2013年 08月 24日
ミッツ ヴァージニア・ウルフのマーモセット |
第二次世界大戦の始まりを目前に控えた1934年夏。友人夫妻の家からブラジル産の世界一小さな猿がヴァージニア・ウルフの家にやってきた。動物好きの夫レナード、犬のピンカ、ヴァージニア、それにマーモセットのミッツは不思議な絆を築いていく・・・。
日記や書簡などの伝記的事実の隙間を洞察力と想像力で埋め、マーモセットの擬似伝記(ウルフが自著『フラッシュ』を書いた際に創りだした言葉だそう)を紡ぎ出しています。有名作家の名前を使って適当に脚色したファンフィクションではなく、なんともいえず魅力的な作品です。ヴァージニア・ウルフを知らなくても、女流作家夫妻と犬と猿の話として充分に楽しめます。
この作者のことは何も知らないのですが、ウルフの熱烈な信奉者だそうで、ウルフ論も刊行しているらしい。簡潔でありながら、夢のような情景をありありと眼前に描き出すような文章表現力をもち、読者を混乱させることなくくるくると視点を変えて語る技は秀逸です。翻訳も上手なんだと思う。でも「クリームソースのマスタード添え」というのは「マスタード風味のクリームソース」なのでは?(原文はフランス語のようで「ソース・クレーム・ア・ラ・ムタルド」というルビが振ってある)
『めぐりあう時間たち』を読んだり、映画を見たりしたときには、ただひたすら天才小説家のために奉仕する役割のキャラクターであったレナードが、ここではひとりの人間としてヴァージニアと時には反撥し、時には寄り添い、夫婦生活を送っている様子がわかって妙にほっとしました。
あの映画を見ていると、この本がより面白く読めることは確か。なにしろ、物語の中に出てくるロンドンの家もロドメルの家もちゃんと目の前にイメージが浮かんできますし、ヴァネッサや子供たちの話が出れば、映画のキャストたちの姿が浮かんできます。もっとも、そのせいでヴァージニアにニコール・キッドマンが重なってしまうという難点もあるのですが。
ミッツ―ヴァージニア・ウルフのマーモセット (フィクションの楽しみ)
原題:Mitz
作者:シークリット・ヌーネス
訳者:杉浦悦子
出版社:水声社
ISBN:4891766788
日記や書簡などの伝記的事実の隙間を洞察力と想像力で埋め、マーモセットの擬似伝記(ウルフが自著『フラッシュ』を書いた際に創りだした言葉だそう)を紡ぎ出しています。有名作家の名前を使って適当に脚色したファンフィクションではなく、なんともいえず魅力的な作品です。ヴァージニア・ウルフを知らなくても、女流作家夫妻と犬と猿の話として充分に楽しめます。
この作者のことは何も知らないのですが、ウルフの熱烈な信奉者だそうで、ウルフ論も刊行しているらしい。簡潔でありながら、夢のような情景をありありと眼前に描き出すような文章表現力をもち、読者を混乱させることなくくるくると視点を変えて語る技は秀逸です。翻訳も上手なんだと思う。でも「クリームソースのマスタード添え」というのは「マスタード風味のクリームソース」なのでは?(原文はフランス語のようで「ソース・クレーム・ア・ラ・ムタルド」というルビが振ってある)
『めぐりあう時間たち』を読んだり、映画を見たりしたときには、ただひたすら天才小説家のために奉仕する役割のキャラクターであったレナードが、ここではひとりの人間としてヴァージニアと時には反撥し、時には寄り添い、夫婦生活を送っている様子がわかって妙にほっとしました。
あの映画を見ていると、この本がより面白く読めることは確か。なにしろ、物語の中に出てくるロンドンの家もロドメルの家もちゃんと目の前にイメージが浮かんできますし、ヴァネッサや子供たちの話が出れば、映画のキャストたちの姿が浮かんできます。もっとも、そのせいでヴァージニアにニコール・キッドマンが重なってしまうという難点もあるのですが。
ミッツ―ヴァージニア・ウルフのマーモセット (フィクションの楽しみ)
原題:Mitz
作者:シークリット・ヌーネス
訳者:杉浦悦子
出版社:水声社
ISBN:4891766788
by timeturner
| 2013-08-24 19:22
| 和書
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