2013年 09月 09日
皆勤の徒 |
どことも知れぬ惑星。海からそそり立つ数百メートルの巨大な鉄柱に支えられた小さな甲板の上に“会社”がある。“従業者”はそこで異様な有機生命体を素材に商品を手作りする仕事に従事している。“社長”は“人間”と呼ばれる不定形のおぞましい大型生物、外に出れば“外回り営業”が襲いかかってくる。つらい日々に耐える“従業者”の脳裏には、誰のものとも知れぬ記憶がフラッシュバックする・・・。
4つの短編を収載している『皆勤の徒』のうち、第2回創元SF短編賞を受賞した表題作だけを電子書籍化したもの。短編1編だけなので100円。あちこちで評判になっていたので好奇心をそそられ、ポチっとしてしまいました。
最初から最後まで心の中で「うげえ」「うげえ」と言いながら読みました。面白くないわけじゃないんですよ。最初のうちはそもそもこの世界がどういうふうになっているのか、登場してくる生き物たちがどういう形状をしているのかなど、一からすべて頭の中に思い描かなくてはならないので、退屈している暇がないし、慣れてきたころにはちょっとしたアクションシーンもあったりして、内臓SFアクションとでもいうようなおもむき。
でも、とにかくグロテスクな世界です。内臓とか寄生虫とか排泄物とか体液とか苦手な人には向きません。
ただ、読んでいるうちに、これってふつうのサラリーマン小説の舞台と登場人物をデフォルメしたら書けるんじゃないの?という気もしてくる。まあ、ここまで微細に想像力豊かに創りあげることは難しいし、だからこそ賞をとったのでしょうが。
また、全体に物凄く漢字とフリガナが多く、老眼の身には実に読みにくいのですが、このフリガナは省略できないのですよね。というのも漢字が本来のものではなく、いわゆる造語だから。この造語がただものじゃない。言葉の音と漢字を目にしたときに意識にのぼる意味とを絶妙に組み合わせて使っているので、たとえば隷重類【れいちょうるい】とか製臓物【せいぞうぶつ】とか2文字か3文字の単語を見ただけで、数行を費やさなくては説明できないようなイメージが脳裏に立ち上ってくる。このイメージ喚起力はすごい。なかには皿菅【けっかんもどき】といったおふざけもあったりして。三人の選者も口をそろえて言っていますが、言語感覚が素晴らしい。
冒頭に大森望、日下三蔵、堀晃三氏の選評が収載され、巻末には作者自筆のイラストが何点か掲載されているのですが、本文を読みながら想像していたものにぴったりだったり、想像をはるかに越える奇怪さだったりして面白かった。また、電子書籍を買った人のための特典画像をダウンロードできるURL、ID、パスワードも記載されていますが、これも著者自筆のペーパーパペット用型紙(社長、外回り)と挿画集です。しかし、巧いなあ。画家としてもプロ級。
皆勤の徒 -Sogen SF Short Story Prize Edition- (創元SF短編賞受賞作)
作者:酉島伝法
出版社:東京創元社
ISBN:Kindle版
4つの短編を収載している『皆勤の徒』のうち、第2回創元SF短編賞を受賞した表題作だけを電子書籍化したもの。短編1編だけなので100円。あちこちで評判になっていたので好奇心をそそられ、ポチっとしてしまいました。
最初から最後まで心の中で「うげえ」「うげえ」と言いながら読みました。面白くないわけじゃないんですよ。最初のうちはそもそもこの世界がどういうふうになっているのか、登場してくる生き物たちがどういう形状をしているのかなど、一からすべて頭の中に思い描かなくてはならないので、退屈している暇がないし、慣れてきたころにはちょっとしたアクションシーンもあったりして、内臓SFアクションとでもいうようなおもむき。
でも、とにかくグロテスクな世界です。内臓とか寄生虫とか排泄物とか体液とか苦手な人には向きません。
ただ、読んでいるうちに、これってふつうのサラリーマン小説の舞台と登場人物をデフォルメしたら書けるんじゃないの?という気もしてくる。まあ、ここまで微細に想像力豊かに創りあげることは難しいし、だからこそ賞をとったのでしょうが。
また、全体に物凄く漢字とフリガナが多く、老眼の身には実に読みにくいのですが、このフリガナは省略できないのですよね。というのも漢字が本来のものではなく、いわゆる造語だから。この造語がただものじゃない。言葉の音と漢字を目にしたときに意識にのぼる意味とを絶妙に組み合わせて使っているので、たとえば隷重類【れいちょうるい】とか製臓物【せいぞうぶつ】とか2文字か3文字の単語を見ただけで、数行を費やさなくては説明できないようなイメージが脳裏に立ち上ってくる。このイメージ喚起力はすごい。なかには皿菅【けっかんもどき】といったおふざけもあったりして。三人の選者も口をそろえて言っていますが、言語感覚が素晴らしい。
冒頭に大森望、日下三蔵、堀晃三氏の選評が収載され、巻末には作者自筆のイラストが何点か掲載されているのですが、本文を読みながら想像していたものにぴったりだったり、想像をはるかに越える奇怪さだったりして面白かった。また、電子書籍を買った人のための特典画像をダウンロードできるURL、ID、パスワードも記載されていますが、これも著者自筆のペーパーパペット用型紙(社長、外回り)と挿画集です。しかし、巧いなあ。画家としてもプロ級。
皆勤の徒 -Sogen SF Short Story Prize Edition- (創元SF短編賞受賞作)
作者:酉島伝法
出版社:東京創元社
ISBN:Kindle版
by timeturner
| 2013-09-09 16:31
| 和書
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