイギリスという感じ。
ビバ!ドラゴン―ファンタジイ傑作集2 (ハヤカワ文庫 FT 28)
作者:G.K.チェスタートンほか
訳者:佐藤高子、 渡辺南都子
出版社:早川書房
ISBN:4150200289
by timeturner
| 2014-02-09 19:34
| 和書
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